石破首相を強気にさせた自民党内部調査を徹底分析
公認問題や失言で国民民主党が失速
それと時を同じくして進次郎氏が農相に就任(5月21日)し、備蓄米放出を始めると、参院選の情勢は本当に一変する。
新聞・テレビは連日、“進次郎劇場”を伝え、それまで「減税の旗手」としてもてはやされていた国民民主党の玉木雄一郎・代表は、山尾志桜里氏の公認問題に加え、備蓄米をめぐる「動物の餌」発言で批判を浴びて失速。国民民主の勢いも止まった。
あれほど消費税減税を訴えていた野党側は、立憲民主党、日本維新の会、国民民主党が共同で消費税減税ではなく、「ガソリン減税法案」を国会提出するなど、消費税減税論は霞んでいる。
野上氏は参院選の争点が「消費減税選挙」から「コメ値下げ選挙」へ巧妙にすり替えられたと指摘する。
「それまでは参院選の最大の争点は消費税減税でした。ところが、進次郎の登場でガラリと変わり、国民の関心はコメ値下げに集中させられた。そうなると、農協や農水族議員と喧嘩しているように見える進次郎が“庶民の味方”の立ち位置になる。
直近の選挙情勢を見ると、国民民主の失速、自民から離れていた支持層が戻ってくるといった現象が起きつつある。“こうなったらいいな”という自民の楽観的な参院選調査の情勢に、現実のほうが追いついてきたわけです」
石破首相や自民党執行部にすれば進次郎効果は“ひょうたんから駒”だったに違いないが、国民の関心がコメ値下げに向かったのをこれ幸いとばかりに、本来の参院選の対立軸になるはずだった消費税減税を巧妙に隠すことに成功したのである。
だからこそ、「進次郎の存在を前面に押し出した“小泉農政解散”が、より現実味を帯びたシナリオになってきた」(自民党関係者)と見られているのだ。
(第3回に続く)
※週刊ポスト2025年6月27日・7月4日号