シャンパンタワーの前に立つAさん(インスタグラムより)
以後、被告人の記憶は薄いという。Aさんの身体に遺されていた傷は多数あったが、被告人としてはそんなに刺した記憶はないという。途中、ナイフが柄だけになり、2本目を出した記憶はあった。目撃者が撮影した動画にはAさんの弁解、被告人の言動も記録されていたが、その記憶もないという。
周囲に向けて「この女に1800万円騙されて、人生狂わされたんだ、だから邪魔をするな」と叫んだ記憶はある。次の記憶はその周囲に取り押さえられたタイミングだ。仰向けだったAさんは一度起き上がったが、前に倒れた姿が被告人の目に焼き付いているという。
感情が読めないトーンで淡々と、弁護人からの質問に答えた和久井被告。彼はこの後、検察側からの質問に応じた。類似の事件が起きている昨今、決して特異な事例として割り切れない、そんな複雑な気持ちを抱かせるものとなった。
(了。前編から読む)
◆取材・文/普通(傍聴ライター)