昨年の兵庫県知事選挙で、川中さんが撮影していた多田ひとみ氏の写真(『日本中学生新聞』より提供)
多田ひとみ候補が“完オチ”
──“取材拒否”の玉木代表を横目に、次は“本丸”に取材をかけた。
「そのあと多田候補がメディアの囲み取材を受けている横に移動して、機会を待ちました。他の記者さんたちが斎藤県政に対する見解を質問していたのですが、それが一区切りしたタイミングで僕が『多田さん、多田さん!』と声をかけると、助かったと思ったのか多田候補は笑顔で『はい』と振り向いてくれました。そこで僕は『去年の兵庫県知事選挙の西宮ガーデンのところで、斎藤さんのボランティアをされていましたか』と直撃しました」
──その時の映像を見ると、多田候補は一気に顔が引きつっていますね。
「多田候補は『それはどういった質問の趣旨ですか? どういった?』と言ってなかなか答えようとしないので、僕は『普通に確認です。ボランティアをされていたかどうかの』『イエスか、ノーかで』と回答を迫りました。すると、多田候補は『(ボランティアを)しました。はい』と認めた。多田候補はその後、『質問の趣旨を教えてください』『で、趣旨は?』と何度も詰め寄ってきましたね」
──かなり圧が強い言い回しですが、怖くはなかったですか。
「聞きたいことを聞いただけですから。別に怖くなかったです。玉木代表は何も答えてくれませんでしたが、多田候補から斎藤陣営のボランティアを認める発言が取れたのはよかったです。取材後、このやり取りを『日刊ゲンダイ』に自分で売り込んで記事にしてもらいました」
──すごい記者魂ですね。記事だけでなく、2つの動画もSNSで大きな反響がありました。ショートバージョンも含めると玉木代表は5万回、多田候補は15万回以上(取材時)再生されています。
「Xなどで反響を見ていると、『日本中学生新聞の動画を見て、多田ひとみに投票するのをやめた』という方もいました。今までメディアは“公平性”の観点から選挙になると報道を控えていましたが、兵庫県知事選挙の時は、なにひとつ根拠がないさまざまなデマによって、有権者の投票行動が決まってしまった側面もありました。やっぱり、そういうのはおかしいと思う。
選挙の時だからこそメディアは有権者の判断材料をきちんと共有する必要があると思います。そういう意味では僕の取材で明らかになった事実が、少しは有権者の投票行動の役に立ったのではないかと思います」
スクープの内幕を赤裸々に明かしてくれた川中さん。記者の「これからも政党代表や候補者に突撃取材を続けていきますか」という質問に対しては、「もちろんです」と息をまいた。続く記事では記者活動では見られない“意外な顔”や、自身の夢などについて語っている。
(第2回へつづく)
【プロフィール】川中(かわなか)だいじ/2010年12月11日生まれ、大阪市在住。主に選挙・大阪関⻄万博・IRカジノ・森友問題を取材。「日本中学生新聞」の主宰者として紙の新聞を発行。SNS上でもコラム記事を発信している。文化放送『長野智子アップデート』やYouTubeメディア『ArcTimes』『デモクラシータイムス』などにも出演。2025年春より第1・第3土曜の18時に テレビ大阪ニュースYouTube『中学生記者・だいじの対談クラブ』配信中。
<取材・文・撮影/中野龍>
【プロフィール】中野 龍(なかの・りょう)/フリーランスライター・ジャーナリスト。1980年生まれ。東京都出身。毎日新聞学生記者、化学工業日報記者などを経て、2012年からフリーランスに。新聞や週刊誌で著名人インタビューを担当するほか、社会、ビジネスなど多分野の記事を執筆。公立高校・中学校で1年7カ月間、社会科教諭(臨時的任用教員)・講師として勤務した経験をもつ。