三浦半島にて(高橋成美さん提供)
しかし、帰国した高橋さんを待ち受けていたのは中国と日本の価値観の違いだった。
「自分を全開にするスタイルは、日本の学校では“協調性がない”と捉えられる。同級生からハブられることもありましたし、先生からは職員室に呼び出されて、『授業中、手を挙げすぎ』って。誰も手を挙げていないのに、挙げたら怒られるのは釈然としませんでした。
フィギュア用に髪を染めていたり、練習や試合で遅刻や早退が多かったことも心証がよくなかったそうです。先生に言われたのは、みんな自分を抑えているなか、自分を出す私は嫉妬の対象になるということでした。でも、自分を抑えてみても周りの反応は全然変わらない。それでもう吹っ切れて、“自分は自分”をより貫く方向になりました」
海外でも嫉妬はある。「でもその嫉妬は“真っ直ぐ”で、頑張っている人は素直にリスペクトされる。日本は自分の頑張りとは関係のない勢力から嫉妬されるのが居心地が悪かった」と振り返る高橋さんは、その後高校2年生でカナダへ移住。マーヴィン・トラン選手(34)とペアを結成し、数々の世界大会で活躍した。第2回では、木原龍一選手との出会いについても語る。
(第2回につづく)
【プロフィール】高橋成美(たかはし・なるみ)/元フィギュアスケートペア日本代表
3歳でスケートを始める。小学4年生のとき父の転勤に伴い中国へ。当地でペアを始める。
2008年から2014年にかけて全日本選手権で優勝。
2011-2012シーズンにはグランプリファイナルに日本のペアとして初めて進出、世界選手権では日本ペア初の表彰台となる銅メダルを獲得。2014年、ソチオリンピックに出場。
2018年3月に引退し、その後はJOCアスリート委員として活動しながら2021年にJOC理事に最年少で就任し、任期を経て、 2023年6月からJOC評議員・日本オリンピアンズ協会(OAJ)理事に就任。
現在は、テレビでの大会中継の解説を務めるほか、タレントとしてバラエティ番組に出演するなど、多岐にわたる活動を展開している。
サメリュックを愛用する高橋成美さん