安倍晋三・元首相の銃撃現場で取り押さえられる山上徹也被告(朝日新聞社/時事通信フォト)
5人の情状証人、母親ときょうだいの証言は
弁護側が公判前整理手続で求めていたのが、情状証人の採用だ。
もともと弁護側は、彼がなぜ事件を起こすに至ったのかを解き明かすため、臨床心理士や宗教学者などによる情状鑑定を申請していたが、裁判所に却下されている。そこで公判前整理手続において親族のほか、宗教社会学者と統一教会の被害回復に取り組む全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士2名の計5人の情状証人の採用を申請していた。
検察は宗教の問題に立ち入るべきではないとして専門家証人の申請却下を求めていた。親族については時間を短くするよう要求していたという。
だが、9月21日に開かれた第9回目の公判前整理手続で、奈良地裁は弁護側が申請した情状証人5人全員の採用を決めた。母親、山上徹也の下の兄妹、全国霊感商法対策弁護士連絡会の弁護士2名、宗教社会学者となっている。
情状証人が全員採用されたことには安堵している。というのも、裁判では法廷に出された証拠のみで判断するからだ。背景事情を提示しないまま単純な事件として処理されてしまうと、事件の背景を含めた概要が見えないまま量刑判断が下されることになってしまう。
では、弁護団は法廷においてどのように主張を展開していくのか、これまでの取材から見えてきたのは以下の背景事情である。
