逮捕時の山上徹也被告(共同通信社)
多感な時期の母の入信、高額献金と子どもへのネグレクト。父親を自死で亡くした母子家庭だった山上家において、被告人は難病に罹患し健康状態に不安のある長兄に代わり、精神的に一家を支える立場にあった。母親との関係性、母親と教団の関係、金銭的困窮を含む一家の状況について、山上が複数の相談先にアプローチした形跡もあるが充分な対応が受けられなかったと見られる。
結果として適切な被害救済がなされず、兄が自死。その一方で一家を壊滅に追い込んだ教団が放置されてきた背景にあったのが、政界との癒着である。弁護側はこういった証拠を示して量刑判断へ加味されるべきとの主張をしていくだろう。
その場合、母親との関係性と兄の自死がポイントとなる。また彼が捉えていた問題の背景は事実とリンクしていたのか、彼の一方的な思い込みではなく蓋然性があったのか。
ポイントは、母親と下のきょうだいの尋問となるだろう。山上の家庭環境が、当事者の口から語られることになる。だが、山上は出廷する母親に対して複雑な思いがあると見ている。その葛藤を示すように山上は母親の接見を断っており、事件後、法廷で初めて顔を合わせることになる。
母親は統一教会の現役信者であることから、法廷において「家庭内の問題であり教団に申し訳ない」といった統一教会に有利な内容を証言する可能性もある。その懸念を山上の弁護士に尋ねたところ、たとえ教団に与する発言があったとしても彼の成育歴をそのまま語ってもらえればよいという。下のきょうだいについては、兄への思いとともにほぼ同じ境遇に育つなかで長兄の自死や母親の高額献金の実態などについてどのように語るのか、注視したい。
