初監督作『五十年目の俺たちの旅』が2026年1月9日公開予定(C)「五十年目の俺たちの旅」製作委員会
のちに、優作も歌手活動を始めるのだが。
「いつだったか、松田さんの家に行ったら、『俊、聞いてくれ』と言って、ギターを弾きながら、井上陽水の『心もよう』を歌ったんですよ。何年かして、松田さんが『ロックだぜ』とか言い出したときには、いや、あなたの出発は陽水だろ、とかいじってましたけどね」
もう一つ、デビュー当時の中村はジーンズに下駄履きのスタイルがトレードマークだったが、優作は彼に向かって「俊、下駄はな、おまえより、俺のほうが先に履いていたんだ」と言い張った。
「俺も大学のときから履いていたから、何を言ってるんだろうと思って」
この番組で、彼はゲスト出演していた五十嵐淳子と出会い、交際を経て結婚。デビューから3年後の26歳の時だった。
「早すぎると周囲に大反対されたけど、結婚は、これが最後の恋だと思ってしますからね」
世の男性に言って聞かせたくなるような言葉を、さらりと口にするのだ。
『俺たちの勲章』に続く『俺たちの旅』で、中村は「不思議な縁」と呼ぶ出会いを経験している。彼の付き人になったのは、現在、高い演技力で知られる小日向文世だった。
「あいつは元々、音楽のほうで俺の付き人をやっていたんだけど、そのうちに、役者をやりたいとか言い出して自由劇場に入ったんです。当時、あいつがアルバイトしていたのが、ゲイバーのウエイターだったので、俺も呼ばれて店に顔を出したりしてね。付き人をしていた頃はロン毛で、可愛い顔をしていたんですよ」
(後編へ続く)
【プロフィール】
中村雅俊(なかむら・まさとし)/1951年2月1日生まれ、宮城県出身。1973年、文学座附属演劇研究所に入所。1974年、『われら青春!』(日本テレビ)の主役でデビュー。テレビドラマの主演は34本を数え、歌手としてもシングル55枚、アルバム42枚をリリース。全国コンサートも1600回を超える。初監督作『五十年目の俺たちの旅』が2026年1月9日公開予定。
取材・文/松田美智子(作家)
※週刊ポスト2025年11月7・14日号
