船橋市議を辞して、2016年の都知事選に立候補した立花孝志氏(2016年7月撮影:小川裕夫)

船橋市議を辞して、2016年の都知事選に立候補した立花孝志氏(2016年7月撮影:小川裕夫)

 初当選をかざった船橋市議選にも、綿密な調査の上で立候補を決めている。まったく縁がない船橋市の選挙に出た理由は、船橋市が人口20万人になると指定される「中核市」でもっとも人口が多い市だから、と筆者に明かしてくれたことがある。

 人口が多い市議選のほうがよいなら、なぜもっと規模が大きな政令指定都市の選挙に挑まなかったのか。横浜市や大阪市といった政令指定都市の市議選は、行政区単位で定数が割り振られる中選挙区制を採用している。中選挙区制だと、各区から当選できるのは数人になる。この場合、どうしても自民党や公明党、共産党という背後に強い支援組織がある政党が当選者を出しやすい。

 一方、中核市は市全体をひとつの選挙区とする大選挙区制を採用している。人口の少ない市なら定数も比例して少なくなるが、船橋市は中核市で人口が最多なので市議会の定数は50と多い。得票数1位も50位も同じ当選で、そこに待遇の差はない。

 NHKの受信料という制度に眉をひそめる有権者は地域を問わず一定数いるので、立花氏が掲げる「NHKをぶっ壊す」というフレーズは一定数から支持を得ることができる。トップ当選を目指そうとしなければ、立花氏が展開するNHK批判は十分に選挙戦略として効果を発揮するのだ。

 また、立花氏は「一度でも選挙に当選すると、国政選挙や知事選に立候補しても”泡沫候補”として扱われにくくなる」ことも分析結果から熟知していた。

 前回の都知事選は史上最多の56人が立候補したが、その前の2020年は22人、2016年は21人、と毎回のように多くの人が立候補している。

 5~6人だったらテレビで全員を取り上げることもできるし、新聞でも紙面を大きく割り当ててくれるだろう。さらに、青年会議所などの諸団体が主催する選挙前の公開討論会にも呼んでもらえる。しかし、10人以上になると全候補者を詳しく取り上げることが物理的に難しくなる。

 選挙報道では候補者を平等に取り上げなければならないという原則があるため、苦肉の策としてテレビ・新聞は独自の基準で主要候補と泡沫候補に分け、主要候補には多くの時間・紙面を割く。泡沫候補は名前を紹介するだけにとどめる。

 こうした選挙報道の問題点はひとまずおくとして、立花氏は泡沫候補として括られると目立たなくなってしまうので、その回避策として、当選しやすい船橋市議選を狙った。すぐに船橋市議を辞めても一度は公職に就いたという実績ができるので、以降は泡沫候補として扱われにくくなる。泡沫候補として扱われなくなることで、選挙報道で露出が増え、それが知名度を加速度的に増大させた。

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