奈美子さんが事件当日の朝に来ていた防寒着(撮影:水谷竹秀)
悟さんは翌日、担当の刑事に確認すると、こう伝えられた。
「犯人しか知り得ない情報なので、本来であれば言えません。でもご遺族から聞かれ、『違います』と言えば嘘になるので、その通りだと認めます」
まさに青天の霹靂だった。
以降、悟さんは捜査機関へのプレッシャーになればとの思いから、玄関のたたきに付着した血痕を積極的にメディアに報道してもらった。
もっとも、初動捜査の段階で鑑識官は、犯人の血痕からDNAのサンプルを採取している。それゆえ血痕がメディアを通して報道されたとしても、鑑識官があらためて採取に来ることはない。それでも悟さんの訴えは「これほど重要な証拠が現場に残されているのになぜ未解決なのか」という世論の喚起にはつながるはずだ。悟さんはそう信じて、現場保存の重要性を感じ、アパートを借り続けてきたのである。
部屋を借り続けたのは、最初から犯人の血だとわかっていたからではなく、偶然が重なった結果だったのだ。
