ダノンプラチナはどういう馬だったのか(調教師・国枝栄氏)
1978年に調教助手として競馬界に入り、1989年に調教師免許を取得。以来、アパパネ、アーモンドアイという2頭の牝馬三冠を育てた現役最多勝調教師・国枝栄氏が、2026年2月いっぱいで引退する。国枝調教師が華やかで波乱に満ちた48年の競馬人生を振り返りつつ、サラブレッドという動物の魅力を綴るコラム連載「人間万事塞翁が競馬」から、2才牡馬チャンピオン決定戦についてお届けする。
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今週のGIは2歳マイル王を競う朝日杯フューチュリティステークス(FS)。阪神マイルは、内枠が有利でペースが落ち着かない中山より、能力のある馬が力を出せるいいコースだ。
1990年、厩舎開業の年に手掛けたボードセイリングという馬で初のGIに出走した縁のあるレース。その後もタイガーモーションやマイネルシーガル、ショウナンアチーヴなどが頑張ってくれたし、舞台が中山競馬場から阪神競馬場に移った2014年にダノンプラチナで勝たせてもらった。
ダノンプラチナはディープインパクトの子供でスピードはあったが、馬体がやや詰まり気味で、伸びがいいというよりは、コンパクトにまとまってすごく軽い馬だったので、マイルからせいぜい2000mまでかなという見立てだった。デビュー戦の札幌1500mは2着だったけれど、未勝利、現1勝クラスのベゴニア賞と東京1600mを勝ち、朝日杯に照準を合わせた。
暮れの2歳GIは1勝馬でも抽選で出られることがあるぐらいで、2勝していれば確実に出走できるはずだった。しかしこの年に限ってオープン特別を勝って賞金を積み上げている馬が多く、抽選対象になってしまった。2勝が共に強い勝ち方だったので、朝日杯では1番人気に推されたのだが、運が悪ければ出走すらできなかった。平等なのは分からないではないが、2歳王者を決めるレースなのだから、レーティング上位馬に優先出走権を与えるなど、ファンにいいレースを見せようという規定があっていいのではないかと思う。
それでも抽選は通るという一念で調整、自信をもってレースに臨んだ。向こう正面では後ろから4、5番目、直線で大外に出して前の馬を次々とかわし、残り100mあたりで先頭に出て押し切った。アナウンスでは「今週もディープインパクト!」。この秋は前の週の阪神ジュベナイルフィリーズを勝ったショウナンアデラに続いてGI6勝目だったのだ。
