垂秀夫・前駐中国大使へ「中国の盗聴工作」が発覚(時事通信フォト)

垂秀夫・前駐中国大使へ「中国の盗聴工作」が発覚(時事通信フォト)

高市首相の有力な外交ブレーンの1人

 その垂前大使は、高市首相の有力な外交ブレーンの1人と見られており、「内閣官房参与など政府の役職への起用も検討された」(高市側近筋)とされる。

 今回の台湾有事答弁を巡る日中関係悪化についても、垂氏は高市首相が取るべき対応について『文藝春秋』(2026年1月号)に緊急提言を寄稿し、高市答弁について〈戦略なき言動がいかに国家の立場を揺るがすかを示す典型例である〉と指摘した上でこう書いている。

〈この事案を日本が戦略的な立ち位置を見直すための好機と前向きに捉え、今後の対中戦略の再構築をはかる必要がある〉

 しかし、そういう垂氏も日本大使館も、中国当局の盗聴工作に気づいてさえいなかった。

 中国は2017年に「国家情報法」を施行し、国民に政府や共産党の情報収集活動への協力を義務づけた。それは中国国外にいる中国人にも適用される。日本にいる中国の民間人であっても、情報機関に指示されれば“スパイ工作”に加担しなければならないという法律だ。

 垂大使が食事する日本料理店の別の部屋で中国公安がこれほどあからさまな盗聴、ビデオ撮影を行なったのも、この法律に基づいた活動だと考えていい。

 日中関係がさらに緊迫した現在の状況は、中国にいる邦人や企業に対してだけではなく、日本国内でも中国が情報工作を活発化させていると強く警戒すべきだろう。

 垂氏は高市首相に「中国戦略の再構築」を提言しているが、中国がここまで露骨な方法を使っている一方で、日本政府、在外公館にはカウンター・インテリジェンスの備えがどこまであるのか。

 本誌は垂氏と外務省に経緯について質問書を送ったが、締め切りまでに回答はなかった。

 文藝春秋法務・広報部はこう回答した。

「連載や書籍化に際して、外務省から抗議等を受けた事実はありません。また、編集上の過程については回答しておらず、発表した作品がすべてとなります」

 日中関係が緊迫の一途を辿るなか、高市首相や外務省には中国の情報工作にどう立ち向かうのか、その覚悟が問われている。

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※週刊ポスト2026年1月2・9日号

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