観光客が減ったと言われているが実際はどうなのか（写真提供／イメージマート）
日中関係の悪化により、訪日中国人は確かに減ったが、少なくとも現時点では、日本国内の日本人が受ける影響は限定的なようだ。
中国人相手に成り立たなくなった「一条龍システム」
一方、この日中関係悪化の影響をモロに受けるといわれている人々がいる。それは、日本国内で中国人向けに商売を展開してきた、在日中国人たちである。前出のキー局国際部記者が続ける。
「日本国内で生活をしながら、訪日中国人向けにビジネスをする在日中国人がいます。彼らは、中国からの客を中国の飛行機に乗せて日本へ連れてきて、自分たちで経営する観光バスに乗せて、自分たちが経営するホテルやレストランに泊まらせ食事をさせ、最後はやはり自分たちが経営する土産物店に連れていく。このように、日本に金が落ちず、在日中国人ばかりが儲かるという”一条龍”システムを形成しています」（キー局国際部記者）
“一条龍システム”とは、一匹の龍のように川上から川下までの利益をすべて吸い上げて完結させ、囲い込む仕組みのことを言う。訪日観光でもそのシステムが形成されており、中国国内で完結してしまうアプリや決済システムを使い、旅行スケジュールを固めてしまう。だが少し旅行慣れした事情通の中国人の間には、このシステムで観光の予定を組むとホテルやレストランが粗悪で貧相だったり、土産物店で販売されている商品が人気商品の偽物である場合があるなどして、悪評が広まっていた。だから近年は、この仕組みに乗っかって日本にやってくる中国人旅行者はお得な外国旅行のつもりで損をする情報弱者、金をたくさん使う富裕層ではないなどの指摘もある。
そんな情弱観光客であれば、たしかに政府の発信を鵜呑みにして旅行も取りやめるだろうし、今の日中関係は大きなダメージになっているのではないか。そう予想していたのだが、日本国内に”一条龍システム”を構築し、商売をしていたという旅行会社幹部の中国人女性（50代）は、筆者の取材に、あっけらかんと答えた。
「中国は経済がダメ、不動産ダメ、お金ない。日本に来ないから、もう中国人を相手にしてない」（旅行会社幹部の中国人女性）
この旅行会社では以前、知人などの会社と提携し、年間に数千人に及ぶ中国人の日本旅行を取り扱っており、訪日客の滞在先、観光先についても、やはり「同胞」に仕事を振っていた。まさに「一条龍」システムだったが、この数年、特に2021年に中国国内の大手デベロッパーが破綻し、国内の不動産不況が深刻になってからというもの、すでに訪日の足は遠のいていたと振り返る。そして、すでに「対策」も打ってあると自信たっぷりだ。
「だから今のお客さんは欧米人です。アジアもいる。中国はお金ないから、お金のある人たちを相手にする」（旅行会社幹部の中国人女性）
