空港からの外国人送迎無届けハイヤーの客は中国人から欧米人になった(写真提供/イメージマート)
中国人が経営するほかの旅行代理店、不動産店からも同様の声が聞かれた。要は、これまで訪日中国人相手に商売をしてきた在日中国人たちが、今度は中国以外から日本へやってくる外国人を相手に商売を始めているのだ。
客は訪日中国人から訪日欧米人へ
大阪市内で、主に中国人相手に日本の不動産を販売してきたという中国人社長に、富裕層の中国人の動向について聞いた。すると、ここでも中国政府が推し進める「日本離れ」と逆行する中国人たちの姿が浮かび上がる。
「日本の不動産は、中国人にとって一番魅力。高いマンションも買えば自分の資産になるし、国や政府に取り上げられない。中日関係が不安定になったから日本の物件を売る、なんて中国人はまずいません。逆に、日本に不動産を欲しいが、今買うと中国政府に目を付けられないか、日本へ遊びに行きたいが中国人として行くのは気が引けるなど、そんな相談ばかり受けています。私たちの今の一番のお得意さんは、ヨーロッパ系の外国人です」(中国人の不動産会社社長)
そしてこの流れは、意外なところにも出現していた。前述の「一条龍」システムとしても悪名高い、中国人らによる違法な「白タク」の現場だ。東京・羽田空港周辺を走っているというタクシー運転手が言う。
「以前、羽田や成田などの空港の車寄せに、中国人が経営する違法な白タクが大挙して押し寄せていると何べんもニュースで取り上げられました。摘発も相次ぎ、確かに白タクはいなくなりました。が、その代わりに増えてきたのはハイヤーです。白タクを運営していた連中が、そのままハイヤー会社を設立し、同胞のバイトを運転手として雇っている。これまで白タクが並んでいたところには、こうした中国人経営のハイヤーが、また違法に並んでいる」(タクシー運転手)
当たり前だが、白タクがハイヤーになったからといって、日本の法律にのっとった世紀の運輸業ではなく違法な存在に変わりはない。本来、ハイヤーが客待ちできないエリアに陣取り、堂々と客引きまで行っているという。さらに、白タクから転身した中国系ハイヤー運転手たちが狙うターゲットが、中国人から欧米人へと移り変わってきている。
「ハイヤーの運転手と見張り役が数人いて、タクシーなどを探すカモになりそうな外国人客に声をかけ、連れていく。中国人観光客がいても見向きもせず、大荷物を持った欧米人グループを狙うのです」(タクシー運転手)
冷え込む日中関係が好転する兆しは、今のところ見えない。このままの状況が続けば、貿易や経済、政治などあらゆる面で様々な弊害が出てくるに違いない。ただ、そんななかでも、在日中国人たちはこのように、たくましく生き延びているようだ。来日20年という中国人男性が声を潜める。
「日本が危ないなんて、そんなわけない(笑)。中国があんなに日本に怒って、日本にいる中国人は申し訳ないくらい。この前、台湾の友達が日本に来た時”私は台湾から来た”というバッジをつけていた。羨ましくなって、ちょうだいといったが断られた。日本の中国人は黙っていますけど、今が一番生きづらいのでは」
世界でもっとも中国政府を信用していないのは中国人だ、というブラックジョークが世界中で言われているが、その通りの状況になっているのかもしれない。
