国旗損壊罪について私見を述べる岩屋氏
本に載った日の丸にバツを書いたら「国旗損壊罪」?
川中:なるほど。他国の例では、アメリカには自国の国旗損壊を禁じる国旗保護法がありましたが、これは1989年に最高裁が「合衆国憲法が定める“表現の自由”に反する」と違憲判決を出しました。岩屋さんは、日の丸の損壊は表現の自由にあたると考えますか。
岩屋:国旗損壊は適切か不適切か。これは明らかに不適切でしょう。でも、刑法は「人の行為を規制して、反すれば罰する」法律ですからね。もし今、国内で日常的に国旗損壊が起こっているなら話は別だけど、そうではないのに法律をつくるのは、国民の精神や行為をいたずらに圧迫することにならないだろうか。私が危惧するのは、そこですね。
川中:先の参議院選挙の最終日に、街頭演説で「日の丸にバツ印」の旗を持つ人がいたことを理由に、SNSでは「表現の自由として守られるべき」「公共の利益を損なう行為だ」などさまざまな意見があります。このことについてどう思いますか。
岩屋:それは、参政党さんの主張に反対する人たちがそういう方法で抗議しているという事例ですよね。国旗は尊重されるべきもので、それを傷つけることによって意思を表すことはよくないことです。しかしその人たちの目的はあくまで「特定の党の主張に反対する」こと。それをあたかも、国旗や国家を冒涜したかのように捕まえて罪に問うのは、行き過ぎではないかと思います。
川中:「日本国旗は国家の象徴だから保護されるべきだ」という意見もあるようですが。
岩屋:難しいと思います。というのも、日本の国旗はいろいろなものに使われているんだから。それを言い出したら「本に載っている日の丸にバツ印を書いたら国旗損壊罪か」「“損壊”とみなすのは旗の形状に限るのか」など、また細かい議論が必要になってきますよね。
それよりも、今の日本には国旗・国歌法(国旗及び国家に関する法律)もありますよね。世の中で「国旗を尊重しましょうね」という精神が自然に養われることが最も望ましいと思います。現実的に事案が起きていないのに、「こういう行為は罪である」と法律を定め、そのことによって防いでいこうとする考え方は不適切ではないでしょうか。
