スパイ防止法については慎重な姿勢を示す
スパイ防止法は「日本人にも適用されるだろう」
川中:もうひとつ、半世紀にわたり議論されている法律についてうかがいます。スパイ防止法についてはどうお考えですか。
岩屋:大切なのはその法律の中身です。「スパイが沢山いたら日本が困るよね、だからスパイを取り締まる法律があったほうがいいよね」という単純な議論をしてはいけないと思います。「誰から・どんな情報を・どう守り・どう罰するのか」という中身を見ないことには、いいも悪いも判断できない。
私は、今の日本にはすでに機密情報を守るための法体系が基本的に整備されていると思っています。これは安倍政権の成果のひとつですが、2013年に特定秘密保護法ができましたよね。内容を大まかに言うと「日本の安全保障にかかわる情報のうち、特に秘匿すべきものを各省庁が“特定秘密”として指定する。これを漏洩した者は最高で懲役10年の刑に処する」というものです。
国会審議では「国民の知る権利を侵すのでは」と大激論になったけれど、この法律によって今、政府の外交安保情報は守られています。他にも防衛や日米安保、経済安保などの関連情報を守る法律もそれぞれあります。だから、追加で法律をつくるなら「情報漏洩という立法事実が現状どのぐらいあるか」「具体的にどの情報を、誰から守るのか」などについて丁寧に議論しなければいけない。
川中:なるほど。
岩屋:あと、仮にスパイ防止法のようなものが成立したら、外国人だけでなく日本人も適用対象になるでしょう。これは果たして、言論の自由や知る権利、報道の自由に抵触しないのか。そういった点も厳しく点検されねばなりませんね。
だから私は国会質疑でも「法案の中身がわからないのに賛成も反対もない。ただ、慎重な検討が必要な類いの法律だと思う」と答えてきました。その考えは今でも変わりませんよ。
川中:日本は過去に治安維持法という悪法がありました。そのようなものにならないようにするためにも、熟議が必要ということですね。
岩屋:そうです。まず実際には、国会提出の前に自民党内、そして与党内で議論されるでしょう。その際には私が疑問点を徹底的に問いただしたいと思っています。
* * *
岩屋氏は国旗損壊罪について「立法事実が確認できないなら法律をつくる必要はない」と、批判的な意見を述べた。一方の高市首相は、「実現に受けて具体的な検討を進める」と発言している。
岩屋氏は、現政権をどう見ているのか。対談の第2回目のテーマは「高市政権の評価」。中学生記者が投げかける率直な質問に対し、岩屋氏は「保守とは何か」「政権右傾化への憂慮」などを熱弁している。
(第2回につづく)
【プロフィール】川中(かわなか)だいじ/2010年12月11日生まれ、大阪市在住。主に選挙・大阪関西万博・IRカジノ・森友学園問題を取材。「日本中学生新聞」の主宰者として紙の新聞を発行。SNS上でもコラム記事を発信している。雑誌やウェブメディアへの寄稿のほか、文化放送『長野智子アップデート』やYouTubeメディア『ArcTimes』『デモクラシータイムス』などにも出演。2025年春よりテレビ大阪の公式YouTube・「大阪NEWS【テレビ大阪ニュース】」にて『中学生記者・だいじの対談クラブ』配信中。『こちら日本中学生新聞』(仮題)を出版予定。
構成・文/前島環夏
【プロフィール】前島環夏(まえじま・わかな)/ライター・エディター。Web媒体を中心にインタビューや書籍編集などを行なっている。
