福岡高裁に向かうB型肝炎訴訟の原告側弁護士ら(2023年)
訴訟制度自体に大きな「欠陥」がある
そもそも「B型肝炎訴訟は極めて特殊なシステム」と指摘するのは、ベリーベスト法律事務所の巽周平弁護士だ。
「民事、刑事を問わず日本の裁判は訴えを提起した後、1~2か月に1度のペースで公判が開かれます。一方、B型肝炎訴訟は訴えを起こして必要な資料を提出した後は、国から和解の可否の連絡が来るまでひたすら待つだけ。しかも、その期間は1~2年ほどです。その間に病状が悪化してしまう、ひいては場合によっては亡くなってしまうかたも少なくなく、あまりにも被害者の心情を考慮しない裁判であるといえます」
通常の裁判との違いはほかにもある。
「損害賠償訴訟では、支払いが遅れた場合、通常なら遅延損害金が発生しますが、B型肝炎訴訟は和解を目的とした裁判のため遅延損害金も発生しません。被害者はただただ待たされているだけで、救いがありません」(巽弁護士)
こう話すとおり、B型肝炎が進行すれば治療のために働けず、生活に困窮して苦しむ人もいる。また重度の肝がんであるにもかかわらず、国の対応遅延のせいで受けるべき治療が受けられないこともある。埼玉県在住のAさん(54才・男性)は2022年にB型肝炎ウイルスに感染していることが判明。肝炎には自覚症状がほとんどないため、発見されたときには進行しているケースが多く、Aさんの場合もすでにステージ4の肝がんだと診断された。
「お酒も飲みますし、生活習慣が原因かなと思いましたが、医師から集団予防接種が原因のこともあるといわれ、調べてみたら給付金の対象者であることがわかりました。弁護士事務所を頼って2024年に提訴しましたが、いまだに和解には至っていません。
抗がん剤もすでに効かず、自由診療での治療をすすめられていますが、医療費の負担が大きく踏み切れません。治療のためほとんど働けず、治療費には到底収入が追いつかない。それなのにいつまで経っても国は和解してくれず、給付金も受け取れない。せめてめどがわかれば生きる希望になりますが、このままではなにも受け取れないまま死んでしまうのではないかという不安と絶望の毎日です」(Aさん)
