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『希望の教室』著・ジェーン・グドール、ダグラス・エイブラムス/訳・岩田佳代子
【書評】『希望の教室』未来を生きる若者に必要なロールモデル
【書評】『希望の教室』/ジェーン・グドール、ダグラス・エイブラムス 著岩田佳代子・訳/海と月社/1760円【評者】香山リカ(精神科医) ジェーン・グドール。今年88歳になった女性動物学者だ。アフリカでの研究生活が長く、チンパンジーとすごす姿は何度もテレビのドキュメンタリーなどで紹介されている。本書はコロナが猛威を振るう中、人間と動物、環境、地球を守るためにグドール博士が発した言葉で構成されている。 そう聞くと、「立派な人だな。でも私には無縁だ」と思う人が多いのではないだろうか。でも、本当にそれでいいのか。「貧困をなくそう」「政治家らの汚職を一掃しよう」「環境問題に目を向けよう」というグドール博士の主張は一見、実現不能な理想論のようだが、コロナ禍に続きウクライナ侵攻が勃発したいま、私たちが再び立ち返るべきはこういった理想論、正論なのではないだろうか。 アフリカの森林で女性が野生動物の研究を行う、という想像するだけで困難がいっぱいの人生を楽しそうに生き抜いてきたグドール博士は、インタビューにこたえて希望にあふれたポジティブな言葉を口にし続ける。「わたしたちは状況を好転させられる。わたしは心底そう信じている」「他者を助けることは、自分自身の癒しにもプラスにもなるのよ」「不屈の精神力自体は、いつだってみんなの中にある。でも、何も起こらないうちは、なかなか呼び起こされないのよ」。 そしてグドール博士は、未来を生きる若者に必要なのは、愛情とお手本としての生き方を示すロールモデルだという。たしかに「この人のように生きてみたい」という具体的な人間を見つけることができれば、若者は生きる希望を抱きながら進むことができる。もし、あなたにまだ進路を決めていない子どもや孫がいるならば、本書をそっとわたしてみてはどうだろう。人を信じ自然を信じ、前向きに歩み続けてきたグドール博士ほどのロールモデルはないからだ。 きれいごとじゃ、世の中、変わらないよ。そうつぶやくのにもそろそろ飽きた人にこそ、ぜひ開いてもらいたい一冊だ。あふれる“正論”に心が洗われることだろう。※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.26 07:00
週刊ポスト
侮れない黒内障のリスク(イメージ)
黒内障 発症者「1~2割が脳梗塞を起こす」のデータ、心筋梗塞のリスクも
 歳を重ねるにつれて発症するリスクが高くなる目の疾患として緑内障や白内障がよく知られるが、同じように怖い病気として「黒内障」がある。黒内障を発症すると、多くのケースで片方の目に黒い幕が下りたかのごとく視界が真っ暗になる。中には無数の黒い点が出現して視野の一部が欠けたり、目の奥で爆発があったような感覚で光が走った後に、モヤが出現して視野が遮られていくケースもある。 5~10分すると回復することが多いが、脳梗塞につながるリスクがあるなど、放置してはいけない病気だという。では、どのようなメカニズムで黒内障は起きるのか。 人間の体には血管が張り巡らされ、短時間で血液が循環することで全身の健康が保たれている。 だが、血液中の悪玉コレステロールや脂肪でできたゴミ(プラーク)が動脈の内側に溜まると線維化し、血管が柔軟性を失って動脈硬化が生じる。さらに蓄積したプラークが破れるなどすると、血液が固まって血栓ができる。それが何らかの拍子で剥がれると動脈内を流れて血管を詰まらせる可能性がある。 この現象は脳に血液を送る頸動脈で起きやすい。愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長で医師の伊賀瀬道也氏が語る。「心臓から送られてきた血液は頸動脈で脳に向かう内頸動脈と、頭蓋骨などに向かう外頸動脈の二手に分かれます。川と同じで二股に分かれる地点には血液が勢いよくぶつかるため、老廃物が溜まりやすくプラークや血栓ができやすいのです」 そして、剥がれたゴミが内頸動脈から枝分かれしている眼動脈で詰まると、黒内障が生じるのだ。「眼動脈は非常に細いため、小さな血栓でも詰まる可能性があります。また、眼動脈自体の動脈硬化が進んだ結果、血管が狭くなって血流が塞がれ、黒内障となることもあります。つまり、黒内障の発症はすでに動脈硬化が進んでいることを示している。脳と目は繋がっているので、黒内障になったということは、いつ脳梗塞になってもおかしくない状態だということです。血栓による血管の詰まりが目に起きるのか脳に起きるのかの違いでしかない」(伊賀瀬医師) ただし、目の症状は一過性のもので収まる。「眼動脈に血栓が詰まっても血流が押し流すこともあるし、血液中を循環するプラスミノーゲンというタンパク質が血栓などを溶かすため、一時的な症状だけで目の機能が回復するのです」(伊賀瀬医師) そのため見過ごされがちだが、二本松眼科病院の眼科専門医である平松類医師は、「症状が出たら必ずすぐに医師に相談を」と警鐘を鳴らす。「黒内障は一般的に知られていないし、痛みを感じないので、“疲れ目”程度で流してしまって診察に来ないケースが実に多い。黒内障を発症した人の1~2割が将来、脳梗塞を起こすという統計があるのですが、それも黒内障で診断を受けた人の数を元にしたものなので実際にはもっと確率が高い可能性もあります。眼科でいいので、すぐに受診しましょう」心筋梗塞のリスクも『タクシードライバーぐるぐる日記』(三五館シンシャ)の著者である内田正治さん(70)は、2016年9月、都内でのタクシー乗務中に突然目の異変を感じた。左目にカーテンが掛かったように、真っ暗になったというのだ。黒内障だった。内田氏はこう振り返る。「タクシードライバーは夜中も働かなければならないため、不規則極まりない生活をしていました。もともと糖尿病と高血圧の持病があり、薬を飲んで治療していたのですが、それも黒内障の発症に関係していたのかもしれません」 幸い、検査では血栓が見つからなかったが、医者からは「糖尿病の持病があるため、脳梗塞を起こす可能性がある」と指摘され、血液をサラサラにする抗血小板剤の「エフィエント錠」を6年間服用し続けているという。「それ以来、黒内障は起きていないのですが、一昨年に心筋梗塞になりました。年齢も年齢なので全体的に血管が弱っていたんだろうなと思います」(内田氏) 動脈硬化が進んで黒内障や脳梗塞へとつながっていく問題を解消するうえでは、まずは生活習慣の改善が基本となる。「高血圧、脂質異常症、糖尿病、肥満、喫煙、飲酒、不規則な睡眠など生活習慣病やそのリスクを抱えている人は要注意です。黒内障は体からのSOSだと思ってください。黒内障が起こるということは、そもそも全身の血管で動脈硬化を起こしている可能性があり、心筋梗塞のリスクも高い。黒内障の発症を防ぐには、睡眠や栄養、運動に気をつけて規則正しい生活を心がけることが第一。また、これからの季節は脱水にも注意しましょう。マスク生活で水分補給を忘れたり、流行りのサウナに長時間入ることで脱水症状が起こり、血流が滞る危険性があります」(伊賀瀬医師) 予防には、定期的な目の検査も有効となる。「眼底検査で血管の状態をチェックできる」と、伊賀瀬医師が続ける。「眼底検査をすることで血管の状態が分かります。動脈は切れたりしないように基本的には体の奥を走っているので特別な器具を使って検査をしますが、目の網膜にある動脈は人体で唯一、直接の確認が可能です。目は“血管が健康かのバロメーター”になるわけです」 平松医師も定期的な目の検査を勧める。「“目の寿命は70代まで”と言われますが、きちんと検査すれば重大な疾患でも早期発見でき、治療が可能です。60歳を過ぎたら定期的なメンテナンスが望ましいです」 大病のサインは目に現われる。違和感を覚えたら、「ちょっと疲れたのかな」などと自己判断せず、医師に相談するのがよさそうだ。※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.26 07:00
週刊ポスト
コンビニの白ワインを専門家はどう見る?(左は大宮勝雄氏、右は遠藤利三郎氏)
コンビニの白ワインを専門家が採点 「10点」「香り満点」1位に選ばれたのは?
 ワイン=高いものというイメージは過去のもの。コンビニに行けば、安くて美味しいワインが揃っている。ワイン通の大宮勝雄氏、遠藤利三郎氏、柳沼淳子氏の3氏にコンビニの白ワインをジャッジしてもらった。【審査方法:用意したワインの中を相対的に評価し、審査員各自が10点満点で採点を行なった。総合点は審査員3人の点数を合計した】 1位に輝いたのは、ローソンの『カーサ・スべルカソー シャルドネ』(750ml 598円)。遠藤氏が10点を付けたほか、総合で27点を獲得した。3氏はこう語る。「香り満点。クリーム系の海の幸のコロッケに合う」(大宮)「よく熟した桃や洋梨の香り。ボリュームもしっかりある」(遠藤)「500円台とは思えないバランスのよさ。コスパ最高」(柳沼) 2位は26点を獲得した2品。1品目はセブン-イレブンの『マールボロ ブリーズ・ヴァレー ソーヴィニヨン・ブラン』(750ml 1408円)だ。「香りは高得点。厚みがあり、白身魚のムニエルに◎」(大宮)「華やかなフルーツの香りが豊かに広がる」(遠藤)「酸のバランスが心地よく、爽やかな美味しさ」(柳沼) そして2品目は、ミニストップの『コラーレ カタラット ミニストップ』(750ml 583円)。「甘味が強い。アペリティフ(食前酒)に向いている」(大宮)「香り爽やか。太陽豊かなシチリアならではのコスパ」(遠藤)「500円台とは思えない果実味。今回1番買いたいワイン」(柳沼) このほか3氏は、ソーヴィニヨン・ブラン、シャルドネ、ボルドー他、品種別に16品をテイスティング。別掲の表を参考に、白ワインをお楽しみ頂きたい。【プロフィール】大宮勝雄氏/1950年生まれ。フランスなど海外での修業を経て、地元浅草で洋食レストランを開店。テレビの料理番組などでも活躍。遠藤利三郎氏/1962年生まれ。J.S.A.認定ソムリエ。早稲田大学オープンカレッジ講師、日本ワイナリーアワード審議委員長などを務める。柳沼淳子氏/1978年生まれ。J.S.A.認定シニアワインエキスパート。フリーアナウンサー。ボルドー騎士、シャンパーニュ・ペリエジュエ騎士。撮影/中庭愉生※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.25 19:00
週刊ポスト
「黒内障」の症状とリスクとは(イメージ)
突然視界が真っ暗になる「黒内障」 数秒で収まっても放置は厳禁、命にかかわることも
 歳を重ねるほどに衰えを感じやすい「目」は、体の異変の兆候を様々なかたちで知らせてくれる部位でもある。「疲れているだけだから」とやり過ごしていると、そこには重大な病気が潜んでいることも──。「車の運転中に突然、左目の左端から右に向かってカーテンがかかるようにサーッと目の前が真っ暗になりました」『タクシードライバーぐるぐる日記』(三五館シンシャ)の著者である内田正治さん(70)は、2016年9月、都内でのタクシー乗務中に突然目の異変を感じた。「最初はカラスか何かが目の前を通ったのかと思ったのですが、そのまま視界が真っ暗になっちゃった。幸い空車のタイミングだったので、これはおかしいと車を脇に止めてしばらく目を閉じました。 4~5分経って目を開けると元に戻っていたんですが、今までにない症状だったのですぐに眼科へ。医者からは『一過性黒内障』と診断され、大学病院での精密検査を勧められました。聞いたことのない病名でしたし、お客を乗せて高速を運転中に目の前が真っ暗になったら……と想像すると怖くなり、仕事を引退する決意が固まりました」(内田氏) 歳を重ねるにつれて発症するリスクが高くなる目の疾患として緑内障や白内障がよく知られるが、「黒内障」とはどのような病気なのだろうか。「黒内障は放置すると死につながることさえある怖ろしい病です」──そう語るのは、二本松眼科病院の眼科専門医である平松類医師だ。 黒内障を発症すると、多くのケースで片方の目に黒い幕が下りたかのごとく視界が真っ暗になる。 中には無数の黒い点が出現して視野の一部が欠けたり、目の奥で爆発があったような感覚で光が走った後に、モヤが出現して視野が遮られていくケースもあるという。 共通しているのは、その症状が長続きしないということだ。「突然症状が現われて、5~10分ほどすると目の状態が回復します。早い人では数秒で収まることもあり、『多分大丈夫だろう』と放置されがちです。しかしその後、脳に思わぬ症状が現われて死に至ることがあるのです」(平松医師) 正式名称は「一過性黒内障(アマユローシス・フューガクス)」。一時的に目の血管に血栓などが詰まることで生じる疾患だ。 広く知られた脳梗塞の前兆として、一時的に脳に血液が流れなくなり短時間、半身が痺れたり呂律が回らないといった症状が現われる「一過性脳虚血発作」があるが、黒内障もそのひとつに数えられる。 愛媛大学医学部附属病院抗加齢・予防医療センター長で医師の伊賀瀬道也氏が語る。「一過性脳虚血発作を治療せず放置すると、3か月以内に10~15%が脳梗塞を発症するというデータがあります。黒内障も放っておいてはいけないということです」※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.25 16:00
週刊ポスト
『かれが最後に書いた本』著・津野海太郎
【書評】『かれが最後に書いた本』紙の本を愛する世代の真率な回想と歴史
【書評】『かれが最後に書いた本』/津野海太郎・著/新潮社/2310円【評者】関川夏央(作家) 長年の読書とその書き手たちの回想、それにかつて愛した映画についてのエッセイ集である。著者・津野海太郎は頑健な人で、七十歳を過ぎても老眼以外に不具合がなかった。なのに二〇一四年、七十六歳のとき胆嚢の手術で人生初入院して以来、自分でも驚くほど「老いの証し」を経験した。 自宅の階段から落ちて肋骨を七本折り、歩行中にも転倒。緑内障、心臓冠動脈バイパス手術、腸の憩室炎を患った。昔は歩きながら本を読んでいた彼が、外出時には駅の階段のありかやエスカレーターの乗り継ぎを気にする八十四歳になった。 演劇人、編集者、書き手、大学教員と多彩なキャリアを積んだ人だから、顔が広い。ゆえに「かれが最後に書いた本」の「かれ」はいろいろだが、二歳年少、二〇一九年に七十八歳で亡くなった池内紀が「最後に書いた」『ヒトラーの時代』は衝撃的だった。データ上の間違いと繰り返しが多く、そのかわりユーモアが消えている。健康でお洒落で勤勉であった池内紀自身、自分の原稿に愕然としたことだろう。 津野海太郎は、一九四〇年代後半から七〇年代末まで、すなわち十代から三十代終りまでに溺れるように接した本と映画が自分をつくったという。とくに半鎖国状態にあった五、六〇、映画だけが外国をのぞく窓であった。やがて死ぬのは承知だが、人は一人で死ぬのではない。そんな経験を共有した「友だちとともに、ひとかたまりになって、順々に、サッサと消えてゆくのだ」。 この本は、おもにweb「考える人」の連載を紙に落としたもので、一ページ十九行、今時では文字が詰まった編集だが、読みにくくない。 それは叙述に「…のでね」「…じゃないかな」とまじえて、あえて「世間話」文体のつぶやきに近づけたためで、「老人の威張り」はまったく感じられない。紙の本を愛しながら、やがて「消えてゆく」世代の真率な「回想」と「歴史」として読んだ。※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.25 11:00
週刊ポスト
朝起きて視界の端に異常があれば要注意(写真はイメージ)
眼科医が警告 「朝、目の端が見えない」「目の奥が痛む」のは重病のサイン
 肝臓は肝硬変などを起こしていても自覚症状が出にくいため、「沈黙の臓器」と呼ばれる。黄疸など体に明らかな異変が起きた時には、すでに手遅れというケースも少なくない。同じく「目」も症状が出にくいため、命に関わる重大な疾患を見逃しやすいと専門家は警鐘を鳴らす。 二本松眼科病院の眼科専門医である平松類医師は「目は体の様々なSOSを発信しています。中には放置すると死に至る病も。いかに早く読み取れるかが大切です」という。見逃してはいけない「目からの不調のサイン」を平松医師が解説する。 平松医師がまず挙げるのが、「視野欠損」だ。目の端や真ん中などの視界が欠けるこの症状は、脳の疾患の疑いもあるという。「日本人の失明原因のトップである緑内障は、進行すると視野が欠けてきます。ただし、多くの人が末期近くの視野が半分以上欠けた状態になるまで気が付かない。なぜかというと、人間は片目がおかしくてももう片方の目で補ったり脳が衰えた視覚を補完するので、視野が欠けていっても気付かない人が少なくないのです。緑内障は末期になってしまうと治療が難しくなりますが、早期に発見できれば失明を防げます。緑内障は大抵の場合、ゆっくり進行するので月に1度のペースで片目を閉じて周りを見て、視野に変化がないか確認することが望ましいといえます」(平松医師) 一方、脳の疾患が原因で視野が欠ける場合は注意が必要だ。脳梗塞など死に至る可能性のある重大な疾患が隠れている場合もある。「医者の立場からいうと目は脳の一部の臓器です。目と脳は神経や血管が繋がっており、脳から出血している場合は目が圧迫されるといった具合に、目は脳の不調を反映します。もし朝起きた時に目の端が見えないなど、急に視野が欠けるようなことがあれば注意しましょう。脳梗塞や脳出血、下垂体腺腫(脳腫瘍)といった脳の血管が関係する疾患の疑いがあるので精密検査を勧めます」(平松医師) 以上の例は痛みを伴わないが、「もしも目に痛みを感じたら、それは目からの緊急のSOS」だと平松医師が続ける。「目は自覚症状が出にくいのですが、痛みを伴うとなると緊急事態です。通常の緑内障と異なり、突然発症する緑内障発作は頭痛と間違う人もいますが、目の奥に強烈な痛みと吐き気を伴います。もともと目が良かったり遠視気味の人がかかりやすい疾患で、通常は10~20mmHgの眼圧が40~50mmHgまで急上昇し、放置すると数日で失明することもあります。緊急で医療機関にかかってください」 目も「物言わぬ器官」。不調のサインを見逃さないようにしたい。
2022.06.25 11:00
NEWSポストセブン
藤井竜王と杉本八段
藤井聡太が叶えた「名古屋将棋対局場」新設 東海地方の棋士50年来の悲願だった
 藤井聡太竜王(19)の地元・愛知に、東京、大阪に次ぐ3拠点目の公式対局場がついに新設された。名古屋駅前の複合商業施設「ミッドランドスクエア」の25階のフロアをトヨタ自動車が提供。「名古屋将棋対局場」の新設の背景には、藤井竜王の活躍とその“大師匠”にあたる板谷進九段(故人、1988年没)の存在があった。今回の新設は東海地区の棋士にとって「悲願」だったのだという。「名古屋将棋対局場」のこけら落としとなった6月22日の今期順位戦A級の初戦では、藤井竜王が佐藤康光九段(52)を101手で破り、初の名人位挑戦に向けて白星発進を決めた。 藤井竜王にとって対局場の新設は「移動時間の激減」という大きなメリットをもたらす。「名古屋将棋対局場」では、本年度は順位戦を中心におよそ100局が行なわれる予定だ。日本将棋連盟によると、藤井竜王は順位戦9局中6局を名古屋で対局する予定。地元での対局は、体力的・精神的な負担の軽減につながる。将棋ライターの松本博文氏が解説する。「公式戦は基本的に将棋会館のある東京か大阪で行なわれる場合がほとんどです。愛知在住で関西(大阪)所属の藤井竜王は、東京では前日に1泊。大阪では当日朝、始発近い時間の新幹線に乗っているのだと思います。藤井竜王の鉄道好きは有名で、移動は苦にしていないようでもありますが、それでも名古屋での対局ならば、移動にかける負担は少なくなると考えていいでしょう。5つのタイトルを保持する藤井竜王は、タイトル戦のための地方転戦が多いため、それ以外の対局で名古屋開催のものが出てくるメリットは大きい」 対局前に長い移動時間がある場合、棋士はどのように過ごしているのだろうか。「棋士の多くは東京か大阪周辺に住んでいます。地方に住む人は少数派です。関東、関西の棋士がそれぞれアウェイに遠征するケースでは新幹線での移動がほとんどですが、その間の過ごし方はまちまちでしょう。これまでは、そこまで根を詰めて移動中も将棋のことを考えている人は多くなかった。ゆったり過ごして心身を休ませ、翌日からの対局に臨むという棋士がほとんどだったでしょう。しかしコンピュータ将棋(AI)が強くなって以降は、事前の準備が勝敗につながる傾向が強くなりました。現在では移動中もリモートで自宅のハイスペックなパソコンを操作し、研究している棋士もいます」(松本氏) 棋士の生活サイクルに大きな影響を与えそうな「名古屋将棋対局場」の新設までの道のりには、東海地区の将棋文化の発展に寄与してきた板谷一門の存在がある。名古屋に公式対局場が置かれるまでに実に50年以上の年月を要した。 板谷一門 もう一つの悲願の実現も……「板谷四郎九段、ご子息の板谷進九段が名古屋に『第三の将棋会館』を建てることを目標に、東海地区の将棋の普及に尽力されてきました。1970年には日本将棋連盟東海本部が設立されました。その頃は板谷将棋教室の奥座敷で公式対局も行なわれていました。しかしそれも長くは続かなかったようです。エネルギッシュに普及活動を続けていた板谷進九段は1988年、47歳の若さで死去。さらには中心人物であった父の板谷四郎九段も1995年に亡くなり、東海棋界は厳しい局面を迎えました。その後は板谷進九段の弟子である杉本昌隆八段(53)が名古屋在住の棋士として奮闘。地元の人々が地道に普及活動を続ける中で、大天才・藤井少年が現れることになります。 将棋界ではひとりのスーパースターが今までの景色をがらっと変える瞬間がありますが、今回はまさにスーパースターの藤井竜王の存在が大きかったでしょう。板谷進九段は、藤井竜王の師匠である杉本八段の師匠なので、藤井竜王と板谷進九段とは孫弟子と大師匠の関係にあたります。東海地区の関係者の夢であり、また板谷一門の悲願の一つはタイトルを持ち帰ることでした。それはすでに板谷進九段の孫弟子である藤井竜王が実現しています。さらにまた、もう一つの悲願も実現しつつあります」(松本氏) もう一つの悲願は、関西(大阪)に続き「第三の将棋会館」を新設することだ。「名古屋将棋対局場」はその大いなる目標へとつながっていくことが期待されている。「何にしても東京と大阪が拠点となるので、名古屋は都会ではあるもののハンディキャップがあるわけです。藤井竜王がプロになるまでは、小学生のときから大阪の関西奨励会に通っていました。親御さんにとっても大変な負担だったことでしょう。ゆくゆくは奨励会や将棋会館が東海地区にできたら、東海地方のさらなる将棋の普及につながることは間違いないでしょう」(松本氏) 藤井竜王が切り開いた地元・愛知の公式対局の拠点は、いずれ「東海将棋会館」として大きく実を結ぶことにつながる一歩となるのだろうか。  
2022.06.25 07:00
NEWSポストセブン
「遺伝子検査」で何がわかるか(イメージ)
がん罹患リスクを調べる「遺伝子検査」 日本でのルールづくりはこれから
 日本人の死因の第1位であるがん。がんの発生と遺伝の相関関係は世界中で長年の研究課題とされてきた。家族や親類にがん患者がいる場合、「将来は自分も罹るのでは」と不安に思うかもしれない。 そうしたなかで注目されるのが「遺伝子検査」だ。アンジェリーナ・ジョリーも検査をきっかけに乳がんや卵巣がんのリスクが高いとわかり、両側の乳房を予防的に切除する手術を受けた。 現在、遺伝子検査は医療機関だけでなく、民間事業者の通信販売キットなどもある。病院で受ける検査と通販のキットに違いはあるのだろうか。 医療経済ジャーナリストの室井一辰氏が語る。「調べているものはどちらもDNAなので、病院も検査キットも同じです。ただ、病院での検査ががんのリスクに直結する『遺伝子変異』の有無をピンポイントで調べるのに対して民間のキットはもっと幅広く、アバウトに世界の最新論文を参照して『ある部位のがんリスクが5%高い』などと結果を示します。 疾患のリスクをはっきり判断すると医師以外には認められていない“診断”になるため、統計データと検査結果を比較するかたちが取られているはずです。新しいタイプのサービスで、国によるルールづくりがこれからの段階ですが、消費者からの関心は高い」 実際に複数の検査キットが、価格は安価なもので1万円台から販売されている。 いずれも検査キットで唾液を採取して送ると、がんをはじめとする各種疾患のリスクの程度や、肥満や長生きなどその他の健康リスク、遺伝的なルーツを含む200~300程度の項目について、結果が文書やスマホのアプリ上に表示される。「MYCODEヘルスケア」を販売するDeNA広報部が言う。「MYCODEは検査キットで唾液を送ることで、遺伝型から体質、病気に関する傾向がわかります。病気は遺伝子と生活習慣の双方の影響で発症の有無やその程度が決まると言われています。 病気を未然に防ぐため、検査で自分の遺伝型を知り、遺伝的に罹りやすい病気の傾向を学んだり、病気に罹らないための生活習慣の改善を行なうことが重要だと考えて検査を実施しております」「安易な検査は勧めない」の声も 検査を受けると、具体的にどのような結果が得られるのか。自身も数年前に遺伝子検査キットを利用したことがあるという室井氏が言う。「唾液をキットに入れて送り返すと、1週間ほどで結果が出ました。自宅に届く簡単な小冊子のような書類に書いてあるのですが、各項目が詳細に記述されているわけではなく、評価と簡単な説明が添えられていました」 室井氏の場合、「精巣がんのリスクが高い」「食道がんのリスクは低い」という解析結果が出たという。「私の場合は、体内にとどまると食道がんのリスクになりやすいとされる『アセトアルデヒド』を分解しやすい体質であることがわかりました。そこから食道がんのリスクが低いと解析されたようです。 一般的に遺伝子検査はリスクが高いものに注目しがちですが、私の場合はリスクが低くなるものを知ることができたのが良かった。気の持ちようではありますが、前向きに捉えられた」(室井氏) もちろん、がんの遺伝子検査を受けるには慎重な判断が必要との指摘もある。東京大学大学院特任教授の中川恵一医師(総合放射線腫瘍学)が言う。「乳がんや卵巣がんをはじめ、様々ながんのリスクとなるBRCA遺伝子の変異は、医療機関で血液を採取しての遺伝子検査によりわかります。ただ、安易に検査をすることは勧めません。 万が一、検査で変異があると知れば、本人の精神面だけでなく、例えば子供を産むか産まないか、産んでもそのことを子供にどう伝えるかなど、影響が多方面に及びます。家族歴があって不安だから遺伝子検査を受けるという場合でも、遺伝相談外来や遺伝カウンセリング外来など、支援体制が整っている病院を選ぶことが必要です」 そもそも最先端のゲノム解析技術に基づく遺伝情報の解明は将来の病気を防ぐメリットがある半面、ひとたび悪用されれば結婚や就職その他で差別が生じる恐れすらある。日本は遺伝子検査ビジネスに対する規制も整備の途上にあり、こうした問題に対する議論が尽くされたとは言い難い。“がん家系”で不安を持つ人たちも、そうした論点を理解したうえで、この“選択肢”と向き合うことが重要だ。※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.24 19:00
週刊ポスト
マスクをしている女性がターゲットにされている(写真はイメージ)
マスク生活はいつまで…60代女性が気づいた「気休めとしてのマスク」への違和感
 コロナ禍も落ちつき、そろそろ脱マスクに向けて、本格的に動いていきそうな気配。しかし、まだまだ多くの人々がマスクを着けて過ごしている──。女性セブンの名物ライター“オバ記者”こと野原広子さんが、マスクに対する違和感について綴る。 * * * 家を出て駅に行くまでの間、ちょっとした問屋街があるの。午前中は道行く人もまばら。なのに、すれ違う人全員がマスクをしている。それを見た私も手に持っていたマスクを慌ててつけ出したところで、笑っちゃった。まったく何のためのマスクよ。 まぁね、薄々おかしいとは思っていたのよ。 東京都のお知らせメールに登録していて、私のスマホに毎日、都の感染状況が送られてくるんだけど、5月14日からずっと、重症者数が0から4人の間。ってことはほぼ収束したってことでないの? 目に見えないウイルスがいつ何時、また暴れ出すかわからないって、そりゃそうだけど、人もまばらな道路や空が大きい田舎でマスクをつける意味がわからない。 実は私、去年の春頃からまったくワイドショーを見なくなった。コロナ騒ぎが始まって「大変だぁ〜!」と大騒ぎしていた一時期は欠かさず見ていたけど、そのうち飽きたというか、呆れたというか。 だって、感染症専門家の人の話ってモヤつくだけなんだもの。出てくる人の顔こそ変われど、一本調子で不安をあおる芸風(?)は皆一緒。 専門家だけじゃない。小池百合子都知事の会見もかなりきてるよね。 重症者数が一桁なのに、「コロナの闘いはまだ続いているところでございます。マスクは場面に応じて正しく着用をお願いします。日々の生活でもそうですが、レジャーの際も実践をしていただければと思います」(6月10日)と言われてもさ。「人口100万人あたりの死者数が他国を抜いて少ないのが日本。2位のニュージーランドを抜いて1位になりました」という報告のときも、結局は「引き続き感染対策を」(6月17日)でまとめるんだよね。で、ふっと鼻で笑った後、「何度も何度も何度も申し上げてきましたが」と言うんだけど、彼女、上から目線で、いつまでマスクをつけていろと言うのかね? ま、とはいえ私たちにも反省すべきことはある。それはマスクで覚えたラク。小池さんはマスクから出した目元に完璧なメイクをしておられるけれど、たいがいの中高年女性は、顔の3分の1を隠してくれるマスクのラクさに安住してるのよ。「それでメイクはどんどん適当になって、コロナとは別の理由で外しにくくなっているの」―なぁーんてことを、佐賀県唐津市に移住したネットニュース編集者の中川淳一郎さんに話したら、「それは補正下着と一緒。装着しているときは格好がついているような気になってもそのときだけ。コンプレックスをこじらせるだけです。 何より、顔半分隠している自分って不自然でしょ。ワシはそれがイヤで、マスクなしで気兼ねなく歩ける唐津から出たくないんです」 ですって。さすが新著(新潮新書『よくも言ってくれたよな』)で「マスク固持派」をバッサバッサと小気味よくなぎ倒しておられるだけある。 彼はその著書の中で《恐らく2022年末は「なんで我々はあんなにコロナを恐れていたのだ……」という論調になっていることでしょう。そうなっていなかったら本格的に日本はヤバい》と書いています。 ヤバいといえば、私の場合、身体的理由からマスク着用がヤバいときがあるんだよね。バスや飛行機に乗るとアナウンスで、「感染予防のためにマスクをつけてください」と言った後にサラッと「特にお体に問題があるかた以外は」とつけ加えるんだけど、実は私はその当事者で、お体に問題がありありなんですってば。 私は心臓に持病があって、先日2度目の心房細動の発作を起こしたんだけど、マスクをつけて階段を上ったりすると心臓の拍動が激しくなるのよ。で、たまらずマスクを外して深呼吸をすると「おお、酸素だ」と体が喜んで、心拍数も落ち着いてくる。 だから、ホントに困るよ。電車でも飛行機でも、「ほかのお客様の安心のためにマスクをつけましょう」とアナウンスされると。「安全」じゃなくて「安心」ってことは、マスクは気休めってことでしょ? それなら、人様の気休めより自分の体調を優先したいけど公共の場でそれを伝えるのはけっこう難しいよ。いっそのこと、首から「身体的事情でマスク無理」というプラカードでもさげるか? とか言いながら、梅雨明けが見ものだと思う。 ついこの間、「屋外で2m以上離れていればマスク不要」と厚労省が言い出してから、口紅が急に売れ出したらしいけど(都内の某デパートでは売り上げ2割増!)。最後に口紅を買ったの、いつだったかしら。結局、人は必要と思わないことをいつまでもし続けられないんだって。 新型コロナウイルスの感染が2019年12月に始まってから、今年で3回目の夏。 そういえば今日の帰り道、うちの近所でマスクなしのサラリーマンを何人も見かけたし、車のドライバーはタクシー以外、半分はマスクをつけていなかったよ。【プロフィール】「オバ記者」こと野原広子/1957年、茨城県生まれ。空中ブランコ、富士登山など、体験取材を得意とする。※女性セブン2022年7月7・14日号
2022.06.24 19:00
女性セブン
作家の井沢元彦氏による『逆説の日本史』(イメージ)
【逆説の日本史】獄中で書かれた「イエス抹殺論」に隠された幸徳秋水の「本音」
 ウソと誤解に満ちた「通説」を正す、作家の井沢元彦氏による週刊ポスト連載『逆説の日本史』。近現代編第九話「大日本帝国の確立III」、「国際連盟への道 最終回」をお届けする(第1345回)。 * * * すでに述べたように、「大逆事件の主犯」とされた幸徳秋水は、その代表作『廿世紀之怪物 帝國主義』において、明治天皇(当時はまだ今上天皇)については鋭く批判するどころか、むしろ賞賛している。「天皇は平和を好み世界の幸福を願っておられ、いわゆる『帝国主義者』ではいらっしゃらないようだ」と述べている。しかし、帝国主義を撲滅しようとするなら当然その実行者の一人である専制君主も排除しなければならないはずで、この態度は矛盾していると言っていい。そこで私は、本連載の第一三四一回(五月二十七日号掲載)で次のように書いた。「これはいったいどうしたことか。この本の目的は帝国主義撲滅を訴えることだから、ほかの部分で無用な摩擦を避けようとしたのか。つまりこれは外交辞令なのか。それとも幸徳の本音なのか。この点については幸徳の別の著作も視野に入れて検討しなければいけないので、とりあえずは措く」 ここで、このとき保留にした問題、つまり「幸徳秋水の本音」を追究してみたい。その解明の大きなヒントになるのが、「幸徳の別の著作」である『基督抹殺論』である。「キリストを抹殺する」というこの物騒なタイトルの著作は、幸徳の事実上の遺作と言ってもいい。なぜ「事実上」なのかと言えば、逮捕前からこれを書き始め獄中で完成させた幸徳は、最後の著作として『死刑の前』を書き始めたからである。 ところが、目次を作り全体を五章構成にし、第一章「死生」を書き終えたところで死刑に処せられてしまった。だから、完成した著作としては『基督抹殺論』が最後のものとなるわけだ。その内容をかいつまんで紹介しよう。例によって原文は現代人にとっていささか難解なので、テキストとして『現代語訳 幸徳秋水の基督抹殺論』(佐藤雅彦訳 鹿砦社刊)を用いる。〈 〉内(引用部分)はこのテキストによることをお断わりしておく。 序文は、〈私は今拘えられて東京監獄の一室にいる〉という文章で始まる。そして神奈川県の湯河原で療養を兼ねて本書の執筆を進めていたが、突然逮捕されて東京に送られ五か月の空しい時が過ぎたが、予審(戦前に行なわれていた、一種の予備裁判)も終わり自由な時間ができたので執筆に取りかかった、と経緯を述べている。そして、獄中という執筆には最悪の環境のなかで病身に鞭打ってまで本作を完成させたのは、決して満足のいくじゅうぶんな出来では無いものの、たぶんこれが自分の最後の著作となる。だからこそ、自分の知る限り誰も明確に述べたことの無い〈史的人物としての基督の存在を否定して、十字架なんぞ生殖器の表示記号を変形させたものにすぎない〉ことを〈結論づけ〉、世に問うために本書を完成させた、と述べている。 つまり、キリスト教の否定もそうだが、そもそもイエスすら歴史上の実在の人物では無いのだと証明するために、幸徳はこれを執筆したというのだ。それゆえにキリスト教批判を飛び越えたイエス抹殺論になるわけである。幸徳はまず、イエスの言行を四人の弟子、マルコ(馬可)、マタイ(馬太)、ルカ、ヨハネ(約翰)が記録した『新約聖書』の四つの福音書に、肝心な点において異同や矛盾があると述べる。〈耶蘇の奇跡的な生誕のことを、馬可および約翰の福音書は記していないし、彼の昇天のことを約翰および馬太の福音書はまるで知らぬかのような書きようなのだ。人類の歴史の最も重要な二大事件であり、ことに基督が神であることを証明する最も貴重な二大事件であるのに、どうしてこれらの福音書は忘れ去ってしまったのか。忘却でないとすれば、なぜ黙って見過ごしているのか〉 多くの日本人は、キリスト教世界でもっとも重要なお祭りをクリスマスだと思っているが、そうでは無い。たしかにクリスマス(降誕祭)は、キリストであるイエスが赤ん坊の形をとってこの世に降りてきたという重大な出来事を記念する祭りである。しかし、キリスト教徒にとってそれ以上に重要なのは、人間社会でしばらく時を過ごしたイエスが、十字架にかけられ一度は殺されたのに見事に復活し、自分は神だと証明したことを記念するイースター(復活祭)だ。 イエスは復活という奇跡を示したからこそ人間では無く神(キリスト)だということになり、それゆえにイエスの言行を記録した四つの福音書は『新約聖書』に収録されたはずだ。それなのに、その教義の根幹をなしている「生誕(降誕)」と「昇天(復活)」が記されていない福音書があるのはどういうことか、と幸徳は鋭く批判しているのである。そして、幸徳は次のように断じる。〈聖書は神話なのだ。小説なのだ。神話小説として読むのはよかろう。玩ぶのはかまわない。研究するのもまた大いに結構だ。けれども基督の伝記としては半文銭の価値もないのだ〉 そして幸徳は、そもそもイエスが歴史上本当に実在したのか、キリスト教世界以外の歴史家の史書を参照し考証している。たとえば、歴史家フラウィウス・ヨセフス(紀元37年~100年頃。幸徳は「フラヴイアス・ジョセフス」と表記)は、名著『ユダヤ戦記』の著者としても有名だが、イエスの死後(復活後)さほど時を経ないうちに生まれたユダヤ人の大歴史家がイエスのことなどまったく記録していない、と述べている。 つまり、キリスト教とは直接関係が無い第三者的な立場の同時代の歴史家で、イエスの実在を証明する記述をしている者は一人もいないということである。そして、〈宗教は必ずしも個人的建設者を必要としない〉〈祖師が宗教を作るよりもむしろ宗教が祖師を作るというのも、決して珍しいことではない〉(=イエスは後から作られた架空の存在である、ということ)と論を進め、キリスト教徒がイエスの「十字架上の死」に基づいて「十字を切る」習慣があることについても、十字の形は古代から使われてきた男性の生殖器などを示す記号であって、〈基督の磔刑に由来すると考えたり、基督教に専有の記号だと考えるのは、大間違いである〉と指摘する。幸徳はキリスト教の言うべき「三位一体論」についても舌鋒鋭く批判しているが、最後の結論はこうだ。〈基督教徒が基督を史的人物とみなし、その伝記を史的事実と信じているのは、迷妄である。虚偽なのだ。迷妄は進歩を妨げ、虚偽は世の中の道義を害する。断じてこれを許すわけにはいかない。その仮面を奪い去り、粉飾の化粧を?ぎ落として、真相実体を暴露し、これを世界の歴史から抹殺し去ることを宣言する〉 以上の「宣言」をもって幸徳はこの『基督抹殺論』を締めくくっている。たしかに熱のこもった著作であることは間違いないのだが、死刑が予想される苛烈な環境において、幸徳はなぜそこまでこの作品に情熱を注いだのか。普通に考えると、どうしても納得がいかない。しかし、ここで当時の状況を頭に置くと見えてくる仮説がある。その状況とは、他ならぬこの著作の現代語訳者佐藤雅彦が「解説」で指摘しているもので、〈天皇をじかに批判することは、当時の言論出版規制のもとでは事実上、不可能であった。(中略)菅野スガは、幸徳秋水のもとで政府批判の刊行物を出版しようとしたが官憲に発禁処分を喰らい、秘密裏に読者に配布して逮捕され、現在の金額で数百万円相当の罰金を科されて(中略)もはや言論では社会変革など無理だと観念して、直接的な暴力革命を志向するようになったほどだった。〉(『現代語訳 幸徳秋水の基督抹殺論』(佐藤雅彦訳 鹿砦社刊) これが、徳冨健次郎が『謀叛論』で指摘していた「政府の遣口」すなわち「網を張っておいて、鳥を追立て、引かかるが最期網をしめる。陥穽を掘っておいて、その方にじりじり追いやって、落ちるとすぐ蓋をする」だろう。一方、佐藤は、こういう状況下において幸徳は、直接天皇を批判した著作を書いても多くの人には絶対に伝わらないので、こういうやり方を取らざるを得なかった。 つまり、この著作の目的は基督の抹殺では無く、「今上天皇・睦仁」の「神格性」の「抹殺」、「天皇教という迷信」の「打破」であった、と考えているわけだ。この考え方自体は佐藤以前にも存在したものだが、的確な見方と言っていいだろう。私もそう思う。幸徳の本音はそれであったに違いない。そして、私はこの件で幸徳の「手本」になった書物があると推察している。唯一「生き残った」著作 それは、江戸時代の『靖献遺言』である。どんな書物かと言えば、次の説明が一番わかりやすいかもしれない。〈江戸前期の思想書。八巻。浅見絅斎(けいさい)著。貞享四年(一六八七)成立。楚の屈原から明の方孝孺までの、節義を失わなかった八人の中国人の遺文に略伝などを付し、日本の忠臣、義士の行状を付載する。当初は日本の人物を中心にする予定であったが、幕藩体制を考慮して中国のそれに換えた。自説を何ら付していないが、尊皇思想の展開に影響を与えた。(以下略)〉(『日本国語大辞典』小学館刊)「尊皇思想の展開に影響を与えた」とあるが、じつはそんな生易しいものでは無かった。いまでは忘れ去られているが、これはかつて「明治維新を招来した書物」などと評されたこともあったのである。幕末の尊皇思想を研究した山本七平は、その著『現人神の創作者たち』(文藝春秋刊)で、この書物のことを「維新の志士といわれた人びとにとって、この『靖献遺言』は文字通りの「聖書」であった。たとえば頼三樹三郎のように『靖献遺言でこりかたまった男』と評されることは、最大の賛辞であった」と述べている。 私の愛読者なら『靖献遺言』は「右翼」で、幸徳秋水のほうはバリバリの「左翼」だから両者はまったく関係無い、とは思わないだろう。では、どこが幸徳の手本なのか。 明治時代に「天皇をじかに批判することは、当時の言論出版規制のもとでは事実上、不可能」であったように、近代以後のような出版体制の無かった江戸時代においては、「将軍をじかに批判することは絶対に不可能」であった。しかし、朱子学者としての絅斎が望んだのは、「覇者にすぎない徳川将軍家は、日本の統治を真の王者である天皇家に返すべきだ」ということだ。 たしかに、幕末このことは大政奉還という形で実現したが、絅斎の生きていた江戸初期にはそんなことを口にしただけで文字通り首が飛ぶ。まともな出版も無い状況下で自分の想いを後世に伝えるにはどうすればいいか? おわかりだろう。だから「中国人の話」にしたのである。この書物には「幕府を倒せ」という主張も、「倒すべきだ」という意見も載せられてはいない。それゆえ江戸中期以降は出版も許されたのだが、この書物を読めば誰でも痛切に感じるのは、「覇者は倒して、王者が政権の主になるべき」ということだ。あくまで「中国の話」なのだが、それを日本に当てはめれば当然「倒幕」が正しい、ということになる。だから「志士の聖書」であり、それに「こりかたまった男」が尊敬されたのだ。 たしかに、『基督抹殺論』と『靖献遺言』では、めざす体制は正反対だ。しかし、まるで写真の陽画と陰画のように両者には共通点がある。博覧強記で古今の文献に通じ明治人でもあった幸徳は、当然この書物の存在と、厳しい「検閲」をいかにして潜り抜けたかを知っていただろう。だからその方法論に学び、「天皇抹殺論」を「基督抹殺論」に替え、いずれ天皇制打倒に立ち上がる「志士」が多数出現することを願っていたのではないか。 そして、もし幸徳の本音がそうだったとしたら、その目論見は成功したとは言えない。たしかに、この『基督抹殺論』は幸徳の著作がすべて「禁書」となった戦前においても唯一「生き残った」著作となった。しかし、皮肉にも幸徳が打倒をめざした国家主義者たちが、日本の国体を強化しキリスト教を批判するための道具として、これを使った。「あの幸徳ですら基督教は迷妄だと批判していた」という形で、だ。幸徳にとっては不本意なことになったわけである。 では、幸徳の目論見はなぜうまくいかなかったのだろうか? 簡単に言えば、日本の民主主義確立にとって天皇の存在は欠かせなかったという歴史的事実を、幸徳は気づいていなかったか、故意に無視したか、いずれにせよ軽視したからだろう。天皇のカリスマ性を利用しなければ四民平等も実現しなかった。それが冷厳な歴史的事実である。 いずれにせよ、そのカリスマを持った明治天皇の死によって明治時代は終わり、大正という新しい時代の幕が上がったのである。(「国際連盟への道」編・完、第1346回に続く)※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.24 16:00
週刊ポスト
コンビニ赤ワインを専門家がジャッジ(左から大宮勝雄氏、柳沼淳子氏、遠藤利三郎)
コンビニの赤ワインを専門家3人が採点 コスパ最高で美味しいのはどれ?
 今やコンビニはワイン天国! 400円台~1400円台の美味しいワインが揃っているのをご存知だろうか。そこで、ワイン通の大宮勝雄氏、遠藤利三郎氏、柳沼淳子氏の3氏にコンビニの赤ワインをジャッジしてもらった。【審査方法:用意したワインの中を相対的に評価し、審査員各自が10点満点で採点を行なった。総合点は審査員3人の点数を合計した】 見事1位に選ばれたのは、30点満点で29点を獲得した3品。そのうちの1品、ミニストップの『O レゼルヴァ ピノ ノワール』(750ml 1078円)について3氏はこう語る。「タンニン強く時間経過での変化が楽しみ。香り◎」(大宮)「コスパよし。果実味もほどよく、上品。ボディもある」(遠藤)「造り手の工夫を感じる。1000円台で驚きの美味」(柳沼) 2品目はセブン-イレブンの『ベリンジャー・コメモラティブ・コレクション メルロー』(750ml 968円)。「味のバランスよし。香りも◎。ラムのローストに」(大宮)「果実味あふれ、ふくらみのある味わい」(遠藤)「品種の土っぽさを上手に柔らかく抑え、飲みやすい」(柳沼) そして3品目は、同じくセブン-イレブンの『ボルドー赤 メゾン・デュアール ルージュ』(750ml 968円)。「香りがとてもよく、タンニンとのバランスも最高」(大宮氏)「脅威のコスパ。1500~2000円くらいの品質に思える」(遠藤氏)「仄かに香る樽とハーブのニュアンスが嬉しい」(柳沼氏) このほか、3名はピノ・ノワール、カベルネ・ソーヴィニヨン、メルロー、ボルドー、キャンティなど、品種別に16品をテイスティング。別掲の表を参考に、美味しいワインを楽しんで頂きたい。【プロフィール】大宮勝雄氏/1950年生まれ。フランスなど海外での修業を経て、地元浅草で洋食レストランを開店。テレビの料理番組などでも活躍。遠藤利三郎氏/1962年生まれ。J.S.A.認定ソムリエ。早稲田大学オープンカレッジ講師、日本ワイナリーアワード審議委員長などを務める。柳沼淳子氏/1978年生まれ。J.S.A.認定シニアワインエキスパート。フリーアナウンサー。ボルドー騎士、シャンパーニュ・ペリエジュエ騎士。撮影/中庭愉生※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.24 11:00
週刊ポスト
58歳の時に十二指腸がんを患い手術を受けたタレントの清水国明
“親族にがん患者ゼロ”でも罹患した清水国明、ビリー・バンバン菅原進は何を思う
「国民病」とも呼ばれるがんの発生と遺伝の相関関係は、世界中で長年の研究課題とされている。よく“がん家系”という言葉を耳にするが、もちろん親族に誰もがん患者がいなくても罹患することがある──。 兄弟デュオ、ビリー・バンバンの菅原進(74)は2014年、タレントのせんだみつおに誘われて行った大腸の内視鏡検査で盲腸がんが発覚した。菅原が語る。「検査後、入院当日の午前中までレコーディングをして、とても丁寧に歌えた手応えを感じていました。入院への不安はありましたが、もう先生に任せるしかない、と。この病気になったことと関係があるかどうかはわからないけれど、思い返せば、何かあるとお腹が緩くなったり腸が弱い体質だったのかなと思います。 親も兄弟もがんは誰もいません。ただ僕の盲腸がんの手術の2か月後に兄の孝が脳出血で倒れたことで、僕ら親子、兄弟は高血圧が共通していたと気が付きました。孝だけでなく、僕も親父も血圧は高く、遺伝とも生活習慣とも取れるそうですが、家族内でそのような影響もあったかもしれない。今も月1回の血液検査、年1回の内視鏡検査は欠かしていません」 58歳の時に十二指腸がんを患い手術を受けたタレントの清水国明(71)も家族で“自分だけ”が患者となった。清水は「僕のがんは生活習慣が原因だと思う」と振り返る。「僕のがんの原因は暴飲暴食とストレスだったと思う。僕は脂身の肉が大好きで、500gはぺろりと食べちゃうんだけど、魚釣りやログハウス作りに夢中の時は空腹になることすらムカつくほどで、3食抜いて翌日にどかっとステーキを食べるなんてことをよくしていたんです。あと当時はビジネス関係ですごくストレスがかかっていた」 そんな清水の両親は、90歳を過ぎて亡くなるまで、がんはおろか、病気ひとつしない丈夫な体の持ち主だったという。「父は高熱が出ても腹痛止めの薬を飲めば熱が引くくらい頑丈な男でした。母も90歳まで元気で、2人して『私が先に逝きますから』『いや俺が』なんて言い合っていました。そんな僕としては、がんに遺伝があるならば、強い体の遺伝もあるはずだ、と。4番目の妻との間に生まれた子供が3歳で、まさかの孫より小さい子供がいるんです。僕の子供や孫にもまた、強い体が引き継がれていることと信じています」 がんになった当事者たちは、それぞれが深く考え、家族に思いを馳せていた。※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.23 19:00
週刊ポスト
東京・浅草のサンバカーニバルは残念ながら今年も開催見送り(時事通信フォト)
隅田川花火大会、高知よさこい祭り 涙をのんで3年連続中止を決断した祭りの数々
 新型コロナウイルスの感染状況が落ち着きを見せ始め、徳島の阿波踊りや京都の祇園祭など、夏の風物詩が復活する一方で、3年連続で開催を断念するケースもある。東京の夏の夜空を彩る、日本最古とされる隅田川花火大会もそのひとつだ。「悔しいし、仕方ないという気持ちです。国内外のお客様に安全に楽しんでもらえる環境を整えて、来年こそは確実に開催したい」(墨田区役所・岩本健一郎氏) 海外からの観光客の動きも見据え、来年以降に照準を絞る祭りも少なくない。復活の日を楽しみにしている人たちは多いだろう。 以下、涙をのんで今年の開催中止を決定したビッグイベントを紹介しよう。●浅草サンバカーニバル(東京)「東京に行くのはまだ怖いとの地方の声もあり、開催を見送りました」(実行委員会・諏訪信幸氏)。9月に規模を縮小した代替イベント「浅草サンバフェスタ2022」を開催する。●隅田川花火大会 (東京) 毎年100万人近い来場者で賑わう花火大会。会場周辺は住宅密集地で、十分な感染防止策を講じることが難しいことから、3年連続中止という苦渋の決断に至った。●よさこい祭り(高知) 中止が決定されたものの、「生活に根付いた祭りで3年も見送ることは考えられませんでした」(よさこい祭振興会事務局)と、代わりに特別演舞という形のイベントを8月に開催。※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.23 16:00
週刊ポスト
抗がん剤シスプラチンを起因とする難聴に治療薬の開発が進む
iPS細胞で人工臓器を作り「薬剤性難聴」の治療薬を開発する研究進む
 抗がん剤シスプラチンは肺がん、胃がん、悪性リンパ腫など多くのがん治療に用いられている。ただ、がん治療薬としては有用だが、約6割に薬剤性難聴という副作用が起きてしまう。一度でも難聴になってしまえば元には戻らない。そのため現在、iPS細胞から内耳オルガノイド(人工臓器)を培養し、シスプラチン起因性難聴に関する治療薬開発の研究が進められている。 聞こえは音(空気の振動)が耳に取り込まれ、内耳の有毛細胞によって神経信号に変換されることで始まる。この信号を蝸牛神経節細胞が脳に伝え、音として認識される。 シスプラチン起因性難聴とは薬剤の副作用の一つ。約6割に発生し、結果的にこれらの細胞が障害されると再生されず、感音難聴は治らない。 難聴患者から内耳細胞を取り出せないので、原因究明や治療薬開発については主にマウスなど動物を使った研究が行なわれてきた。しかし、マウスに効果があっても人間には効かない治療薬が多い。 そこで現在、東京慈恵会医科大学、北里大学医学部、慶応義塾大学医学部が共同で、ヒトiPS細胞を利用した薬剤性難聴の治療薬開発をスタートさせている。 東京慈恵会医科大学耳鼻咽喉科学教室の栗原渉医師に聞いた。「ヒトiPS細胞から蝸牛神経節細胞様細胞(機能を再現したものなので“様”細胞と呼ぶ)と有毛細胞様細胞を含む内耳オルガノイド(人工臓器)の培養に成功しました。この内耳オルガノイドには生体の蝸牛神経節細胞と同様に神経信号を伝達する機能が確認されています。これにシスプラチンを投与すれば実際の内耳で何が起こっているかを培養皿の中で再現できます」 内耳オルガノイドにシスプラチンを投与すると活性酸素種が過剰に産生される。研究では、この活性酸素種により、培養皿の蝸牛神経節細胞様細胞がアポトーシス(細胞死)を起こすことが明らかになった。他にはCDK2阻害剤という薬剤を投与したところ、24時間後の活性酸素種の産生抑制が確認され、長期的な観察では蝸牛神経節細胞様細胞のアポトーシスまでは防げなかったが、シスプラチンの神経毒性作用を短期的に抑制できたことも確認。こうした作用のメカニズムに関しては今後も研究が続けられ、将来的な治療薬候補が見つかるだろうと考えられている。「抗がん剤は事前に投与と終了時期がわかっているので、例えばシスプラチン投与と同時に治療薬を投与できれば薬剤性難聴を予防できる可能性があります。2000人に1人といわれる遺伝性難聴の治療薬開発にiPS細胞が有効だと考えてもいます。またiPS細胞は患者の血液で作ることが可能なため、その患者の耳の病態を反映した内耳オルガノイドを培養できますから、より深く難聴の原因や有効な治療法を見つけ出したいと思っています」(栗原医師) これからも難聴だけでなく、各分野でiPS細胞を使い、生体から取り出すことが難しい臓器の培養を成功させ、障害に対抗する画期的な創薬開発を目指してほしい。取材・構成/岩城レイ子 イラスト/いかわやすとし※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.23 16:00
週刊ポスト
母方の祖父、母、そして自身ががんになった元プロレスラーの小橋建太(時事通信フォト)
腎臓がんになった元プロレスラー小橋建太が語る“がん家系”「娘のことが心配」
 日本人の死因の第1位で「国民病」とも呼ばれるがん。よく“がん家系”という言葉を耳にするが、がんの発生と遺伝の相関関係は世界中で長年の研究課題とされてきた。がんと「遺伝」や「家族歴」を巡る研究結果が次々と明らかになっているが、実際に「親子でがん」になった当事者はどう感じているのか。 中咽頭がんを患った俳優の村野武範(77)は、「母親ががんになっていたことは頭にありましたが、50代まで1日100本は吸っていたタバコのほうが気になっていたのも事実。2人に1人ががんになる今、何とも言えないという気持ちです」と語る。 親に罹患歴があっても、自身ががんになる前の心構えや罹患した時の気の持ちようは人それぞれのようだ。元フジテレビアナウンサーの露木茂(81)は、腎臓がんを医師から告げられた際、「母も胃がんだったし、関係あるのかなと思った」と語る。「79歳で腎臓がんを患うまではずっと健康体で、タバコを1日1箱吸っても、お酒を毎日飲んでも不調知らずでした。一昨年、耐え難い腹痛に襲われて入院、虫垂炎とわかって手術。その時の検査で、偶然腎臓がんが見つかった。言われてすぐ、母が胃がんで苦しんだことを思い出しました。先生から『ご家族でがんになられた方はいますか』と聞かれ、『母が胃がんで亡くなっています』と答えました。僕の周囲にも、がんになって医師に『身内にいるか』と聞かれた人がいます」 むしろ露木は父母から「丈夫な体」を受け継いだと思っていたという。「母も私と同じで、82歳で胃がんを患うまで健康体でした。75歳で入浴中に心臓麻痺で亡くなった父も、ずっと健康。私も79歳まで何の不調もなかったのは、父と母の強い体を引き継いだと思って感謝していました。息子が2人いますが、彼らもいたって健康で、心配はしていません」 一方で母方の祖父、母、そして自身ががんになった元プロレスラーの小橋建太(55)はこう言う。「10万人に約6人しかいない腎臓がんに罹ったのはチャンピオンベルトを奪い返したばかりの39歳の時で、『何で俺が』という思いでした。母方の祖父が80代で膵臓がんで亡くなり、母は僕が発症した翌年に大腸がんを患いましたが、当時はそのことを気にする余裕はありませんでした。 色々な医師に遺伝について尋ねましたが、がんのほとんどは環境的な要因が大きいと言われました。ただ言えることは、がんは2人に1人が罹り、3人に1人が亡くなる病気だということ。決して他人事ではありません。僕には娘がいて、彼女のことは少し心配に思うことがあります」 小橋が「娘のことが心配」と言う背景には、こんな思い出も影響しているという。「2007年12月の復帰戦の後に放送された僕の密着番組を見て、当時小学生の小児がんの男の子が主治医を通じて『会いたい』と言ってきたんです。彼は余命1年半で小学校は卒業できないと言われていましたが、中学生になった後、亡くなりました。 生前、彼から手術の痕を見せてもらった時、小さな体に傷痕がたくさんあって胸が詰まりました。がんになった苦しさや家族のつらさは経験したからこそわかります。だから僕は小児がんを支援するゴールドリボンを常に身に着けているのです」※週刊ポスト2022年7月1日号
2022.06.22 19:00
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左から主演のオースティン・バトラー、妻役のオリヴィア・デヨング、バズ・ラーマン監督、トム・ハンクス(EPA=時事)
『トップガン』『エルヴィス』大ヒットが示すアメリカの“昭和ブーム”
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TBS・安住紳一郎アナウンサーの魅力の源は?(時事通信フォト)
TBS安住紳一郎アナ、恩師や先輩アナが明かす“天才的なしゃべり”“のスキル
週刊ポスト
判決が出る前に謝罪動画をYouTubeに公開していた田中聖(公式YouTubeより)
出身地を隠さないアイドルだった田中聖 罪を償い寛解したなら帰る場所はある
NEWSポストセブン
眞子さまの箱根旅行のお姿。耳には目立つイヤリングも(2018年)
小室圭さんの妻・眞子さん 華やかだった4年前の「箱根・女子旅ファッション」
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メディアの前に久しぶりに姿を現したブラザートム(撮影/黒石あみ)
ブラザートムが不倫騒動・事務所独立からの今を語る「娘にはよくハガキを書いてあげるんです」
NEWSポストセブン
小室圭さんと眞子さん
小室圭さん妻・眞子さんがNYで行きつけのスーパーから見えてきた“妻の気遣い”「日本でいえば『成城石井』」 
NEWSポストセブン
結婚し、日本メディアが情報をキャッチしづらいNYで、デイリーメールが追跡取材(写真/JMPA)
小室圭さん・眞子さん夫婦が「離婚で終わったとしても…」英デイリー・メールが報じた「茨の道」
NEWSポストセブン
高橋真麻
高橋真麻「おでんの卵8個食べても太らない」女性が憧れる美スタイルの理由
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