もう1つ忘れてはならないのは、テレビ視聴者の高齢化。近年、テレビ局は視聴率獲得に不可欠なリアルタイム視聴をうながすために、ネットや録画での試聴が多い若年層ではなく、中高年層をメインターゲットに据えた番組を増やしています。朝ドラや昼ドラの時代設定に加えて、情報番組やバラエティー番組でも昭和の文化やニュースを扱う企画が増えたため、ベテラン女性アナウンサーは適役なのでしょう。
中高年層が女性アナウンサーに求めるのは、若さや美しさではなく、安心感や人間性。タレントのようなオーラを醸し出す「女子アナ」ではなく、会社員という立場をわきまえた親しみの持てる「女性アナウンサー」なのです。
一方、ベテラン女性アナウンサー本人は、「後輩たちの道しるべにならなければ」という使命を抱えています。かつては「女子アナ30歳定年説」なんて言葉もありましたが、会社員である彼女たちは、「人事異動でアナウンス部から他部署に行かなければならない」という不安を抱えているもの。全国的に顔と名前を知られたタレントのような立ち位置であるにも関わらず、いきなり「OLになれ」と言われるリスクを抱えているのです。
そんな若手アナウンサーにとって、厳しい状況をくぐり抜けた上に、結婚・出産を経てなおアナウンサーであり続けるベテラン女性アナウンサーたちの姿は希望の星。「30代になったらアナウンサーの仕事がなくなる」「異動させられる」のではなく、「40代、50代になっても、女性アナウンサーとしてこれだけのことができるよ」という実績を作っているのです。
◆テレビの古き良き時代を思わせる存在