国内

日本の家電は過剰スペック、車は平均的だから世界で売れない

 かつて世界を席巻した「日の丸ブランド」はなぜ力を失ったのか。その復活はあるのか。その問題点と可能性を大前研一氏が解説する。

 * * *
 アメリカのコンサルティング会社インターブランドが発表した世界の企業ブランド価値ランキング(2010年)によると、日本勢はトヨタ11位(2009年8位)、ホンダ20位(同18位)、キヤノン33位(同33位)、ソニー34位(同29位)と、トップクラスの下降傾向が顕著だ。

 日経BPコンサルティングが中国の北京と上海で行なったブランドイメージ調査でも、日本勢は北京でソニーの54位、上海でキヤノンの34位が最高という結果だった。

 アメリカが衰退したといってもトップブランドは少しも衰えていないことを考えると、ブランド価値・ブランドイメージの低下は、日本企業にとって実に由々しき問題である。今から20年ぐらい前の日本企業は、AV機器をはじめとする多くの分野で、世界のどこに行っても強かった。

 自動車も同様だ。日本の自動車メーカーは世界最大のアメリカ市場を攻略するため、その特徴を徹底的に研究して新車開発に取り組み、華々しい成果を上げた。日産自動車が1969年にアメリカ向けのスポーツカーとして投入した「フェアレディZ」は、爆発的に売れてポルシェのシェアを大きく奪った。

  トヨタ自動車がアメリカ市場でメルセデス・ベンツと戦うために1989年から展開した高級車ブランド「レクサス」も、数年でアメリカにおけるベンツ全体の売り上げを抜いた。

 そうした成功体験があるにもかかわらず、近年は日本企業の多くが海外本部を縮小したり、現地事務所をたたむなど、“本土撤収”“本土防衛”の方向に動いているため、かつてのような国別対応が難しくなっている。しかも経営陣が、コストダウンのために機種を絞り込まねばならない、という“縮み思考”になっている。

 その結果、いま何が起きているかといえば、エレクトロニクス製品の場合は、すべての主要国のニーズに対応できるよう本社のエンジニアが多様な機能を一機種に詰め込むあまり、過剰スペックで容易に使いこなせない複雑な製品を量産している。

 自動車の場合は、どの国でも売れるように世界の平均値を取ったモデルが増えている。だが、そういう車は1970~80年代にGM(ゼネラルモーターズ)が失敗した「Tカー」「Jカー」のグローバルカー構想(※注)と同じで、実際はどの国にもぴったりとはフィットしていない。

【※注】
グローバルカー構想/基本的プラットフォームを共有することで開発費を削減しながら各国の国情に合わせた製品を派生させるという構想。

※週刊ポスト2011年2月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
高市早苗総理の”台湾有事発言”をめぐり、日中関係が冷え込んでいる(時事通信フォト)
【中国人観光客減少への本音】「高市さんはもう少し言い方を考えて」vs.「正直このまま来なくていい」消えた訪日客に浅草の人々が賛否、着物レンタル業者は“売上2〜3割減”見込みも
NEWSポストセブン
全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン