国内

原発政策 田中角栄なら一方的に「脱」掲げず減原発目指した

 原発を「右肩上がり」で推進させる「電源三法」などの制度を整える一方、「米国の核の傘」の外へ跳び、ウラン確保に奔走した故・田中角栄元総理。彼ならば、東日本大震災と福島第一原発事故による「社会的大転換」とどう向き合い、原発か脱原発かで揺れるエネルギー政策に、どのような道筋を示しただろうか。『田中角栄 封じられた資源戦略』などの著作を持つノンフィクション作家の山岡淳一郎氏が予想する。

 * * *
 田中角栄が生きていたら、エネルギー政策をめぐる現在の難局にどう向き合っただろうか。

 エネルギー資源が血の一滴に匹敵するという考えは今も昔も変わるまい。田中は「大衆像」を胸奥に抱く政治家だった。国民の8割近くが「原発依存からの脱却」を望む以上、原発を減らして自然エネルギーや他のエネルギーへシフトするのは間違いない。

 ただし、エネルギー源の多角化というリスク回避の面から、「原発をゼロに」とは言わないだろう。リアリストの田中なら、一方的に「脱」を掲げ、既得権を持つ勢力と衝突して揺り戻されるような馬鹿な真似はしなかったはずだ。

「減原発」を時代の潮流と受け止め、政局にせず、反対する電力業界や政治家、官僚との「解け合い」に最大の政治力を発揮したと私は想う。官僚出身でも、高学歴でもない角栄が、自民党内で頭角を現わし、頂点に上ったのは、いざというときに敵味方の利害を超えて解け合える調整力を持っていたからだ。

 解け合いとは、古くから伝わる商売の流儀である。取引所で不時の事変や、買い占め、売り崩しなどで相場が急変したとき、混乱を防ぐために売り方と買い方が協議妥協して、一定額で差金決済し、ともに損を被って市場を守る方法だ。

 田中の政治人生で、最大の解け合いは、「日中国交正常化」だった。田中は公明党とのパイプまで使って周恩来首相の真意を確かめ、命がけで北京に乗り込んで、中国との戦争状態に終止符を打った。交渉に際し、人間的つながりを総動員して共通項を見つけ、一気呵成に攻め込んだ。

 今なら減原発に反対する政官財の要所、原発を推進してきた「電力・経産省連合」と「旧科学技術庁グループ(文科、経産、内閣府に分散)」のキーパーソンに接触し、自ら敵対勢力のなかに躍り込み、「理」と「情」を尽くして説得したであろう。

 もちろん人は理屈や人情だけでは動かない。「利」が見込まれなければ、人間の集団は動けない。田中は通産大臣時代、「日米繊維交渉」が膠着状態に陥り、繊維産業界が米国からの輸出規制を受け入れざるをえなくなった局面で、大蔵省と2000億円以上の補償金の話をまとめて業界を説き伏せた。現在なら兆の単位の補償になるだろう。

※SAPIO2011年9月14日号

トピックス

1年ほど前に、会社役員を務める元夫と離婚していたことを明かした
《ロックシンガー・相川七瀬 年上夫との離婚明かす》個人事務所役員の年上夫との別居生活1年「家族でいるために」昨夏に自ら離婚届を提出
NEWSポストセブン
“高市潰し”を狙っているように思える動きも(時事通信フォト)
《前代未聞の自民党総裁選》公明党や野党も“露骨な介入”「高市早苗総裁では連立は組めない」と“拒否権”をちらつかせる異例の事態に
週刊ポスト
『あんぱん』“豪ちゃん”役の細田佳央太(写真提供/NHK)
『あんぱん』“豪ちゃん”役・細田佳央太が明かす河合優実への絶対的な信頼 「蘭子さんには前を向いて自分の幸せを第一にしてほしい。豪もきっとそう思ったはず」
週刊ポスト
韓国アイドルグループ・aespaのメンバー、WINTERのボディーガードが話題に(時事通信フォト)
《NYファッションショーが騒然》aespa・ウィンターの後ろにピッタリ…ボディーガードと誤解された“ハリウッド俳優風のオトコ”の「正体」
NEWSポストセブン
「第65回海外日系人大会」に出席された秋篠宮ご夫妻(2025年9月17日、撮影/五十嵐美弥)
《パールで華やかさも》紀子さま、色とデザインで秋を“演出”するワンピースをお召しに 日系人らとご交流
NEWSポストセブン
立場を利用し犯行を行なっていた(本人Xより)
【未成年アイドルにわいせつ行為】〈メンバーがみんなから愛されてて嬉しい〉芸能プロデューサー・鳥丸寛士容疑者の蛮行「“写真撮影”と偽ってホテルに呼び出し」
NEWSポストセブン
佳子さまを撮影した動画がXで話題になっている(時事通信フォト)
《佳子さまどアップ動画が話題》「『まぶしい』とか『神々しい』という印象」撮影者が振り返る “お声がけの衝撃”「手を伸ばせば届く距離」
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(左/共同通信、右/公式サイトより※現在は削除済み)
《“やる気スイッチ”塾でわいせつ行為》「バカ息子です」母親が明かした、3浪、大学中退、27歳で婚約破棄…わいせつ塾講師(45)が味わった“大きな挫折
NEWSポストセブン
交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
個別指導塾「スクールIE」の元教室長・石田親一容疑者(公式サイトより※現在は削除済み)
《15歳女子生徒にわいせつ》「普段から仲いいからやっちゃった」「エスカレートした」“やる気スイッチ”塾講師・石田親一容疑者が母親にしていた“トンデモ言い訳”
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
「週刊ポスト」本日発売! 「高市総理を阻止せよ」イカサマ総裁選の裏ほか
NEWSポストセブン