国内

松下政経塾の出身者 「もう、休塾、廃塾したらどうですか」

過去248人が学び、総理以下38人の国会議員を生んだ松下政経塾。錚々たる実績ではあるが、「今や堕落した」との指摘がある。作家の山藤章一郎氏がレポートする。

* * *
――参議院議員・江口克彦氏は国会質問で、野田どじょう総理にきびしく迫った。

「松下幸之助さんの薫陶を忘れたか」「国より国民被災者より、党内融和を優先するとはなにごとだ」

松下幸之助の側近を23年間務め、〈政経塾〉で10期まで教えていた江口氏は、現総理・野田佳彦氏の面接官だった。

「私が合格させた頃や、塾生の時分は、野田くんも良かったですよ。907名の受験者から、厳選、厳選で残った23名ですから。この子は政治家になるだろうな、普通の政治家としてはやっていけるだろうなあと思いましたよ。

ところが幸之助さんがいなくなった途端、コロッと変わった。出世争いだけしか頭にない。出世に比例して松下イズムを忘れる反比例。大臣やりたい、総理になりたい。入塾の頃は棒だったけど、だんだんとヤワなビニール紐だ。ただし、面接で採ったのは私だ。私にも責任がある」

江口氏のいう松下イズムとは、〈いずれ日本はとんでもないことになる。いまから、次のみっつを用意しよう〉と生前の松下幸之助が考えた理念である。

ひとつ――国民自身が政治を良くしていく国民運動を興そう。
ふたつ――いまでいえばシンクタンク、政治研究所を設立しよう。
みっつ――政治家養成塾の開設。

江口氏の憤激は深い。

「ところがなんたることか、野田くんも前原くんも、日本と世界の繁栄・平和・幸福を実現するこの志、松下イズムなどどっかに忘れた。〈株式会社民主党〉という大企業に入って、志をポロポロ剥がし、いまじゃ取るに足りない政治家です。後に続く者も、学ぶよりブランド欲しさで入塾して、泉下の松下幸之助さんは泣いておられますよ。使命は終わった。もう、休塾、廃塾したらどうですか。

幸之助さんの理念をどう思うかと訊かれて『いやあ、私深く調べたことがないんだ』と、こういう卒塾生がたくさんおる。

松下政経塾というんだから、松下幸之助の思想を学ぶところでしょ。彼が亡くなって32年。堕落しました。みんなギラギラ、政治家になりたい一辺倒です」

※週刊ポスト2011年10月28日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

アルジェリア人のダビア・ベンキレッド被告(TikTokより)
「少女の顔を無理やり股に引き寄せて…」「遺体は旅行用トランクで運び出した」12歳少女を殺害したアルジェリア人女性(27)が終身刑、3年間の事件に涙の決着【仏・女性犯罪者で初の判決】
NEWSポストセブン
19歳の時に性別適合手術を受けたタレント・はるな愛(時事通信フォト)
《私たちは女じゃない》性別適合手術から35年のタレント・はるな愛、親には“相談しない”⋯初めての術例に挑む執刀医に体を託して切り拓いた人生
NEWSポストセブン
ガールズメッセ2025」に出席された佳子さま(時事通信フォト)
佳子さまの「清楚すぎる水玉ワンピース」から見える“紀子さまとの絆”  ロングワンピースもVネックの半袖タイプもドット柄で「よく似合う」の声続々
週刊ポスト
永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
多くの外国人観光客などが渋谷のハロウィンを楽しんだ
《渋谷ハロウィン2025》「大麻の匂いがして……」土砂降り&厳戒態勢で“地下”や“クラブ”がホットスポット化、大通りは“ボヤ騒ぎ”で一時騒然
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(左・共同通信)
《熊による本格的な人間領域への侵攻》「人間をナメ切っている」“アーバン熊2.0”が「住宅街は安全でエサ(人間)がいっぱい」と知ってしまったワケ 
声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン