国内

『家政婦のミタ』が視聴率で『南極大陸』に圧勝の理由を分析する

『家政婦のミタ』の瞬間視聴率が30%を超える一方で、10%台を右肩下がりで急降下中の『南極大陸』。同じく大物俳優を起用した2つのドラマが、これほど明暗をはっきり分けたのはなぜなのか。その秘密を、作家で五感生活研究所の山下柚実氏が分析する。

* * *
松嶋菜々子主演のドラマ『家政婦のミタ』(日本テレビ系、毎週水曜午後10時~)がぶっちぎりの快進撃。瞬間視聴率が30%を超え、大きな話題になっています。

それにしてもいったいなぜ、このドラマが、ここまで多くの人の興味を惹きつけるのでしょうか。

まるでロボットのように無表情、一秒も遅れずにやってきて指示を完璧にこなす。命令されれば殺人未遂ともいえるような極端な行為まで、淡々と実行する家政婦のミタ。

そのとんでもないドラマ設定と、とんでもない人物像を、揺るぎない力で演じきってしまう女優・松嶋奈々子。その姿を視聴者はあっけにとられて眺めている……。そんなところでしょうか。

しかし、あえて同時期に放映中の大型ドラマ『南極大陸』と比較してみれば、その特徴が際立って見えてきます。

『南極大陸』と『家政婦のミタ』。

まず、主役はいずれも、誰もが知っている大物俳優。キムタクと松嶋奈々子は、年齢もほとんど重なる30代後半。つまり、若さだけで注目されるアイドルではなく、にじみ出る人生経験で勝負する中堅世代です。

では制作費は?  極端な差がありそうです。

『南極大陸』はTBS開局60周年大型企画で、1本約1億円。かたやミタは、ロケもほとんど無く、3000万円程度と実に節約倹約型。

それなのに、視聴率はご存じのように残酷なほどくっきりと分かれています。『南極大陸』はぐんぐん右肩下がりで、10%台を急降下中。ミタは右肩上がりで30%台に届く勢い。

どうして、こんなにも差が出たのでしょうか?

一言で言えば、『南極大陸』は同情を売り物にしたドラマにしか見えません。南極観測のために命をかけた男たちがこんなに大変だったとか、犬たちがかわいそう、といったお涙頂戴路線。いわば苦労話の押し売りの印象です。

どんなにキムタクが大声を張り上げてたいへんさを叫んでも、3.11を経験してしまった私たちには、現実の出来事の方が何倍も過酷で苦悩に満ちて映る。ドラマから「同情」を強要されても、視聴者には響かなかったのです。

一方、『家政婦のミタ』は、母を失った子どもたち、不倫していた父親、バラバラの家族が背景のドラマ。そして、苦しい過去を背負い、孤独で笑うことさえ禁じられたミタ。すべてが崩壊から出発しています。

表情ひとつ崩さず徹底的に鉄面皮のミタは、いわば現実のシビアさを象徴している。そのどん底から、ひとつひとつ生きることを再生していくドラマ。

ミタが、少しずつ、怒り、泣き、表情を見せ始めるプロセスを、視聴者は共感し、共有しながら、その「再生への力」を分かちあおうとしているのです。

最終回まで残りわずか。いったいどの瞬間で、能面のミタの顔に「ほほえみ」が蘇るのか。その時を、何千万人というお茶の間の視聴者が、固唾をのんで待ち受けているとすれば……。

『家政婦のミタ』の連続ドラマのプロセスは、日本人の心の復興・再生と重なりあい響きあっている。だからこそ、ぶっちぎりの高視聴率を獲得しているのではないでしょうか。


関連記事

トピックス

山本由伸選手とモデルのNiki(共同通信/Instagramより)
《噂のパートナーNiki》この1年で変化していた山本由伸との“関係性”「今年は球場で彼女の姿を見なかった」プライバシー警戒を強めるきっかけになった出来事
NEWSポストセブン
送検のため奈良西署を出る山上徹也容疑者(写真/時事通信フォト)
「とにかく献金しなければと…」「ここに安倍首相が来ているかも」山上徹也被告の母親の証言に見られた“統一教会の色濃い影響”、本人は「時折、眉間にシワを寄せて…」【安倍元首相銃撃事件・公判】
NEWSポストセブン
マレーシアのマルチタレント「Namewee(ネームウィー)」(時事通信フォト)
人気ラッパー・ネームウィーが“ナースの女神”殺人事件関与疑惑で当局が拘束、過去には日本人セクシー女優との過激MVも制作《エクスタシー所持で逮捕も》
NEWSポストセブン
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
【白鵬氏が九州場所に姿を見せるのか】元弟子の草野が「義ノ富士」に改名し、「鵬」よりも「富士」を選んだことに危機感を抱いた可能性 「協会幹部は朝青龍の前例もあるだけにピリピリムード」と関係者
NEWSポストセブン
デコピンを抱えて試合を観戦する真美子さん(時事通信フォト)
《真美子さんが“晴れ舞台”に選んだハイブラワンピ》大谷翔平、MVP受賞を見届けた“TPOわきまえファッション”【デコピンコーデが話題】
NEWSポストセブン
指定暴力団六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)
《六代目山口組・司忍組長2月引退》“竹内七代目”誕生の分岐点は「司組長の誕生日」か 抗争終結宣言後も飛び交う「情報戦」 
NEWSポストセブン
部下と“ホテル密会”が報じられた前橋市の小川晶市長(時事通信フォト/目撃者提供)
《前橋・小川市長が出直し選挙での「出馬」を明言》「ベッドは使ってはいないですけど…」「これは許していただきたい」市長が市民対話会で釈明、市議らは辞職を勧告も 
NEWSポストセブン
活動を再開する河下楽
《独占告白》元関西ジュニア・河下楽、アルバイト掛け持ち生活のなか活動再開へ…退所きっかけとなった騒動については「本当に申し訳ないです」
NEWSポストセブン
ハワイ別荘の裁判が長期化している
《MVP受賞のウラで》大谷翔平、ハワイ別荘泥沼訴訟は長期化か…“真美子さんの誕生日直前に審問”が決定、大谷側は「カウンター訴訟」可能性を明記
NEWSポストセブン
11月1日、学習院大学の学園祭に足を運ばれた愛子さま(時事通信フォト)
《ひっきりなしにイケメンたちが》愛子さま、スマホとパンフを手にテンション爆アゲ…母校の学祭で“メンズアイドル”のパフォーマンスをご観覧
NEWSポストセブン
今季のナ・リーグ最優秀選手(MVP)に満票で選出され史上初の快挙を成し遂げた大谷翔平、妻の真美子さん(時事通信フォト)
《なぜ真美子さんにキスしないのか》大谷翔平、MVP受賞の瞬間に見せた動きに海外ファンが違和感を持つ理由【海外メディアが指摘】
NEWSポストセブン
柄本時生と前妻・入来茉里(左/公式YouTubeチャンネルより、右/Instagramより)
《さとうほなみと再婚》前妻・入来茉里は離婚後に卵子凍結を公表…柄本時生の活躍の裏で抱えていた“複雑な感情” 久々のグラビア挑戦の背景
NEWSポストセブン