国内

原発ストレステスト「テスト」とはいっても不合格は存在せず

 野田佳彦首相は、原発再稼働に向けて原発のストレステストを行うという。しかし、ストレステストとはどんなテストなのか? 東京新聞・中日新聞論説副主幹の長谷川幸洋氏はこう説明する。

 * * *
 原発再稼働問題が焦点になってきた。野田佳彦首相は東日本大震災から1年の記者会見で再稼働問題について、こう述べた。

「最新の知見を踏まえ、ストレステスト(耐性調査)の妥当性を原子力安全委員会が確認する。私と枝野幸男経産相、藤村修官房長官、細野豪志原発相の4人で安全性を確認し、政府を挙げて地元に説明する。私がその先頭に立つ」(日本経済新聞、3月12日付)

 ストレステストというのは電力会社がコンピュータで地震の揺れや津波の高さなど適当な数値を入力し、原発の安全性をチェックする試験だ。原子力安全・保安院が結果を評価し、原子力安全委員会が内容を確認する。野田は加えて、自分を含めた閣僚4人がさらに安全委の評価を確認して、自ら再稼働に向けて地元の説得に当たる方針を表明したのだ。

 テストなら当然、合格もあれば不合格もあると考えるのが普通だろう。「原発をテストする」というのだから、不合格なら再稼働はないと思うのが常識的受け止め方だ。

 ところが原発のストレステストはまったく違う。安全性を「調べる」のではなく「示す」のが目的なのだ。保安院は「住民に安全性を理解してもらうための材料」(東京新聞、2011年9月21日付)と説明している。「安全性をチェックする」と説明されれば、不合格もあると思ってしまうが、実は結論は初めから合格しかない。

 ずばり言えば、これは国民をだます八百長、茶番である。テストという言葉を使って、あたかも不合格もあるかのように誤解させる。そのうえで首相が「安全でした」ともっともらしく確認する芝居を演じて、地元を説得する段取りである。それならテストなどと目くらましを言わず、「再稼働手続き」と正直に言うべきだ。

※週刊ポスト2012年3月30日号

関連記事

トピックス

交際が報じられた赤西仁と広瀬アリス
《赤西仁と広瀬アリスの海外デートを目撃》黒木メイサと5年間暮らした「ハワイ」で過ごす2人の“本気度”
NEWSポストセブン
世界選手権東京大会を観戦される佳子さまと悠仁さま(2025年9月16日、写真/時事通信フォト)
《世界陸上観戦でもご着用》佳子さま、お気に入りの水玉ワンピースの着回し術 青ジャケットとの合わせも定番
NEWSポストセブン
秋場所
「こんなことは初めてです…」秋場所の西花道に「溜席の着物美人」が登場! 薄手の着物になった理由は厳しい暑さと本人が明かす「汗が止まりませんでした」
NEWSポストセブン
身長145cmと小柄ながら圧倒的な存在感を放つ岸みゆ
【身長145cmのグラビアスター】#ババババンビ・岸みゆ「白黒プレゼントページでデビュー」から「ファースト写真集重版」までの成功物語
NEWSポストセブン
『徹子の部屋』に月そ出演した藤井風(右・Xより)
《急接近》黒柳徹子が歌手・藤井風を招待した“行きつけ高級イタリアン”「40年交際したフランス人ピアニストとの共通点」
NEWSポストセブン
和紙で作られたイヤリングをお召しに(2025年9月14日、撮影/JMPA)
《スカートは9万9000円》佳子さま、セットアップをバラした見事な“着回しコーデ” 2日連続で2000円台の地元産イヤリングもお召しに 
NEWSポストセブン
高校時代の青木被告(集合写真)
《長野立てこもり4人殺害事件初公判》「部屋に盗聴器が仕掛けられ、いつでも悪口が聞こえてくる……」被告が語っていた事件前の“妄想”と父親の“悔恨”
NEWSポストセブン
世界的アスリートを狙った強盗事件が相次いでいる(時事通信フォト)
《イチロー氏も自宅侵入被害、弓子夫人が危機一髪》妻の真美子さんを強盗から守りたい…「自宅で撮った写真」に見える大谷翔平の“徹底的な”SNS危機管理と自宅警備体制
NEWSポストセブン
鳥取県を訪問された佳子さま(2025年9月13日、撮影/JMPA)
佳子さま、鳥取県ご訪問でピンクコーデをご披露 2000円の「七宝焼イヤリング」からうかがえる“お気持ち”
NEWSポストセブン
長崎県へ訪問された天皇ご一家(2025年9月12日、撮影/JMPA)
《長崎ご訪問》雅子さまと愛子さまの“母娘リンクコーデ” パイピングジャケットやペールブルーのセットアップに共通点もおふたりが見せた着こなしの“違い”
NEWSポストセブン
ウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(23)がナイフで切りつけられて亡くなった(Instagramより)
《監視カメラが捉えた残忍な犯行》「刺された後、手で顔を覆い倒れた」戦火から逃れたウクライナ女性(23)米・無差別刺殺事件、トランプ大統領は「死刑以外の選択肢はない」
NEWSポストセブン
国民に笑いを届け続けた稀代のコント師・志村けんさん(共同通信)
《恋人との密会や空き巣被害も》「売物件」となった志村けんさんの3億円豪邸…高級時計や指輪、トロフィーは無造作に置かれていたのに「金庫にあった大切なモノ」
NEWSポストセブン