ライフ

作家佐木隆三氏 74歳で老老離婚し現在は故郷でひとり暮らし

 現在の高齢化社会は、若き日をひたすら働くことに費やし、日本の高度経済成長を支えてきた世代に、どのように老いを受け入れるかという問いを否応なしに投げかける。この4月に75歳となった作家・佐木隆三氏は今、故郷の海を見下ろす山荘で愛猫と暮らす。自らの老境について語った。

 * * *
 北九州・門司港。大正3年築のモダンな駅舎や煉瓦造りの倉庫街を今も残す街並みは、近年「門司港レトロ」として観光客や鉄道ファンから一際の人気だが、作家・佐木隆三こと本名・小先良三氏にとっては「生まれて初めて見た祖国」が、ここ関門海峡だという。

「私は1937(昭和12)年、現在の北朝鮮の生まれで、広島から半島に渡って同地の鉱業会社に勤務していた父の出征後、母は僕ら4人の子供を連れて日本へ引き揚げ、関釜連絡船が港に着いたのは昭和16年暮れのよく晴れた日のことでした。

 北朝鮮は地下資源に恵まれるぶん、全体にごつごつした岩山が多いんですよ。それだけに海も山も青く、陽光に映えてキラキラ輝いている関門海峡の景色が僕には眩しくてね。ああ、日本はなんて美しい国だろうと、幼心に感激した。今日は少し風が強いけれど、ここからだと関門橋がすぐそこでしょう? この景色が毎日見られるだけで、僕は満足なんです」

 と、氏が指さす先には本州と九州とを繋ぐ関門橋が悠然と佇み、源平の古戦場・壇ノ浦や大瀬戸と呼ばれる水路を貨物船や小舟が盛んに行き交う。1999年8月、東京・杉並から故郷に移り住んだ佐木氏は、その後門司港を一望する高層マンションを経て、山の中腹に建つここ「風林山房」に居を定めた。

 元は割烹だった和風家屋を周囲の山林共々買い求めて改装し、贅沢に窓を取った各室からは書斎にいても寝室にいても海が望める。中央の座敷では地元の仲間と酒を酌み交わすことも多く、風林山房の名は氏の古い友人で下関出身の直木賞作家・古川薫氏の命名という。

 もっとも同居人は今のところ、山荘から名前を取った愛猫「ふうちゃん」(♀)だけ。40年来連れ添った夫人とは昨年7月、正式に協議離婚が成立し、佐木氏は目下、75歳にして独り身なのである。

「世間的に見れば熟年離婚ならぬ“老老離婚”といいますか、要するに私は後期高齢者の一歩手前になって妻に愛想を尽かされ、捨てられた男というわけです。元妻だった人は石垣市出身で、私が沖縄の本土復帰取材に通っていた頃、まだ20歳の教育実習生だった彼女と出会い、そのさらに前の妻と離婚が成立後、周囲の反対を押し切る形で再婚したんですけどね。

 私は18歳で入った八幡製鉄を27歳の時に辞め、30歳で東京に出て38歳で直木賞を受賞し、以来馬車馬のように働いてきた。せめて60歳過ぎたら故郷で暮らしたいと、九州に骨を埋める覚悟で帰った私に、彼女は『東京のあなたと結婚したのであって九州の人と結婚したつもりはない』と別居しました。

 そうは言いながら一度は住民票を移して北九州市立文学館の館長を務める私の妻として振る舞い、小倉のマンションで何年か暮らしたんですがね。やはり付き合いきれないということで、今は娘たちのいる関東のどこかにおるはずです。特にこの山荘にはほんの少しいただけでしたね。私が毎日海を眺めるか畑をいじるかして酒ばかり飲んでるというので、つくづく嫌気がさしたらしい。でも70過ぎて酒でも飲まなきゃ、他にすることなんてないじゃありませんか(笑い)。

 今は娘も含めて葉書一枚寄越しませんし、会っても意味がないのでもう会わないと思いますけど、彼女には結婚当初から随分迷惑をかけたので私なりに恥ずかしくないことはしたつもりです。私にはこの山荘だけ残して、マンションを売った金にも幾らか足して渡しましたし、彼女は私より13年下なので、あまり歳を取らないうちに別れられて良かったと思ってくれているんじゃないですか(笑い)。まあ自分なりによく出来たかなと、一方的に思っていますけど」

※週刊ポスト2012年5月4・11日号

トピックス

肺がんのため亡くなったフリーアナウンサーの久米宏さん(時事通信フォト)
【追悼】久米宏さん 本誌だけに綴っていた「完全禁煙」と「筑紫哲也さんとの“再会”」
NEWSポストセブン
再選を確実とし、あいさつする小川晶氏(時事通信フォト)
《“日本中を騒がせた”ラブホ問題から復活》小川晶前橋市長、説明に「納得してない」人が52%だったにもかかわらず再選できたのはなぜか?臨床心理士「美化され…」
NEWSポストセブン
モデルやレースクイーンとして活動する瀬名ひなのさん(Xより)
《下半身をズームで“どアップ”》「バレないように隣のブースから…」レースクイーン・瀬名ひなのが明かした卑劣な”マナー違反撮影“、SNSの誹謗中傷に「『コンパニオンいらない』は暴論」
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《鎖骨をあらわに予告》金髪美女インフルエンサーが“12時間で1000人以上と関係”の自己ベスト更新に挑戦か、「私が控えめにするべき時ではありません」と“お騒がせ活動”に意欲
NEWSポストセブン
美貌と強硬姿勢で知られるノーム氏は、トランプ大統領に登用された「MAGAビューティ」の一人として知られる(写真/Getty Images)
〈タイトスーツに身を包む美貌の長官〉米・ミネアポリスで移民当局が女性射殺 責任者のクリスティ・ノーム国土安全保障長官をめぐる“評価”「美しさと支配の象徴」
NEWSポストセブン
再選を確実とし、あいさつする小川晶氏(時事通信フォト)
《ラブホ通い詰め問題》「1日100人に謝罪&挨拶」「ポエティックなインスタ投稿」で小川晶氏が前橋市長に返り咲き、支援者は「皮肉だけど、山本一太さんに感謝状を渡したい(笑)」
NEWSポストセブン
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
《クスリ漬けか…との声も》ギャル系美女が映っていた“異様な監視カメラ映像”とは》「薬物を過剰摂取し、足も不自由で、死んでしまう…」中国インフルエンサー(20)の住居の管理人が証言
NEWSポストセブン
高木美帆(Getty Images)
【ミラノ・コルティナ冬季五輪】荻原次晴さんが解説 「五輪の魔物」に打ち勝てる連続メダル候補の選手たち 高木美帆、渡部暁斗、平野歩夢、小林陵侑、高梨沙羅ら
週刊ポスト
中国人インフルエンサーがカンボジアの路上で変わり果てた姿で発見された(TikTokより)
「クスリを支配の道具に」「行為中に使う客層も…」変わり果てた中国人美女インフルエンサーが保護されたシアヌークビル、専門家が語る現地アングラ界隈のリアル
NEWSポストセブン
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
〈自慢のロングヘアがボサボサに…〉中国美女インフルエンサー(20)、精神に異常をきたして路上生活…母親が電話で抱いた疑念「話し方を指示されているのでは」【高給求めてカンボジアに渡航も】
NEWSポストセブン
秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《不敬どころの騒ぎじゃない》秋篠宮家・佳子さまも被害に…AIを用いた性的画像の被害が世界的問題に 専門家が指摘「男女問わず人権侵害」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《もう家族でハワイに行けない…》“1.5億円の脱税疑惑”の宮崎麗果、“ESTA取得困難”で恒例の「セレブ旅行」は断念か SNSで「深い反省」示す
NEWSポストセブン