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天覧試合の長嶋サヨナラHRは陛下お戻り制限時間3分前だった

 約80年に及ぶプロ野球の歴史の中では、数々の名勝負が繰り広げられてきた。しかし、どんなに有名な出来事にも、まだまだ知られていないエピソードが存在する。今だからこそ語れる、「あの時」のベンチ裏秘話をお届けしよう。

 プロ野球人気、長嶋人気を決定的にしたのが1959年の「天覧試合」だ。試合は午後7時、巨人・阪神の両軍が一列に並んで、貴賓室の昭和天皇・香淳皇后に一礼するところから始まった。

 試合はただならぬ緊張感に包まれ、いつもの鳴り物応援は禁止。選手には「守備交代はもちろん、内野ゴロでも全力で走ること」という異例のお達しが出た。ベンチ入りした全員に菊の御紋入りの恩賜タバコが配られたが、選手は畏れ多く、吸うことはできなかった。

 阪神の先発だった小山正明は、試合の1週間前に天覧試合の実現を知らされた。

「終戦当時が小学校5年生。天皇陛下がどんな存在かは分かっていた。緊張のため、ボクも元ちゃん(巨人の先発・藤田元司)も調子がイマイチでした。乱打戦になったけど、野球の醍醐味を見てもらうのにはふさわしかったかもしれないね」

 幕切れは、あまりにも有名な長嶋のサヨナラ本塁打。陛下が皇居に戻る9時15分の3分前に試合を終わらせた奇跡の一発である。だが、陛下の“タイムリミット”は、実はナインには知らされていなかった。

「全く知りませんでした。とにかく一生懸命プレーして、両陛下に野球を楽しんでいただきたいという気持ちだけ。そういう真っ向勝負がドラマを生んだと思います。あの一発は、長嶋ならではの演出だった」

 ちなみに後日、その本塁打を打たれた村山実が、本気で「あれはファウルだった」と主張したのは、球界の語り草。ただ小山は、

「捕手の山本哲也も三塁の三宅秀史も、ラインを確認して文句はいってない。完璧な本塁打ですよ(笑い)」

 村山が1998年にこの世を去ったとき、長嶋は芦屋の村山宅を訪れ、霊前に笑顔でこう話しかけたという。

「ムラさん、あれはホームランだったからね」

※週刊ポスト2013年1月18日号

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