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織田信長作品が注目を集める背景に強いリーダーを求める傾向

 織田信長作品が、今人気だ。高視聴率を記録した『信長のシェフ』(テレビ朝日系)、4月に放送予定の『女信長』(フジテレビ系)といった信長を描いたドラマが相次いで登場。『信長協奏曲』『センゴク一統記』などの漫画作品も増えている。今どうして“信長モノ”が注目されているのだろうか。コラムニストのペリー荻野さんに聞いた。

 * * *
『女信長』は、“もし信長が女性だったら”というだけでガラリと歴史が変わって見えるというところが面白い。ミステリーでありながら、恋愛物語の要素もある。『信長のシェフ』は信長と現代人シェフの交流というこれまでにない作品でした。信長がテーマだからこそ、新しい視点の作品を今でも作れるのだと思います。

 過去も含めて多くの信長モノが生まれてきた背景には、信長の人生がドラマチックであるということが挙げられます。信長は、比叡山焼き討ちに見られるような冷徹な一面を持ち合わせながら、カリスマ的な支持を集めた強いリーダーです。家臣の明智光秀に裏切られるという劇的な最期。その死を巡ってはさまざまな説が出ていて、制作者としてはさまざまな展開が考えられ作品の題材にしやすいと言えます。

 このような信長作品が作られ人気を集めるときというのは、その時代の経済情勢や活躍するリーダーとリンクしているように思います。

 例えば、これまで人気を集めた代表的な信長ドラマを挙げてみると、1973年に放送された高橋英樹が信長を演じたNHK大河ドラマ『国盗り物語』、1992年の大河ドラマ『信長 KING OF ZIPANGU』(緒形直人主演)があります。1973年前半は好景気が続いていましたが、ドラマの終盤となる年末には石油ショックが起こっています。1992年はバブル崩壊の直後でした。いずれも時代の変革期に当たり、時代がまさに変わりつつあるという空気感みたいなものが漂っていたころだと思います。

 そんななかで支持されたのがリーダーシップをもった政治家でした。1972年は、田中角栄が第2次田中内閣で首相を務めていました。角栄は“コンピュータつきブルドーザー”とも呼ばれる強いリーダーであることは今さら言うまでもありません。1992年は宮沢喜一首相でしたが、翌年、新リーダーとして細川護煕首相が注目を集めました。2002年にも、大河ドラマ『利家とまつ』で反町隆史演じる信長が人気を集めましたが、このときは小泉純一郎首相が小泉ブームで時の人となっていた時期と重なります。

 つまり、時代が変わろうとしているときには、リーダー待望論みたいなものが巻き起こって、強いリーダー、新しいリーダーが求められる傾向があるように思います。そんななかで、信長という強いリーダーシップをもった戦国武将が作品の題材として選ばれ、多くの人から人気を集めるのだと思います。

 信長作品が増えている今も同様です。アベノミクスにより、株価は上昇を続け、経済復活への期待が高まるなかで、安倍晋三首相のリーダーシップが注目を集めています。大阪では、橋下徹市長が強いリーダーとして未だに根強い人気を誇っています。

 今の時代は、原発やTPP、北朝鮮の問題まで、時代が大きく変わりつつあるタイミングで、誰しも世の中への不安感を持っている。そんなときは、強烈なリーダーシップによって世の中をダイナミックに動かしてほしいと思う人が増えてくるのも当然です。信長モノが支持を集める背景には、こうした時代感にマッチしているからとも言えるのではないでしょうか。

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