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最新小説で大人の恋と性を描いた岸惠子「書くのは度胸いった」

 ピンと伸びた背筋、6cmのハイヒールに膝丈のスカートをふわりとなびかせ、彼女は颯爽と登場した。女優・作家の岸惠子は、カメラの前に立つと、「私、80歳になっちゃったのよ。この年齢で撮られるの、本当は嫌なの」と笑う。

 潤った肌に艶やかな黒髪……50~60代にしかみえないその姿に、濃艶な魅力が漂う。その彼女が4年の月日を費やして描いた最新小説は、大人の男と女の恋物語だった。

「男性をひと回り年下にしたのは、60代を過ぎた女性が恋愛しようと思っても、日本男性はリタイアすると急に老けてしまって、なかなか素敵な人がいないから(笑)。それに、『日本株式会社』に勤めてきた定年間近のサラリーマン男性の悲哀も描きたかった」

 岸の最新刊『わりなき恋』は、世界を飛び回るドキュメンタリー作家である主人公・笙子(しょうこ・69)と、妻子ある大企業のトップマネジメント・九鬼兼太(58)がパリ行きのファーストクラスでふと会話を交わしたことから始まる。突然の胸の高鳴り、初めて覚えた携帯メールのやりとり、ときには世界情勢に芸術に熱く議論を戦わせ、2人は次第に距離を縮めていく──。

「女同士ってざっくばらんに性を語るときがあるんです。“夫婦間がセックスレスで”とか“まだ体が疼くときがあるのよ”と外国に住む75歳のとても魅力的な友人が言ったり……そんななか、人生の中で一つの大切な要素である性を描いてみたいと思う気持ちが湧いてきました」

 心だけでなく体を強く求める兼太と、夫を亡くしてからの〈長き不在〉に躊躇する笙子。彼の思いに応えようとするが、10数年もの間、孤閨(こけい)を守ってきた笙子は、70歳を迎え枯渇してしまった自分の体に、打ちひしがれる。

 大胆にも婦人科医に相談し、女の再生を目指す笙子。そして再び体を重ねたとき、〈妖しい露を滲ませた野生の蘭のように九鬼の体を搦めとった〉──。別の女への嫉妬、兼太の家族の呪縛、笙子の病気、そして起こった東日本大震災。2人は激動に巻き込まれていく。

「性を語らずして大人の恋はなりたちえないと思うんです。これを書くのはかなりの度胸がいりました。でも、色々な経験をした“今の岸惠子”でなければ書けないこのテーマを社会問題もからませて、勝負ッというつもりで書きました」

【プロフィール】
●きし・けいこ:女優・作家。1932年横浜市生まれ。『君の名は』『雪国』など名作に出演。1957年にイブ・シァンピ監督と結婚、一女をもうけ離婚。40年あまりのパリ暮らしの後、現在は日本に拠点を移し、日仏を行き来する。近年は作家、ジャーナリストと多方面で活躍。2011年フランスの芸術文化勲章コマンド-ルを受勲。『風が見ていた』など著書多数。3月25日『わりなき恋』(幻冬舎刊)を上梓。

取材・文■由井りょう子

※週刊ポスト2013年4月19日号

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