芸能

雲の階段で偽医者役の長谷川博己 昔の風間杜夫似との指摘も

 作家で五感生活研究所代表の山下柚実氏は最近、水曜夜にある悩みを抱えているという。どっちを録るか、という話である。

 * * *
 競争は、より品質の高い商品を生み出す。それは普遍的な事実。「競うから励みが生ずるのである」。実業家・渋沢栄一の言葉です。

 この言葉、テレビドラマにもあてはまる。「水曜日午後10時」という同じ時刻に、『家族ゲーム』(フジテレビ系)と『雲の階段』(日テレ系)、二本のドラマが競いあっています。競争相手がいるからこそ制作の現場も熱気を帯びる。力が入る。

「どっちのドラマをオンタイムで見るか、いまだに迷っています」という声も聞かれます。視聴率で比較してしまえば軍配は明らかですが、録画視聴も増えている昨今、そんなオールドな数字だけでドラマの質を測るのは失礼、というもの。

 まず、『家族ゲーム』。その魅力については、この「NEWSポストセブン」のコラムで私自身もたっぷりと書かせていただきました。嵐の櫻井翔くんが、見たこともない奔放ブラックぶりを披露し、一風変わった破壊的家庭ドラマに仕上がっています。

 その同時刻に対抗しているのが、『雲の階段』。こちらもじわじわと熱い支持が広がり、コアなファンが増殖中です。それは、メロドラマ風BGMが全編に響きわたる異世界。内向的で伏し目がち、シリアスな表情の長谷川博己がニセ医者を熱演しています。

 運命に翻弄されまくる、わけありの男。絡み合う女性関係、名誉欲と権力欲。渡辺淳一センセイお得意のドロドロ医療ものワールド。

 主人公は、ニセ医者の身分でありつつも、大病院の婿養子に入り、セレブへの階段を一つ一つ上っていく。一見、自分の意志で人生を切り拓いていくようでいて、実は大きな見えない力に翻弄されている。その「翻弄されぶり」が、長谷川博己という役者に、実にフィットしているのです。

「長谷川くんが華奢ではかなげで、男の色気を感じちゃう」
「子ウサギのような優男を運命がいじり回す、ちょっとサディスティックな雰囲気がいいんです」
「男優さんなのに、手と指がきれいすぎて見とれる」
「昼ドラ的コテコテ感がいい味を出している」
「ストーリーの御都合主義に苦笑しつつも、長谷川君のガンバリと成長ぶりに声援を送りたくなる」

 視聴者の感想を見ると、変化球の誉め言葉がいくつも見つかります。おそらく、コテコテの昼メロ調サスペスンドラマにどっと没入して楽しむ、という視聴スタイルだけではなく、そうした「古風な枠組み」を、長谷川くんや制作陣がいかに料理して出してくるのか、お手並み拝見という、ちょっと斜めからの楽しみ方の人も多いのかも。

「かつてなら長谷川博己の役は、風間杜夫か三浦友和」という指摘もありました。実に的確ですね。主人公のニセ医者を、「いかにも」な役者ではなく、「長谷川博己」が演じるからこそ妙な味が出てくる。古色蒼然とした医療ドラマからはみ出す、今様ドラマに仕上がっているのもそのあたりにヒントがありそう。

「ヒリヒリ」感。それが長谷川くんの魅力。存在そのものがフラジャイル。傷つきやすい。壊れやすい。立ち位置がどこか定まらず、強い風が吹くとフラフラしそう。ガラスの質感を纏った役者。そんなフラジャイル感は、断片化する今の時代の雰囲気とも、響きあう。

 長谷川くんが、「医者というよりホストっぽい」という批判もありましたが、その通りです。ホストが医者をやる、という転倒ぶりが見所であり、微妙なゆらぎ感を生み出す源。

 はてさて、あなたなら『家族ゲーム』と『雲の階段』、どっちを「生-オンタイム」で見ますか? どっちを録画にします? ドラマ好きにとっては引き裂かれるような、身もだえするような嬉しい悩みです。

関連記事

トピックス

真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン
今年の”渋ハロ”はどうなるか──
《禁止だよ!迷惑ハロウィーン》有名ラッパー登場、過激コスプレ…昨年は渋谷で「乱痴気トラブル」も “渋ハロ”で起きていた「規制」と「ゆるみ」
NEWSポストセブン
アメリカ・オハイオ州のクリーブランドで5歳の少女が意識不明の状態で発見された(被害者の母親のFacebook /オハイオ州の街並みはサンプルです)
【全米が震撼】「髪の毛を抜かれ、口や陰部に棒を突っ込まれた」5歳の少女の母親が訴えた9歳と10歳の加害者による残虐な犯行、少年司法に対しオンライン署名が広がる
NEWSポストセブン
新恋人A氏と交際していることがわかった安達祐実
《新恋人発覚の安達祐実》沈黙の元夫・井戸田潤、現妻と「19歳娘」で3ショット…卒業式にも参加する“これからの家族の距離感”
NEWSポストセブン
キム・カーダシアン(45)(時事通信フォト)
《カニエ・ウェストの元妻の下着ブランド》直毛、縮れ毛など12種類…“ヘア付きTバックショーツ”を発売し即完売 日本円にして6300円
NEWSポストセブン
レフェリー時代の笹崎さん(共同通信社)
《人喰いグマの襲撃》犠牲となった元プロレスレフェリーの無念 襲ったクマの胃袋には「植物性のものはひとつもなく、人間を食べていたことが確認された」  
女性セブン
大谷と真美子夫人の出勤ルーティンとは
《真美子さんとの出勤ルーティン》大谷翔平が「10万円前後のセレブ向けベビーカー」を押して球場入りする理由【愛娘とともにリラックス】
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(秋田県上小阿仁村の住居で発見されたクマのおぞましい足跡「全自動さじなげ委員会」提供/PIXTA)
「飼い犬もズタズタに」「車に爪あとがベタベタと…」空腹グマがまたも殺人、遺体から浮かび上がった“激しい殺意”と数日前の“事故の前兆”《岩手県・クマ被害》
NEWSポストセブン
「秋の園遊会」でペールブルーを選ばれた皇后雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA)
《洋装スタイルで魅せた》皇后雅子さま、秋の園遊会でペールブルーのセットアップをお召しに 寒色でもくすみカラーで秋らしさを感じさせるコーデ
NEWSポストセブン