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父の遺言で家族の墓に入れず 埋葬される権利は主張できるか

 竹下正己弁護士の法律相談コーナー。今回は「父の遺言で家族の墓に入れません。埋葬の権利を主張したい」という質問が寄せられた

【質問】
 絶縁中の父が死んだのですが、問題なのは私を自分と同じ墓に入れるなと遺言に書かれていたこと。私は別に父と同じ墓に入らなくてもよいのですが、すでに逝ってしまった母とは同じ墓に入りたいです。母は父と同じ墓で眠っています。私はやはり父の遺言通りに家族の墓には入れませんか。

【回答】
 お墓に入れるかは、今後お墓の権利を持つ人に対し、あなたの後継者があなたの遺骨を墓に入れてほしいという権利があるかで決まります。お墓の権利は、仏壇や位牌などと共に祭祀財産と呼ばれ、通常の相続手続きとは違う手続きで、その承継が決まります。

 祭祀の主宰者であるお父さんが、指定した人、指定がなければ、慣習で決まる承継者、慣習もなければ家庭裁判所が決める者が、祭祀財産を承継します。お父さんが遺言で決めていれば、その人物が承継します。指定がなく慣習も不明の場合、家庭裁判所は、故人が誰に弔ってもらうことを望んでいたかなどを考えて判断します。墓に入れるなとの遺言から、あなたが承継者になることは難しいと思います。

 祭祀財産の承継者は、お墓の権利を承継し、祭祀の主宰者として、お墓の利用方法を決めることができます。承継者が、遺言を尊重し、あなたの遺骨の埋葬を拒否すれば、一緒に葬られることは無理です。権利として要求はできません。

 ただし、承継者があなたに同情して、埋葬を認めようと考えた場合は可能ではないかと思います。なぜなら、墓に入れるなとの遺言があっても、祭祀承継者の指定以外、祭祀財産に関する拘束が法的に意味を持つか疑問だからです。

 祭祀承継者の変更は、例えば妻の姓を名乗る結婚をして妻の家の祭祀の主宰者になったのち離婚したような特別な場合のみであり、墓に入れるなの遺言に反したとしても、そのことで祭祀承継者を変更するような手続きは予定されていません。

 祭祀財産の承継は、伝統的・感情的な要素の強いものであり、主宰者が埋葬を認めれば、裁判所は介入しないと思います。お父さんが生きていたら許してくれるだろうという姿勢で、承継者に接して理解を得るように努めてはいかがでしょうか。

※週刊ポスト2013年10月4日号

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