国内

京大原子力専門家「少しでも汚染の少ない地域へ逃げるべき」

 安倍晋三首相が「完全にコントロールされています」とIOC総会で宣言したものの、事態が完全に収束したわけではない福島第一原発の汚染水漏出問題。それどころか、汚染水は地下水を通じて、今この瞬間も海に流れ出ている。その結果、何が起こっているのか。京都大学原子炉実験所助教の小出裕章さん(64才)はこう説明する。

「海に流れた放射性物質は海流に乗って世界中に拡散します。実際、福島から海へ流れ出た放射性物質は米国西海岸まで届いていますし、海はつながっているので、いずれ大西洋にも広がります。したがって海産物の汚染は避けられません。

 さらに汚染された海水は太陽に照らされて蒸発して雲になり、雨になって降り注いで土壌を汚染します。その影響は動植物全般に及び、農作物や畜産物も汚染されます。そうした海産物や農作物、畜産物を口にした人間は当然、内部被曝します」(小出さん、以下「」内同じ)

 現在、福島は除染作業が進んでおらず、避難者が再び福島に戻れる日が来るのかさえ、一向にわからない状況だ。

「あえて言いますが、避難者は福島に戻るべきではなく、県内に帰還した人たちも、少しでも汚染の少ない地域へ逃げるべきだと私は思います。国は原則立ち入り禁止の『警戒区域』を今年5月に解除するなど、福島に住民を戻すことを想定し始めていますが、この方針は深刻な問題を孕んでいます」

 小出さんが最も危惧するのは汚染水の子どもへの影響だ。

「子どもたちの被曝の危険度は、大人に比べて4倍あります。私は今回の原発事故の影響で、がんや白血病になる人が子どもを中心に増加すると断言できますし、その他の病気、たとえば腰痛や高血圧、視覚障害なども増える可能性が高い」

 それはすでにチェルノブイリ、広島、長崎などの知見からわかっているのだ。だからこそ、子どもを守ることを優先すべきという。

「被曝の影響は今日、明日に出るものではなく、5年や10年経ってから発病する『晩発性障害』が特徴です。実際、1986年に原発事故が起きたチェルノブイリの汚染地域では7年後に小児白血病が急増し、原爆を落とされた広島・長崎では2~3年後から白血病が増え始め、5~10年後にピークに達しました」

 とはいえ、発病が被曝によるものと証明するのは難しく、責任追及には時間がかかる。それゆえ、子どもの命は親に託されているといっても過言ではないのだ。

※女性セブン2013年10月3日号

関連記事

トピックス

11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さんが今も築地本願寺を訪れる理由とは…?(事務所提供)
《笑福亭笑瓶さんの月命日に今も必ず墓参り》俳優・山口良一(70)が2年半、毎月22日に築地本願寺で眠る亡き親友に手を合わせる理由
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
浅香光代さんと内縁の夫・世志凡太氏
《訃報》コメディアン・世志凡太さん逝去、音楽プロデューサーとして「フィンガー5」を世に送り出し…直近で明かしていた現在の生活「周囲は“浅香光代さんの夫”と認識しています」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン
温泉モデルとして混浴温泉を推しているしずかちゃん(左はイメージ/Getty Images)
「自然の一部になれる」温泉モデル・しずかちゃんが“混浴温泉”を残すべく活動を続ける理由「最初はカップルや夫婦で行くことをオススメします」
NEWSポストセブン
宮城県栗原市でクマと戦い生き残った秋田犬「テツ」(左の写真はサンプルです)
《熊と戦った秋田犬の壮絶な闘い》「愛犬が背中からダラダラと流血…」飼い主が語る緊迫の瞬間「扉を開けるとクマが1秒でこちらに飛びかかってきた」
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン