芸能

浅利慶太氏が語る岩谷時子さん「すぐれた才能持った女神」

「初めて会ったときも、終始穏やかな笑顔を浮かべて黙っていて、大事なときだけひと言発する。非常にナイーブな女性という印象でした」

 10月25日、作詞家の岩谷時子さん(享年97)が肺炎のために亡くなった。その岩谷さんと、長く盟友として、さまざまな舞台や名曲を生み出していくことになる浅利慶太劇団四季代表(80才)。ふたりが会ったのは1960年代半ばのことだった。

「お時さん(岩谷さん)のほうから“お会いしたい”と言ってこられました」(浅利氏・以下「」内同)

 岩谷さんは越路吹雪さん(享年56)と一緒で、越路さんが「浅利さんに舞台の演出をお願いしたい」と切り出した。話すのはもっぱら越路さんだったが、浅利氏に演出をゆだねたいというのは、先見の明ある名マネジャー岩谷さんの強い意志だった。

 そのとき、浅利氏は、「わかりました」と日生劇場で越路さんの舞台を手がけることを約束。1966年、浅利氏の演出で「越路吹雪リサイタル」が開かれる。このとき、越路さんの歌うシャンソンの訳詞を、浅利氏は岩谷さんに依頼する。

「訳詞はすぐにできあがってきましたが、見て驚きました。日本語なのに、フランス語の原文の香りが一切消えていない。しかも日本語としても極めて美しい。まいりましたね」

 こうして、越路さんの代表曲であり、現在も歌い継がれる『愛の讃歌』『ラストダンスは私に』『サン・トワ・マミー』などのヒットが生まれた。岩谷さんとはいつしか、「お時さん」「慶太さん」と呼び合う、深い信頼感が生まれた。

 岩谷さんは作詞家として実にたくさんの作品を手掛けた。ザ・ピーナッツの『ウナ・セラ・ディ東京』『恋のバカンス』、加山雄三の『お嫁においで』『君といつまでも』、郷ひろみのデビュー曲『男の子女の子』から『裸のビーナス』『花とみつばち』など、枚挙にいとまがない。

 もちろん劇団四季の舞台作品でも、多くの詞を手掛けている。『ジーザス・クライスト=スーパースター』、『ウェストサイド物語』、『エビータ』などの海外作品から、現在も全国を巡演中の『はだかの王様』などのファミリーミュージカルやオリジナル作品、はては台詞劇の戯曲翻訳まで、活躍は幅広い。

「訳することも難しい文学的な作品から、大衆的な歌謡曲まで、その全てを格調ある日本語で紡いだ。すぐれた才能を持った“女神”でしたね。

 もしも郷ひろみが、他の作詞家の歌でデビューしていたら、今どうなっていただろう。ユーモラスだけどポエティック、お時さんの詞の力は大きかったですよ」

※女性セブン2013年11月21日号

関連記事

トピックス

2025年はMLBのワールドシリーズで優勝。WBCでも優勝して、真の“世界一”を目指す(写真/AFLO)
《WBCで大谷翔平の二刀流の可能性は?》元祖WBC戦士・宮本慎也氏が展望「球数を制限しつつマウンドに立ってくれる」、連覇の可能性は50%
女性セブン
被害を受けたジュフリー氏、エプスタイン元被告(時事通信フォト、司法省(DOJ)より)
《女性の体に「ロリータ」の書き込み…》10代少女ら被害に…アメリカ史上最も“闇深い”人身売買事件、新たな写真が公開「手首に何かを巻きつける」「不気味に笑う男」【エプスタイン事件】
NEWSポストセブン
「名球会ONK座談会」の印象的なやりとりを振り返る
〈2025年追悼・長嶋茂雄さん 〉「ONK(王・長嶋・金田)座談会」を再録 日本中を明るく照らした“ミスターの言葉”、監督就任中も本音を隠さなかった「野球への熱い想い」
週刊ポスト
12月3日期間限定のスケートパークでオープニングセレモニーに登場した本田望結
《むっちりサンタ姿で登場》10キロ減量を報告した本田望結、ピッタリ衣装を着用した後にクリスマスディナーを“絶景レストラン”で堪能
NEWSポストセブン
日高氏が「未成年女性アイドルを深夜に自宅呼び出し」していたことがわかった
《本誌スクープで年内活動辞退》「未成年アイドルを深夜自宅呼び出し」SKY-HIは「猛省しております」と回答していた【各テレビ局も検証を求める声】
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
笹生優花、原英莉花らを育てたジャンボ尾崎さんが語っていた“成長の鉄則” 「最終目的が大きいほどいいわけでもない」
NEWSポストセブン
出席予定だったイベントを次々とキャンセルしている米倉涼子(時事通信フォト)
《米倉涼子が“ガサ入れ”後の沈黙を破る》更新したファンクラブのインスタに“復帰”見込まれる「メッセージ」と「画像」
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん
亡くなったジャンボ尾崎さんが生前語っていた“人生最後に見たい景色” 「オレのことはもういいんだよ…」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《セレブな5児の母・宮崎麗果が1.5億円脱税》「結婚記念日にフェラーリ納車」のインスタ投稿がこっそり削除…「ありのままを発信する責任がある」語っていた“SNSとの向き合い方”
NEWSポストセブン
峰竜太(73)(時事通信フォト)
《3か月で長寿番組レギュラー2本が終了》「寂しい」峰竜太、5億円豪邸支えた“恐妻の局回り”「オンエア確認、スタッフの胃袋つかむ差し入れ…」と関係者明かす
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
中国で延々と続く“高市降ろし”の反日攻勢にどう対抗するか? 「解決策のカギの1つは公明党が握っている」、大前研一氏の分析と提言
中国で延々と続く“高市降ろし”の反日攻勢にどう対抗するか? 「解決策のカギの1つは公明党が握っている」、大前研一氏の分析と提言
マネーポストWEB