国際情報

中国紙が張成沢大型犬残虐処刑報じた背景に中国政府の不快感

 北朝鮮の張成沢・元国防委員会副委員長の処刑方法は「三日三晩エサを与えていないどう猛な大型犬120匹による襲撃だった」と香港の中国系紙「文匯報」(電子版)が伝えたことが大きな反響を呼んでいる。事実とすればあまりにも残酷で、米紙「ニューヨーク・タイムズ」など有力メディアはいずれも否定的な見解を明らかにしている。

 しかし、文匯報といえば、中国政府と極めて近いメディアで、その信頼度も高く、中国共産党政権が処刑の残忍さを強調して、北朝鮮の最高指導者、金正恩第一書記のイメージダウンを狙った意図的なリークとの見方が浮上している。

 同紙は昨年12月14日、張氏の処刑について「朝鮮『犬決』張成沢」などとの見出しを付け、政治犯による情報として、張氏ら5人が真っ裸で鉄のオリに入れられ、三日三晩エサを与えられなかった120匹ものどう猛な猟犬が放たれて、かみ殺されたと伝えた。この凄惨な処刑を金正恩第1書記、李雪主夫人のほか300人を超える高官が見物していたという。

 張氏の処刑については韓国紙「朝鮮日報」など韓国メディアは消息筋の話として「機関銃の銃弾が90発以上撃ち込まれた」「遺体は火炎放射器で焼かれた」と報じている。

 いずれも残酷な方法が用いられたことが共通しているが、海外メディアはとりわけ文匯報の報道に疑義をはさんでいる。

 米紙「ワシントン・ポスト」は北京発で、北京を訪問した平壌駐在の西側諸国の外交官の話として、文匯報が「北朝鮮で何が起こったかを分かるはずはない」との極めて否定的なコメントを伝えている。時事週刊誌「タイム」や中国情報に詳しい香港の英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」、シンガポールの英字紙「ストレート・タイムズ」などの有力紙誌はいずれも「あり得ない」との見解を明らかにしている。

 しかし、文匯報といえば、同じく香港紙「大公報」と並んで、香港を代表する親中国系紙であり、中国本土でも購読が許可されているほど、中国政府との密接な関係も持っているとされている。仮に、処刑報道が誤報だとすれば、何らかの意図が隠されていると考える方が妥当だろう。

 ある北京在住の中国紙記者は「中国指導部と金正恩第一書記の関係は極めて緊張している。習近平政権は中国の言うことをきかない反抗的な金政権に辟易しており、敢えてこのような残酷な処刑方法を文匯報に書かせることで、金第一書記に中国が張氏の処刑について不快感を抱いていることを気づかせようとしているのではないか」と指摘している。

関連キーワード

関連記事

トピックス

雅子さま(2025年10月28日、撮影/JMPA
《雅子さま、62年の旅日記》「生まれて初めての夏」「海外留学」「スキー場で愛子さまと」「海外公務」「慰霊の旅」…“旅”をキーワードに雅子さまがご覧になった景色をたどる 
女性セブン
悠仁さま(撮影/JMPA)
《悠仁さまの周辺に緊張感》筑波大学の研究施設で「砲弾らしきもの」を発見 不審物が見つかった場所は所属サークルの活動エリアの目と鼻の先、問われる大学の警備体制 
女性セブン
清水運転員(21)
「女性特有のギクシャクがない」「肌が綺麗になった」“男社会”に飛び込んだ21歳女性ドライバーが語る大型トラックが「最高の職場」な理由
NEWSポストセブン
活動再開を発表した小島瑠璃子(時事通信フォト)
《輝く金髪姿で再始動》こじるりが亡き夫のサウナ会社を破産処理へ…“新ビジネス”に向ける意気込み「子供の人生だけは輝かしいものになってほしい」
NEWSポストセブン
高校時代の安福久美子容疑者(右・共同通信)
《「子育ての苦労を分からせたかった」と供述》「夫婦2人でいるところを見たことがない」隣人男性が証言した安福容疑者の“孤育て”「不思議な家族だった」
中国でも人気があるキムタク親子
《木村拓哉とKokiの中国版SNSがピタリと停止》緊迫の日中関係のなか2人が“無風”でいられる理由…背景に「2025年ならではの事情」
NEWSポストセブン
ケンダルはこのまま車に乗っているようだ(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
《“ぴったり具合”で校則違反が決まる》オーストラリアの高校が“行き過ぎたアスレジャー”禁止で波紋「嫌なら転校すべき」「こんな服を学校に着ていくなんて」支持する声も 
NEWSポストセブン
24才のお誕生日を迎えられた愛子さま(2025年11月7日、写真/宮内庁提供)
《12月1日に24才のお誕生日》愛子さま、新たな家族「美海(みみ)」のお写真公開 今年8月に保護猫を迎えられて、これで飼い猫は「セブン」との2匹に 
女性セブン
東京ディズニーシーにある「ホテルミラコスタ」で刃物を持って侵入した姜春雨容疑者(34)(HP/容疑者のSNSより)
《夢の国の”刃物男”の素顔》「日本語が苦手」「寡黙で大人しい人」ホテルミラコスタで中華包丁を取り出した姜春雨容疑者の目撃証言
NEWSポストセブン
石橋貴明の近影がXに投稿されていた(写真/AFLO)
《黒髪からグレイヘアに激変》がん闘病中のほっそり石橋貴明の近影公開、後輩プロ野球選手らと食事会で「近影解禁」の背景
NEWSポストセブン
秋の園遊会で招待者と歓談される秋篠宮妃紀子さま(時事通信フォト)
《陽の光の下で輝く紀子さまの“レッドヘア”》“アラ還でもふんわりヘア”から伝わる御髪への美意識「ガーリーアイテムで親しみやすさを演出」
NEWSポストセブン
ニューヨークのイベントでパンツレスファッションで現れたリサ(時事通信フォト)
《マネはお勧めできない》“パンツレス”ファッションがSNSで物議…スタイル抜群の海外セレブらが見せるスタイルに困惑「公序良俗を考えると難しいかと」
NEWSポストセブン