国際情報

張成沢氏の粛清引き金 宴会で取り巻きが「万歳!」の痛恨ミス

 北朝鮮当局は昨年12月13日、同国で金正恩第一書記に次ぐ権勢を誇っていた実力者、張成沢国防委員会副委員長(朝鮮労働党行政部長)の処刑を突如発表。世界に衝撃を与えた。粛清の裏に何があったのか、なぜ、粛清されなくてはいけなかったのか──ノンフィクションライターの李策氏がレポートする。

 * * *
 張が粛清されたのは、金正恩の強硬姿勢に不安を感じ、それが確執に発展したからではないのか──。その真相を見極めるには、粛清に至った経緯を知らねばならない。

 そのためにも、北朝鮮当局者から直接、粛清の内幕を聞く必要があった。なお取材班は、この当局者と接触する上で、やむなく「投資家」に身分を偽装していることを断わっておく。

 しかしだからこそ、朝鮮中央通信のような海外向けの「主張」ではなく、ディテールに富む内輪話を聞くことができた。北朝鮮当局者が語った内容は次のとおりである。

「将軍様の死後、党・軍・政府の一切の人事と行政権限を掌握した張は、絶大な権力を誇っていました。彼は将軍様の愛した普天堡(ボチョンボ)電子楽団と旺載山(ワンジエサン)軽音楽団のうち、自分が可愛がっていた者たちだけを残し、ほかのメンバーは一般社会に戻してしまった。そして、残したメンバーたちを週に1、2回のペースで開くパーティーに出席させ、将軍様とまったく同じように振る舞っていたのです」

 ここで言われている「パーティー」とは、党や軍の最高幹部だけを集めて行なわれる秘密の酒宴のことだ。最高級の料理や酒が並ぶ贅沢ぶりは、金正日の料理人・藤本健二氏の証言によって明らかになっている。

 しかし当然のことながら、北朝鮮当局が、その事実を認めたことはないし、認められるはずもない。多くの国民が飢えに苦しむ中での贅沢三昧を明かすことは、あの国における最大のタブーなのだ。

 そんな禁忌に触れていることからも、当局者の話が相当に踏み込んだものであることがわかる。

「とくに目に余ったのは、海棠花グループの副社長・韓明姫(ハンミョンヒ)による供応です。彼女は張に一般大学生や新人映画女優など、彼の好みに合った女性を200人以上も紹介した。そのうち100人を超える女性が、張と夜をともにさせられたのです。これは、国家安全保衛部が彼女を取り調べる過程で明らかになった事実です」

関連記事

トピックス

まだ重要な問題が残されている(中居正広氏/時事通信フォト)
中居正広氏と被害女性Aさんの“事案後のメール”に「フジ幹部B氏」が繰り返し登場する動かぬ証拠 「業務の延長線上」だったのか、残された最後の問題
週刊ポスト
生徒のスマホ使用を注意しても……(写真提供/イメージマート)
《教員の性犯罪事件続発》過去に教員による盗撮事件あった高校で「教員への態度が明らかに変わった」 スマホ使用の注意に生徒から「先生、盗撮しないで」
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《ロマンス詐欺だけじゃない》減らない“セレブ詐欺”、ターゲットは独り身の年配男性 セレブ女性と会って“いい思い”をして5万円もらえるが…性的欲求を利用した驚くべき手口 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《ブログが主な収入源…》女優・遠野なぎこ、レギュラー番組“全滅”で悩んでいた「金銭苦」、1週間前に公表した「診断結果」「薬の処方」
NEWSポストセブン
京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”とは(左/YouTubeより、右/時事通信フォト)
《芸舞妓を自宅前までつきまとって動画を回して…》京都祇園で横行するYouTuberによる“ビジネス”「防犯ブザーを携帯する人も」複数の被害報告
NEWSポストセブン
由莉は愛子さまの自然体の笑顔を引き出していた(2021年11月、東京・千代田区/宮内庁提供)
愛子さま、愛犬「由莉」との別れ 7才から連れ添った“妹のような存在は登校困難時の良きサポート役、セラピー犬として小児病棟でも活動
女性セブン
インフルエンサーのアニー・ナイト(Instagramより)
海外の20代女性インフルエンサー「6時間で583人の男性と関係を持つ」企画で8600万円ゲット…ついに夢のマイホームを購入
NEWSポストセブン
ホストクラブや風俗店、飲食店のネオン看板がひしめく新宿歌舞伎町(イメージ、時事通信フォト)
《「歌舞伎町弁護士」のもとにやって来た相談者は「女風」のセラピスト》3か月でホストを諦めた男性に声を掛けた「紫色の靴を履いた男」
NEWSポストセブン
『帰れマンデー presents 全国大衆食堂グランプリ 豪華2時間SP』が月曜ではなく日曜に放送される(番組公式HPより)
番組表に異変?『帰れマンデー』『どうなの会』『バス旅』…曜日をまたいで“越境放送”が相次ぐ背景 
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
2014年に結婚した2人(左・時事通信フォト)
《仲間由紀恵「妊活中の不倫報道」乗り越えた8年》双子の母となった妻の手料理に夫・田中哲司は“幸せ太り”、「子どもたちがうるさくてすみません」の家族旅行
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(左/Xより)
《大学時代は自由奔放》学歴詐称疑惑の田久保市長、地元住民が語る素顔「裏表がなくて、ひょうきんな方」「お母さんは『自由気ままな放蕩娘』と…」
NEWSポストセブン