かつて輸出産業優遇策が日本経済の活性化の何よりの起爆剤となっていたことを否定するつもりはありません。しかし、昨今円安が進んでも輸出増にほとんど繋がっていない、あるいは輸出企業が生産拠点を国内に回帰する、国内の雇用を増やすといった動きがほとんど見られないことが示すように、輸出企業への過度な優遇策が国内経済への波及効果をもたらす可能性は極めて低いといえるでしょう。
広く一般国民に負担を求める一方で、特定企業だけを優遇し、優遇された企業が国内へ還元をしないとなれば、一般国民が経済的に疲弊してしまうのは当然の帰結です。
増税をすれば確実に国民の所得を奪うことになり、経済活動にはボディーブローのようにマイナスの影響を及ぼします。増税による悪影響が見受けられれば、すぐに消費税を引き下げる選択肢もあり得るのです。
事実、カナダでは1991年に消費税を導入して以降、2度引き下げを行っています。カナダは消費税にあたる「商品サービス税」に加えて州の小売売上税も徴収されるので、国民からの強い反発があったのです。
景気が悪くなれば、むしろ税金を下げるのは当たり前の考え方。そうした認識がどれだけ国民に浸透しているでしょうか。あらためて消費税の本質に迫る国民レベルでの議論が必要だと思います。
【岩本沙弓/いわもと・さゆみ】
経済評論家、金融コンサルタント。1991年から日米豪加の金融機関ヴァイスプレジデントとして外国為替、短期金融市場取引業務に従事。現在、金融関連の執筆、講演活動を行うほか、大阪経済大学経営学部客員教授なども務める。近著に『アメリカは日本の消費税を許さない』(文春新書)、『あなたの知らない日本経済のカラクリ』(自由国民社)などがある。