コンピュータの実力はどのくらいだと思うかという新聞記者の質問に谷川浩司会長は表情を固くして「真ん中よりは上だと思う」と答えていたが、認識が甘いように聞こえてならない。現実に2年続けてA級九段が負かされているのである。私の知り合いの棋士二人は、A級とタイトルホルダーの中間ぐらいではないかと声を揃えていた。
新聞記者は来年のメンバーをどうするのか、タイトルホルダーの登場はあるのか、とさらに谷川に迫った。それに対して「タイトルホルダーは連盟のものとは考えていない」という回答があり、私の頭は混乱した。おそらくスポンサーである新聞社との兼ね合いがあり連盟の一存では決められないということなのだろう。
プログラマーたちからの発言もあり、ポナンザの山本一成氏は「人間にできることはすべてコンピュータにもできると思っている」と語った。将棋の結果はまさにその通りになったのだが、私はその言葉をまだ完全に納得できないでいる。
第一戦に勝ち電王戦MVPを獲得した習甦のプログラマー竹内章氏は「コンピュータは人間を打ちのめすものではない。本来は手助けをするものです」と余裕の発言。確かにその通りなのだろう。
※週刊ポスト2014年5月2日号