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貿易赤字で大騒ぎするのは霞が関だけ 固定観念が誤っている

 2013年度の貿易統計速報で、輸出から輸入を引いた貿易収支が過去最大の赤字になった。赤字額は13.7兆円で、赤字は3年連続だ。

 これを受けて「デフレ脱却を目指す政府のシナリオが揺らいだ」とか「日本企業の競争力が衰えた」といった報道が相次いだ。本当にそうか。まず、赤字の中身から検討しよう。輸入は前年度比17.3%増になった。これはマスコミが報じたとおり、原油や液化天然ガスの輸入が増えた事情が大きい。

 原発が止まっているから、その分を補う火力発電の燃料費が高くつく。経済産業省とすれば「だから原発を動かさないとダメなんです」とアピールする絶好のチャンスである。それだけではない。

 もう1つの霞が関のチャンピオン、財務省にとっても貿易赤字はおいしい。なぜなら、投資収益などを含めた経常赤字になると海外からの資金流入が常態化する。結果的に海外の資金が財政赤字を穴埋めする状態になる。

 そこで「いざというとき、海外勢に資金を引き揚げられたら大変なことになる。いまのうちに増税しておかないと、日本が自前でやっていけなくなりますよ」と増税キャンペーンに使えるからだ。

 実際、霞が関との二人三脚をよしとするマスコミはそんな解説を流している。ところが冒頭の話を含めて、こういった解説はどれもこれも根本的に間違いである。

 そもそも「貿易赤字は悪いことで貿易黒字が良いのだ」という固定観念自体が誤っている。いまの時代、企業はグローバル化しているから、輸出だけで儲けているわけではない。世界を見渡して最適な場所で生産し、稼ぎの一部は現地で再投資もする。

 日本全体としてみれば貿易赤字であっても、企業はしっかり稼いで雇用も守っているのだ。「何が何でも国内で作って輸出を」なんていう戦略にしがみついていたら、逆に競争力は衰えてしまう。

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