確かに本田がチーム内で「孤立している」という話は伝わってこなかった。むしろピッチ外では“いじられキャラ”として定着するなど、チームに溶け込んでいる姿が報告された。2012年には長友佑都がテレビのインタビューで、「カラオケで自分の世界に入る圭佑を皆で笑っていた」と証言しているように、雰囲気は良かったようだ。
しかしそんな本田も、ザック体制の中核として順調に勝ち星を重ね、W杯出場権を世界最速で獲得したあたりから、変化が起きた。
味方を責めるようなことはいわなかった本田が、「個の力が足りない」と、8人の選手の実名を挙げて公開説教したのが昨年6月、W杯出場を決めた翌日の記者会見だった。年長の今野泰幸に対してはプレーだけでなく、心構えについても苦言を呈した。
「(香川)真司や(長友)佑都のようにトップクラブでやっている選手もいるけど、そうじゃないリーグやクラブでやっている人もできることがある。それを今野選手のように、憧れみたいな気持ちでやってもらっては困る」
会見に参加した記者の話。
「これは今野が『ビッグクラブでプレーしている人と一緒にプレーできるのは楽しい』と発言していたことに対する牽制です。本田としては半分ジョーク、半分本気というところでしょう。説教が始まると、それまで和やかなムードだった会見場の空気が凍りついていました」
※週刊ポスト2014年7月11日号