ビジネス

残業代ゼロ構想「39歳で年収203万円が削られる」との試算も

「時間に縛られない柔軟な働き方を推進すれば企業の生産性は上がる」

 事務職を中心に、1日8時間・週40時間と定められている労働時間の規制を一部取り払おうとするホワイトカラー・エグゼンプション(WE)の議論が大詰めを迎えている。経済界の要請も受けた安倍政権は、来年の導入を目指して法改正の土台づくりを急ぐ。

 だが、「自分の仕事が早く終われば、空いた時間は趣味や家族サービスに充てられるようになる」と考えるのは早計だ。なぜなら、当サイトでも報じてきたように、かえって賃金の発生しない“サービス残業”が助長されかねないからだ。

『辞めたくても、辞められない』(廣済堂新書)などの著書がある人事ジャーナリストの溝上憲文氏が警鐘をならす。

「新しい制度は、社員それぞれの職務や成果を今まで以上にはっきりさせて、仕事もせずにだらだらと残業代を稼ぐ社員の人件費を削って企業の成長スピードを速めたい――というのが経営サイドや政府のホンネです。

 でも、現状で労働時間の規制と成果主義を結びつけるには無理がありすぎます。

 たとえ特定の専門職であっても、自分の裁量で職務や時間を決められる人は少数ですし、何でもやらされる“無限定正社員”が短時間で仕事を切り上げれば<120%の力が出せるはず>と、さらに大きな課題が与えられて残業しなければならない勤務形態を強いられるだけです」(溝上氏)

 今のところ、政府案では為替ディーラーやアナリスト、研究開発部門など専門職に就き、年収1000万円以上の高所得者をWEの対象にしようとしているが、いつ、なし崩し的に一般のホワイトカラー社員に広がってもおかしくない。

「そもそも残業代の出ない管理職も含めて年収1000万円以上の社員は全労働者の4%以下。むしろ経済界の狙いは、働き盛りの20~30代の若手の残業代を削りながらもっと働かせようというものです」(溝上氏)

 厚生労働省の調べでは、2013年に正社員全体の平均残業時間は月14時間だったが、20代後半から30代前半の男性社員に絞ると20時間以上になるとの結果が出ており、サービス残業と合わせると30時間はゆうに超えている。民間の転職サイトの調べでは、30代で月50時間前後との調査結果もある。

関連記事

トピックス

2011年に放送が開始された『ヒルナンデス!!』(HPより/時事通信フォト)
《日テレ広報が回答》ナンチャン続投『ヒルナンデス!』打ち切り報道を完全否定「終了の予定ない」、終了説を一蹴した日テレの“ウラ事情”
NEWSポストセブン
青森県東方沖地震を受けての中国の反応は…(時事通信フォト)
《完全な失敗に終わるに違いない》最大震度6強・青森県東方沖地震、発生後の「在日中国大使館」公式Xでのポスト内容が波紋拡げる、注目される台湾総統の“対照的な対応”
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)の高場悟さんに対する”執着”が事件につながった(左:共同通信)
《名古屋主婦殺害》「あの時は振ってごめんねって会話ができるかなと…」安福久美子容疑者が美奈子さんを“土曜の昼”に襲撃したワケ…夫・悟さんが語っていた「離婚と養育費の話」
NEWSポストセブン
卓球混合団体W杯決勝・中国-日本/張本智和(ABACA PRESS/時事通信フォト)
《日中関係悪化がスポーツにも波及》中国の会場で大ブーイングを受けた卓球の張本智和選手 中国人選手に一矢報いた“鬼気迫るプレー”はなぜ実現できたのか?臨床心理士がメンタルを分析
NEWSポストセブン
数年前から表舞台に姿を現わさないことが増えた習近平・国家主席(写真/AFLO)
執拗に日本への攻撃を繰り返す中国、裏にあるのは習近平・国家主席の“焦り”か 健康不安説が指摘されるなか囁かれる「台湾有事」前倒し説
週刊ポスト
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
《悠仁さまとの差》宮内庁ホームページ“愛子内親王殿下のご活動”の項目開設に「なぜこんなに遅れたのか」の疑問 皇室記者は「当主の意向が反映されるとされます」
週刊ポスト
優勝パレードでは終始寄り添っていた真美子夫人と大谷翔平選手(キルステン・ワトソンさんのInstagramより)
《大谷翔平がWBC出場表明》真美子さん、佐々木朗希の妻にアドバイスか「東京ラウンドのタイミングで顔出ししてみたら?」 日本での“奥様会デビュー”計画
女性セブン
パーキンソン病であることを公表した美川憲一
《美川憲一が車イスから自ら降り立ち…》12月の復帰ステージは完売、「洞不全症候群」「パーキンソン病」で活動休止中も復帰コンサートに懸ける“特別な想い”【ファンは復帰を待望】 
NEWSポストセブン
「交際関係とコーチ契約を解消する」と発表した都玲華(Getty Images)
女子ゴルフ・都玲華、30歳差コーチとの“禁断愛”に両親は複雑な思いか “さくらパパ”横峯良郎氏は「痛いほどわかる」「娘がこんなことになったらと考えると…」
週刊ポスト
話題を呼んだ「金ピカ辰己」(時事通信フォト)
《オファーが来ない…楽天・辰己涼介の厳しいFA戦線》他球団が二の足を踏む「球場外の立ち振る舞い」「海外志向」 YouTuber妻は献身サポート
NEWSポストセブン
海外セレブも愛用するアスレジャースタイル(ケンダル・ジェンナーのInstagramより)
「誰もが持っているものだから恥ずかしいとか思いません」日本の学生にも普及する“カタチが丸わかり”なアスレジャー オフィスでは? マナー講師が注意喚起「職種やTPOに合わせて」
NEWSポストセブン
山上徹也被告(共同通信社)
「旧統一教会から返金され30歳から毎月13万円を受け取り」「SNSの『お金配ります』投稿に応募…」山上徹也被告の“経済状況のリアル”【安倍元首相・銃撃事件公判】
NEWSポストセブン