ビジネス

自家用ジェット 「贅沢」理由に日本だけ伸びなくていいのか

 ハリウッドスターや海外の著名スポーツ選手、富裕層などが来日する際に必ずといっていいほど利用するビジネス(プライベート)ジェット機。

 最近も米俳優のトム・クルーズや、ポルトガル代表サッカー選手のクリスティアーノ・ロナウドなどが自家用ジェットで颯爽と飛来し、慌ただしい日本でのPR活動をこなした。

 国土交通省の調べによると、成田・羽田の首都圏空港におけるビジネスジェットの発着回数は3087回(2013年)で、前年の2478回を大きく上回った。2012年、成田にプライベートジェット機の専用ターミナルがオープン。今年9月末には羽田にも開設されるため、“セレブ客”の受け入れ態勢は、ますます強化されることになる。

 規制が厳しいことで知られる日本の航空行政において、個人的な目的が大きいビジネス航空の利用環境を整えているのはなぜか。航空経営研究所の主席研究員、森崎和則氏が解説する。

「東京オリンピックやカジノ構想などを控え、インバウンド(訪日外国人客)需要を見越しているからです。これまでは発着枠の問題や定期便の運航に支障が出るとの理由で受け入れには消極的でしたが、欧米ではビジネスジェットで移動する経営者も多く、さすがに拒否し続けられないと判断したのでしょう。

 過去には大きな世界会議で、ビジネスジェットの受け入れが厳しすぎるということで、東京から香港に会場が変更になったこともありました。こうしたことが積み重なると国の経済発展にとっても損失が大きいため、規制を緩めたのです」

 だが、外国では普及が進む一方、日本国内でビジネスジェットを個人、あるいは企業で所有しているという話はめったに聞かない。国内のビジネスジェットの保有状況はどうなっているのか。

 元船井総合研究所コンサルタントで富裕層に詳しいオートトレーディングルフトジャパン取締役の小林昇太郎氏が話す。

「ビジネスジェットは1機数十億円と高額なうえ、日本で購入すると飛行手続きが面倒で維持費も高コストなので、なかなか売れないそうです。

 かつて一世を風靡したベンチャー企業家が世界を飛び回っていたり、大手製造業がいまでも企業所有していたりするケースはありますが、公にすると贅沢だという批判が起きるので、ビジネス利用だとしても認知されにくいのです」

 日本ビジネス航空協会のデータをみても、ビジネスジェット機の各国保有数(2011年末時点)は米国が1万2284機なのに対し、日本はわずか90機。しかも、自衛隊機や公用機を除いた民間機は27機しかない。

「外国籍で購入して必要なときだけ飛ばす体制にしていたり、オペレーティングリース契約で減価償却の節税効果を享受するなどビジネスジェットの所有方法は増えましたが、それでも日本では世間の目が厳しく、一般的に広まるには程遠い状況といえます」(前出・小林氏)

関連キーワード

関連記事

トピックス

降谷健志の不倫離婚から1年半
《降谷健志の不倫離婚から1年半の現在》MEGUMIが「古谷姓」を名乗り続ける理由、「役者の仕事が無く悩んでいた時期に…」グラドルからブルーリボン女優への転身
NEWSポストセブン
警視庁がオンラインカジノ店から押収したパソコンなど(時事通信フォト)
《従業員や客ら12人現行犯逮捕》摘発された店舗型オンカジ かつての利用者が語った「店舗型であれば”安心”だと思った」理由とは?
NEWSポストセブン
橋本環奈と中川大志が結婚へ
《橋本環奈と中川大志が結婚へ》破局説流れるなかでのプロポーズに「涙のYES」 “3億円マンション”で育んだ居心地の良い暮らし
NEWSポストセブン
10年に及ぶ山口組分裂抗争は終結したが…(司忍組長。時事通信フォト)
【全国のヤクザが司忍組長に暑中見舞い】六代目山口組が進める「平和共存外交」の全貌 抗争終結宣言も駅には多数の警官が厳重警戒
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《前所属事務所代表も困惑》遠野なぎこの安否がわからない…「親族にも電話が繋がらない」「警察から連絡はない」遺体が発見された部屋は「近いうちに特殊清掃が入る予定」
NEWSポストセブン
放送作家でコラムニストの山田美保子さんが、さまざまな障壁を乗り越えてきた女性たちについて綴る
《佐々木希が渡部建の騒動への思いをストレートに吐露》安達祐実、梅宮アンナ、加藤綾菜…いろいろあっても流されず、自分で選択してきた女性たちの強さ
女性セブン
看護師不足が叫ばれている(イメージ)
深刻化する“若手医師の外科離れ”で加速する「医療崩壊」の現実 「がん手術が半年待ち」「今までは助かっていた命も助からなくなる」
NEWSポストセブン
(イメージ、GFdays/イメージマート)
《「歌舞伎町弁護士」が見た恐怖事例》「1億5000万円を食い物に」地主の息子がガールズバーで盛られた「睡眠薬入りカクテル」
NEWSポストセブン
キール・スターマー首相に声を荒げたイーロン・マスク氏(時事通信フォト)
《英国で社会問題化》疑似恋愛で身体を支配、推定70人以上の男が虐待…少女への組織的性犯罪“グルーミング・ギャング”が野放しにされてきたワケ「人種間の緊張を避けたいと捜査に及び腰に」
NEWSポストセブン
和久井学被告が抱えていた恐ろしいほどの“復讐心”
【新宿タワマン殺人】和久井被告(52)「バイアグラと催涙スプレーを用意していた…」キャバクラ店経営の被害女性をメッタ刺しにした“悪質な復讐心”【求刑懲役17年】
NEWSポストセブン
女優・遠野なぎこの自宅マンションから身元不明の遺体が見つかってから1週間が経った(右・ブログより)
《上の部屋からロープが垂れ下がり…》遠野なぎこ、マンション住民が証言「近日中に特殊清掃が入る」遺体発見現場のポストは“パンパン”のまま 1週間経つも身元が発表されない理由
NEWSポストセブン
幼少の頃から、愛子さまにとって「世界平和」は身近で壮大な願い(2025年6月、沖縄県・那覇市。撮影/JMPA)
《愛子さまが11月にご訪問》ラオスでの日本人男性による児童買春について現地日本大使館が厳しく警告「日本警察は積極的な事件化に努めている」 
女性セブン