国内

安倍内閣 「女性輝く」口実にパート主婦の配偶者控除廃止へ

「女性が輝く社会」を謳う安倍晋三首相だが、いまや女性が「輝く」「活躍」とさえ掲げれば、何でもできると考えている。女性の「ブラックパート量産」、「女性のために」を口実にした大企業へのバラ撒きだけでなく、女性から税金、年金を奪い取ろうとしていることは許し難い。

 まず標的になったのはパートの専業主婦だ。政府税調はこの10月からいよいよ財務省の悲願だった「配偶者控除」廃止の議論をスタートさせた。

 現行制度では年収103万円までのパート主婦は給料に課税されない。そのため、働く時間を減らして給料が上限を超えないようにするケースが多く、「103万円の壁」と呼ばれる。政府は「壁があるから女性の働く機会を奪っている」という理由で控除を廃止し、パート主婦から税金を取ろうとしている。

 しかし、これは社会進出とは逆の政策だ。もし女性にもっと働いてもらうことが目的なら配偶者控除をもっと引き上げて年収200万円から250万円くらいまで非課税にした方が、壁があるから働きたくても勤務時間を減らしていたパート主婦は喜んでフルタイムで勤務するようになるはずだ。元財務官僚の高橋洋一・嘉悦大学教授が指摘する。

「それでも配偶者控除を廃止しようというのは、本当の目的が女性の社会進出ではなく、増税にあるからです」

 年金財政がピンチの厚労省もパート主婦からの年金保険料徴収に動いた。現在、夫がサラリーマンで年収130万円(週30時間勤務)未満のパート主婦(第3号被保険者)は年金保険料を徴収されない。

 同省はこれを「130万円の壁」と呼び、配偶者控除同様、「社会進出の障害になっている」「フルタイムで働く女性と比べて不公平な制度だ」と批判を煽って段階的廃止を目指している。第一段階として2年後から年収106万円(週20時間勤務)以上のパート主婦は厚生年金に加入して保険料を払わなければならなくなった。

 この論理もまやかしだ。第3号被保険者の制度ができた1986年の年金制度改正では、サラリーマンが負担する年金保険料は「その被扶養者たる第3号被保険者が共同で負担したものであることを基本認識とする」(厚生年金保険法)と定められ、全体の保険料が引き上げられた。専業主婦は保険料を免除されているのではなく、サラリーマンの夫が代わって2人分を払っているというのが事実なのだ。

 家事と子育てといった専業主婦の「内助の功」の社会的、経済的価値を法的に位置付けた当たり前の認識である。

 それを廃止・縮小して保険料を払わせるのは、保険料の二重取りである。女性の社会進出とは次元が違う問題だ。

※週刊ポスト2014年10月31日号

関連記事

トピックス

小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
指名手配中の八田與一容疑者(提供:大分県警)
《ひき逃げ手配犯・八田與一の母を直撃》「警察にはもう話したので…」“アクセルベタ踏み”で2人死傷から3年半、“女手ひとつで一生懸命育てた実母”が記者に語ったこと
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン
ドラフト1位の大谷に次いでドラフト2位で入団した森本龍弥さん(時事通信)
「二次会には絶対来なかった」大谷翔平に次ぐドラフト2位だった森本龍弥さんが明かす野球人生と“大谷の素顔”…「グラウンドに誰もいなくなってから1人で黙々と練習」
NEWSポストセブン