芸能

武田鉄矢 喜劇は泣きながら作り、悲劇は笑いながら作るもの

 今では演じた役柄の物まねをされるほど俳優としても知られる武田鉄矢だが、デビューはフォークソング歌手だった。その後、本格的に役者の道を進むきっかけになった映画『幸せの黄色いハンカチ』の撮影時の思い出を振り返った武田の言葉を、映画史・時代劇研究家の春日太一氏がつづる連載『役者は言葉でてきている』からお届けする。

 * * *
 フォークソンググループ・海援隊で歌手として活躍していた武田鉄矢が初めて本格的に役者の仕事に足を踏み入れたのが、1977年の山田洋次監督作品『幸福の黄色いハンカチ』だ。

「『母に捧げるバラード』という歌を出して、それ以降はサッパリだったんですよね。世間で名前も忘れられかけていました。でも山田監督は覚えていてくれて、演技力なんか全くないのに、僕を抜擢してくれたんです。

『これはツイてるぞ』と思いました。主演が高倉健さん、共演が倍賞千恵子さんに、当時最も若手に人気のあった桃井かおり。自分の名前が四番手なんですよ。海援隊の二人を呼んで、『とにかく手柄を立ててくるからな。当ててコンサートにお客さんがいっぱい来るようにするぞ。待ってろ』と言い置いて、北海道ロケに出発しました」

 演技経験はなかったため、全て現場で覚えていくことになる。「山田学校の演劇講座の開始です。セリフの言い方、カメラ位置と自分の関係、想いの込め方……そういうものを山田監督から毎日教えてもらう日々でした。

 網走駅前で桃井かおりを引っかけて車に乗っけて世間話をするという場面の撮影のことなんですが。『食べもの、何が好き?』『ラーメン』『俺もラーメン、好き。でも高くなったよな。こないだ上野で食べたのはウン百円した』とため息を吐く。それだけの芝居だったのですが、4時間以上しごかれました。

関連キーワード

関連記事

トピックス

東京都慰霊堂を初めて訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年10月23日、撮影/JMPA)
《母娘の追悼ファッション》皇后雅子さまは“縦ライン”を意識したコーデ、愛子さまは丸みのあるアイテムでフェミニンに
NEWSポストセブン
2023年に結婚を発表したきゃりーぱみゅぱみゅと葉山奨之
「傍聴席にピンク髪に“だる着”姿で現れて…」きゃりーぱみゅぱみゅ(32)が法廷で見せていた“ファッションモンスター”としての気遣い
NEWSポストセブン
渡邊渚さんの最新インタビュー
渡邊渚さんが綴る「PTSDになった後に気づいたワーク・ライフ・バランスの大切さ」「トップの人間が価値観を他者に押しつけないで…」
NEWSポストセブン
女優の趣里とBE:FIRSTのメンバーRYOKI(右/インスタグラムより)
《趣里が待つ自宅に帰れない…》三山凌輝が「ネトフリ」出演で超大物らと長期ロケ「なぜこんなにいい役を?」の声も温かい眼差しで見守る水谷豊
NEWSポストセブン
ルーヴル美術館での世紀の強奪事件は瞬く間に世界を駆け巡った(Facebook、HPより)
《顔を隠した窃盗団4人組》ルーブル美術館から総額155億円を盗んだ“緊迫の4分間”と路上に転がっていた“1354個のダイヤ輝く王冠”、地元紙は「アルセーヌ・ルパンに触発されたのだろう」
NEWSポストセブン
活動休止状態が続いている米倉涼子
《自己肯定感が低いタイプ》米倉涼子、周囲が案じていた“イメージと異なる素顔”…「自分を追い込みすぎてしまう」
NEWSポストセブン
松田聖子のモノマネ第一人者・Seiko
《ステージ4の大腸がんで余命3か月宣告》松田聖子のものまねタレント・Seikoが明かした“がん治療の苦しみ”と“生きる希望” 感激した本家からの「言葉」
NEWSポストセブン
“ムッシュ”こと坂井宏行さんにインタビュー(時事通信フォト)
《僕が店を辞めたいわけじゃない》『料理の鉄人』フレンチの坂井宏行が明かした人気レストラン「ラ・ロシェル南青山」の閉店理由、12月末に26年の歴史に幕
NEWSポストセブン
森下千里衆院議員(共同通信社)
《四つん這いで腰を反らす女豹ポーズに定評》元グラドル・森下千里氏「政治家になりたいなんて聞いたことがない」実親も驚いた大胆転身エピソード【初の政務三役就任】
NEWSポストセブン
ナイフで切りつけられて亡くなったウクライナ出身の女性イリーナ・ザルツカさん(Instagramより)
《19年ぶりに“死刑復活”の兆し》「突然ナイフを取り出し、背後から喉元を複数回刺した」米・戦火から逃れたウクライナ女性(23)刺殺事件、トランプ大統領が極刑求める
NEWSポストセブン
『酒のツマミになる話』に出演する大悟(時事通信フォト)
『酒のツマミになる話』が急遽差し替え、千鳥・大悟の“ハロウィンコスプレ”にフジ幹部が「局の事情を鑑みて…」《放送直前に混乱》
NEWSポストセブン
『週刊文春』によって密会が報じられた、バレーボール男子日本代表・高橋藍と人気セクシー女優・河北彩伽(左/時事通信フォト、右/インスタグラムより)
「近いところから話が漏れたんじゃ…」バレー男子・高橋藍「本命交際」報道で本人が気にする“ほかの女性”との密会写真
NEWSポストセブン