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福本豊 「盗塁1」に抑えられた屈辱の日本シリーズを語る

 読売巨人軍が9年連続日本一となった時代、巨人が日本シリーズで最も多く対戦したのが阪急だった。その時に巨人が要注意人物と警戒したのは世界の盗塁王・福本豊氏だった。対策を練ったおかげで巨人は1971年、1972年の両シリーズで盗塁をそれぞれ1個ずつに抑え込んだ。「走れなかった原因は巨人のエース・堀内恒夫の存在が大きかった」と福本氏が屈辱の日本シリーズを振り返った。

 * * *
 ホリ(堀内)はいろんなリズムで投球するんです。小さなクイックモーションで、どんなコースにも速い球を投げられる。そんな投手はパにはいなかったからね。牽制、クイックと走るタイミングがめないままスタートを切らされていました。

 投手はセットポジションで長くボールを持ってくれるほど、固くなってクセも出やすいんです。クセがわかれば自分のリズムで走ることができる。ところがホリは、初球は0.5秒で投げて、2球目は1秒で投げる。3球目は3秒もためたかと思うと、4球目はまた0.5秒で投げてくる。僕はホリのリズムに合わせなくちゃならなくなる。クセを掴もうとビデオで繰り返し見ても、どうしても探り出せなかった。

 通常、牽制する際には肩が微妙に開くんです。そして打者に投げる時は、開いた肩を戻してから投げるんですが、ホリは肩を開いたままホーム方向へ投げることができる特異な投手だった。同リーグで戦っていたら、そのうちクセも掴めたと思いますが、巨人とは対戦が少ない。結局、現役が終わるまでわかりませんでした。

 盗塁はチャンスを作るためにやるものだから、それがアウトになったらアカンのです。自分で好機を潰してしまう。

 当時はとにかく塁に出たら走れといわれていた。しかし1971年は第1戦で見事に刺されて、次からは躊躇してスタートが切れなくなった。シーズン中なら、成功の確率が8割あれば走っていましたが、あの時は第1戦以降走るのをやめてしまった。短期決戦の日本シリーズですから……。

※週刊ポスト2015年2月6日号

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