国内

『仁義なき戦い』のモデル美能幸三 頭がキレ愛読書はモーム

『仁義なき戦い』は抗争の渦中を生き抜いた美能幸三(美能組初代組長)の手記を元に、作家の飯干晃一が解説を加えたもので、映画で菅原文太が演じた広能昌三は美能のことである。ただ、『仁義なき戦い』で描かれた広島抗争ドキュメントは美能の手記が叩き台のため、すべて美能史観でしかないとフリーライターの鈴木智彦氏は指摘する。7年にわたり合計700枚もの手記を書き上げたヤクザ、美能幸三について鈴木氏がリポートする。
 
 * * *
 美能史観をフィクションで再構成した映画『仁義なき戦い』の実際はどうだったのか……その解説は一部のマニアしか求めていまい。ここではシンプルに美能幸三とはどんな人物だったのか説明したい。

 個人的見解と断っておくが、私は広島抗争をぐちゃぐちゃにかき回したのは、美能幸三自身、映画でいえば菅原文太演じる広能昌三だったと考えている。端的にいえば元凶というヤツだ。

 映画の中での菅原文太は、ストレートな硬骨漢だった。少年漫画的で男らしく、謀略を巡らすヤクザたちを毛嫌いする。親分が絶対とされるヤクザ社会で、最大のタブーである逆縁すら厭わず、ヤクザの正義に殉じる姿は美しい。

「山守さん、弾はまだ残っとるがよう」

 第一作のラストで、単身、葬儀に乗り込み、祭壇に向かって拳銃をぶっ放す広能昌三は、誰の目からみてもヒーローだ。だが、こんな単細胞では命がいくつあっても足りない。実際の美能は、裏切りの連続を生き抜いてきたタフガイである。

 彼は広島ヤクザの中で、突出した実力を持っていた。美能が引退した後も、美能組が呉に存在し続け(現在は解散)たのは、彼の名がビッグネームだった証明だ。背中に彫られた鯉の刺青同様、「博奕でコイ、喧嘩でコイ」であり、顎も立つし喧嘩も出来る。

 ただし、美能は頭がキレすぎた。

「美能さんは別格じゃった。娑婆でも刑務所でも、言動が違った。諺には正反対の意味になる2種類がある、などとよく言っていた」(『仁義なき戦い』に登場する某組長・故人)

 かなりの読書家で、好きな本を訊いた時は即座に『月と六ペンス』と返答している。ヤクザからサマセット・モームの名前を聞いたのは20年以上のヤクザ取材でこの一度きりだ。

※SAPIO2015年3月号

関連キーワード

関連記事

トピックス

肺がんのため亡くなったフリーアナウンサーの久米宏さん(時事通信フォト)
【追悼】久米宏さん 本誌だけに綴っていた「完全禁煙」と「筑紫哲也さんとの“再会”」
NEWSポストセブン
再選を確実とし、あいさつする小川晶氏(時事通信フォト)
《“日本中を騒がせた”ラブホ問題から復活》小川晶前橋市長、説明に「納得してない」人が52%だったにもかかわらず再選できたのはなぜか?臨床心理士「美化され…」
NEWSポストセブン
モデルやレースクイーンとして活動する瀬名ひなのさん(Xより)
《下半身をズームで“どアップ”》「バレないように隣のブースから…」レースクイーン・瀬名ひなのが明かした卑劣な”マナー違反撮影“、SNSの誹謗中傷に「『コンパニオンいらない』は暴論」
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《鎖骨をあらわに予告》金髪美女インフルエンサーが“12時間で1000人以上と関係”の自己ベスト更新に挑戦か、「私が控えめにするべき時ではありません」と“お騒がせ活動”に意欲
NEWSポストセブン
美貌と強硬姿勢で知られるノーム氏は、トランプ大統領に登用された「MAGAビューティ」の一人として知られる(写真/Getty Images)
〈タイトスーツに身を包む美貌の長官〉米・ミネアポリスで移民当局が女性射殺 責任者のクリスティ・ノーム国土安全保障長官をめぐる“評価”「美しさと支配の象徴」
NEWSポストセブン
再選を確実とし、あいさつする小川晶氏(時事通信フォト)
《ラブホ通い詰め問題》「1日100人に謝罪&挨拶」「ポエティックなインスタ投稿」で小川晶氏が前橋市長に返り咲き、支援者は「皮肉だけど、山本一太さんに感謝状を渡したい(笑)」
NEWSポストセブン
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
《クスリ漬けか…との声も》ギャル系美女が映っていた“異様な監視カメラ映像”とは》「薬物を過剰摂取し、足も不自由で、死んでしまう…」中国インフルエンサー(20)の住居の管理人が証言
NEWSポストセブン
高木美帆(Getty Images)
【ミラノ・コルティナ冬季五輪】荻原次晴さんが解説 「五輪の魔物」に打ち勝てる連続メダル候補の選手たち 高木美帆、渡部暁斗、平野歩夢、小林陵侑、高梨沙羅ら
週刊ポスト
中国人インフルエンサーがカンボジアの路上で変わり果てた姿で発見された(TikTokより)
「クスリを支配の道具に」「行為中に使う客層も…」変わり果てた中国人美女インフルエンサーが保護されたシアヌークビル、専門家が語る現地アングラ界隈のリアル
NEWSポストセブン
中国出身の女性インフルエンサー・Umiさん(TikTokより)
〈自慢のロングヘアがボサボサに…〉中国美女インフルエンサー(20)、精神に異常をきたして路上生活…母親が電話で抱いた疑念「話し方を指示されているのでは」【高給求めてカンボジアに渡航も】
NEWSポストセブン
秋篠宮家の次女・佳子さま(時事通信フォト)
《不敬どころの騒ぎじゃない》秋篠宮家・佳子さまも被害に…AIを用いた性的画像の被害が世界的問題に 専門家が指摘「男女問わず人権侵害」
NEWSポストセブン
実業家の宮崎麗香
《もう家族でハワイに行けない…》“1.5億円の脱税疑惑”の宮崎麗果、“ESTA取得困難”で恒例の「セレブ旅行」は断念か SNSで「深い反省」示す
NEWSポストセブン