今でも華麗で俊敏な守備といえば三塁手か遊撃手だが、実際には二塁手の動きが一番複雑で難しい。三塁手と遊撃手は捕ってから同じ方向に投げればいいが、二塁手は違う。併殺にするには逆方向に投げないといけません。二塁ベースまでの距離によってバックハンドトス、アンダートス、グラブトス、反転トスなど、トスだけで何種類も求められるのは二塁手だけ。

 僕の代名詞になったバックハンドトスはフロリダキャンプで習得したもので、当時の日本球界では誰もやっていなかった。それまでは捕球位置が二塁ベースから6メートル以上離れているとフォースアウトにしかできなかったが、バックハンドトスならゲッツーにできた。初めて使ったのはピンチの場面。とっさに繰り出したプレーでしたが、吉田さんは平然と捕ってダブルプレーを完成させた。

 後に近鉄に移籍すると三原脩監督にバックハンドトスは禁止されてしまった。理由は「ウチの遊撃手は捕れない」といわれたから。吉田さんのレベルがいかに高かったかがわかります。

 二遊間はどちらかがうまくてもダメ。同じような高い技術を持った2人が競い合えば、最高のプレーができる。それが二遊間の魅力ですね。

※週刊ポスト2015年4月10日号

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