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日本一小さい航空会社 倒産寸前から5期連続黒字の再生物語

自ら機体を洗浄する天草エアラインの吉村孝司社長

 早朝6時半、社長はじめ専務、社員ら10名ほどがプロペラ機の周りに集まった。全員がモップやスポンジを手に持ち、黙々と機体を洗っていく。

「普通は業者にお願いするのでしょうが、私たちは月に1回ほど自分たちで機体の洗浄をします」(吉村孝司社長)

 熊本県の航空会社・天草エアラインの業績が好調だ。2009年から5期連続の単年度黒字を達成し、今年3月8日には搭乗率が過去最高となる99.2%を記録した。39人乗りのわずか1機で天草と熊本、福岡、大阪を結ぶ1日10便という“日本一小さな航空会社”が成し遂げた快挙だ。

「少ない社員でやり繰りするため、1人で2~3役をこなしています。客室乗務員が保安検査場で荷物のチェックをしたり、営業担当が貨物室に荷物を運んだりします」(吉村社長)

 天草エアラインは、熊本県などが出資して第三セクターとして設立され、2000年に運航を開始した。当初こそ採算ラインを上回る搭乗率だったが、2008年度には累積赤字が5億円弱に膨らみ、倒産寸前となった。どん底にあった会社を立て直したのが、日本航空で整備本部副本部長を務めた奥島透前社長だった。

 2009年に就任するとまず社長室をなくし、社員と一緒に机を並べて対話した。社内に一体感が醸成されてくると、新しいサービスのアイデアが社員たちから生まれてきた。それは実際に搭乗すると分かる。

 機内で席に座ってまず目につくのは、クリアファイルに入ったお手製の機内誌。「入社15年目! もうすっかりお局様的存在です」など、全乗務員の飾らないプロフィールが載っている。名所紹介は客室乗務員が実際に取材して文を書き、毎月更新しているという。離陸後、機内で配られたのは熊本のジュースと「天草うに豆」という地元の菓子だ(大阪便のみ)。機内には、温かい家族的な雰囲気が漂う。

 昨年6月、バトンを受け継いだ吉村社長の方針も変わらず、「今日の弁当は何?」などと社員に積極的に話しかける。

「『とにかく社員に絡みなさい』という助言を受け、社員と同じ目線での対話を心がけています。現在、1年で7万5000人程度の乗客数をなんとか10万人まで持っていきたいですね」

撮影■渡辺利博

※週刊ポスト2015年4月24日号

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