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大阪都構想投票 「府民」が「都民」になれるか否かの決戦日

 5月17日、「大阪都構想」への賛否を問う住民投票が投開票される。有権者は大阪市民。大阪都構想は、大阪市を廃止し5つの特別区に分割するもので、推進する大阪維新の会は、大阪府と大阪市の二重行政解消というメリットを強調する。

 東京在住ながら大阪都構想に対し、ツイッターなどで頻繁に意見を述べるNPO法人社会保障経済研究所代表で行政改革に詳しい石川和男氏は、そのツイートが維新・松井一郎大阪府知事や橋下徹大阪市長からも頻繁にRT(引用)されている。大阪の自民・民主・共産らが維新に反対する形で行われる住民投票だが、果たして大阪都構想は日本全体を考えるとどんな意味を持つのか。石川氏が解説する。

 * * *
 17日が事実上の天王山となりますね。私の発言が松井知事や橋下市長から取り上げられる理由の一つは、私が大阪に住んでないというのもあると思います。私は行政改革や規制改革を専門の一つとしていますが、東京一極集中の問題という観点から考えると、大阪都構想――私は「新大阪都政案」と呼んでいますが――は、改革への大きなきっかけになると考えています。

 私は大阪以外の場所に住む賛成派です。でも、ツイッターなどで意見を述べていると、反対派からものすごい口撃が来るんですよ。TPPや原子力・自然エネルギーについて述べるよりも、よっぽど激しい口調です。それはなぜかというと、大阪都構想が、旧いものから新しいものへと脱皮するための「改革」だからでしょうね。基本的に改革というものは既得権を奪われる人がたくさんいるものなんです。そういう人からの抵抗がものすごい。なんとなく感じるのは、大阪都構想が実現することで、お金の話というよりは、実際に本当に自分の地位や名誉が脅かされる人が少なからずいるということです。

 大阪市の今の24区長は、住民投票によって選ばれた区長ではありません。新大阪都政になった場合の5区長は公選制です。5区の5人を選ぶ方が、住民は今よりも「税金の通り道」に近付けるんですよ。東京を見ても、都知事1人が税金を握るのではなく、各23区に握らせる方がよっぽど自分の意思が反映されますよね。新大阪都に移管される財源もありますが、実務的に言うと、それらは現大阪府政から新大阪都政に移行したことを理由として変わるものとは思えません。だから心配は無用。

 反対派の人の意見は、「失敗したらどうするんだ」とか「大阪市という名称がなくなる!」みたいなものばかりです。失敗するか成功するかは、今後の大阪の人々に委ねられています。「大阪」という広く大きな地域をどうしていくのか、大阪が日本の国全体や世界からどう見られるようになるか? という視点での議論は見当たりません。大阪の人の反対論と、私みたいな東京の人間の賛成論は、まったくかみ合わないんです。私に対して反対意見を言ってくる大阪の人は、大抵政治家筋、議員の事務所スタッフ、あるいは橋下さんが嫌いな人。橋下さんは若いので、おとっつぁんからのやっかみも相当あるんでしょうよ。そういう感情的なものばかりで、政策論として反対する意見は少ない。

■自民・民主の政治家に「あなただって将来は都知事だよ!」と伝えたい

 市議会、府議会の反対派の意見聞いても、政策論で反対するのではなく、人格論ばかり。松井が嫌い、橋下が嫌い、維新が嫌い、とかそんなのばっかりで全然面白くないんです。反対派の人の政策面からの説得力ってないんですよね。今回の投票で、大阪の人が賛成か反対かのどちらを投じるのかにはとても興味があります。

 ただ、「大阪都」になりたくない人っているのかな? とも思うんですよ。「大阪市」という名称はなくなっても、当たり前ですが「大阪」はそのままです。「府政」が「都政」になるだけの話。大阪都という名前が成立すれば、日本全体では東京と大阪で車の両輪になるんです。これは、国外からみるとすごく大きなこと。今は外から見ると著名な都市は東京しかないと思います。あとは観光地としての富士山、京都…。

 アメリカは政治・経済・文化の代表的都市としてニューヨーク、シカゴ、ロサンゼルス、ワシントンがあり、中国も北京、上海、香港が、ドイツはベルリン、ミュンヘン、フランクフルトが世界的に知られている。日本はこれだけ人口が多くて経済大国なのに、東京以外の都市が意外と知られていません。外国から見られて大阪というのはまだまだマイナーな存在です。人口がこれだけ多い日本で、東京一極体制というのは、国のあり方としてバランスが悪すぎます。東京と大阪の二極体制になることが必要です。

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