武田:千葉真一さんに去年初めてお会いしたときに、千葉さんが私に「アクションとは芝居そのもののことだからね」とおっしゃったんです。アクション女優と言ってもらえることはすごくうれしいんですけど、普通のドラマのオーディションに行くと、「あなたアクションの人ですよね。何でアクションのない作品に来ているんですか」って言われることが結構あったんですね、今まで。
だけど私はアクション=戦うじゃなくて、食べたり飲んだりすることも動くこと全部アクションだと思っているんです。千葉真一さんのその一言で「あっ、アクションってこういうことでいいんだ」って思えるようになりました。「何をするのも全部アクションなんだ」って。
春日:ただ、いわゆるアクションシーンの「殴る蹴る」とか「受ける」という動きと、たとえば「食べる」「会話する」っていう普段の動作って、やっぱり違う部分ってあるんじゃないですか。どういうところでそれが繋がってくるのものなのでしょうか。
武田:人間、何かを「しよう」と思ってから動くじゃないですか。アクションシーンでも意味もなく戦うことはない。どんな動作でも「何かを感じてから動く」という反射的な部分はやっぱり一緒だと感じているんです。まずはやっぱり感情から全部動くんだ、と。まず体から動くんじゃなくて、内面から動く。だから「アクションは芝居そのもの」って千葉さんはおっしゃっているのかなと、自分で勝手に想像しています。
春日:なるほど!いや、本当に千葉さんとしゃべっているように錯覚してしまいます。千葉さんがおっしゃっていることをちゃんと会得しているし、実際に同じフィールドで戦っているんだなと思いました。
武田:そんな、恐縮です。
春日:千葉さんはトーク番組に出るときは必ずといっていいほど「アクション俳優の千葉さんです」って紹介されるんですよね。そのときいつも千葉さんは訂正を入れるんですよ。
武田:「『アクション俳優』ではなく『俳優』です」って?
春日:そう。あともう一つは、「あなたアクションってどういう意味で使っていますか?」と必ず聞くんですね。そうすると、みんな戸惑う。「ハリウッドでは、『レディ、アクション!』って言うでしょ。つまり、アクションというのは演技そのものなんです。アクション俳優という言葉はこの世にはないんだよ」という説明をされるんです。
武田:かっこいいですね。
春日:武田さんも「アクション女優」とカテゴリーされることが多いと思いますが、ご自身の中ではどう捉えています?
武田:アクションしか、戦うことしかしないって思われるというのは、ちょっと。私もお芝居もアクションも一緒だと思っていたので、お芝居とアクションを分けられるのはすごく嫌でした。
<続く>