つまり「女性をセックスしたい気分にさせる薬」なのだ。もともとこの薬は、ドイツの製薬大手ベーリンガー・インゲルハイム社によって「抗うつ薬」として開発された。
臨床試験の結果、本来の目的だったうつ病への有効性は示せなかった。しかし副作用の評価で「性欲求の上昇」が確認されたのだ。そのためベーリンガー社はフリバンセリンを抗うつ薬から「女性の性的欲求低下障害治療薬」に切り替えて申請を行なった。
過去、ベーリンガー社は2009年、2013年と2回FDAに申請を行なっているが、いずれの場合も副作用などの理由で承認は見送られた。その後、米製薬会社のスプラウト・ファーマシューティカルズ社が開発を受け継ぎ、今回の審議では賛成18票、反対6票で承認へとこぎ着けようとしている。
FDAが公開している文書によれば、臨床試験でフリバンセリンを服用した女性らが治験参加前に「満足のいく性的経験」があった回数は平均で1か月2.7回だったのに対し、服用時は1か月あたり平均で4.4回。服用前の2倍近い頻度で、週に1度は満足できるセックスができたことになる。
臨床試験の結果を受け、FDAは〈女性の性欲に関して統計的に有意な改善が見られた〉と結論づけたが、安全性を比較して十分な効果といえるかは議論の余地が残る。フリバンセリンにはめまいや吐き気、 怠感、低血圧、眠気などの副作用が起こる可能性があり、特に眠気については「約10%の女性が眠気を感じた」との研究結果もある。FDAの審議でも処方の条件を厳しくすべきとの意見が付記されている。
前出の中原氏も「副作用については注意深く見る必要があり、日本で導入されるにはまだ時間がかかるのではないか」と慎重だ。
※週刊ポスト2015年6月26日号