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分かりやすい表現する高田明氏 「名刺ぐらいのカメラ」と言う

──それはすごい指摘ですね。テレビの視聴率が上がらないのも、本が売れないのもそれが本当の原因なのかもしれません。

「私が商品説明しているとき、これがヒットするなっていうのは、もう9割方瞬間的にわかります」

──わかりますか。

「今、物を物として売ったら売れないんです。その物が作り出す結果としてその人の人生をどう変えるかという、そこを伝えることによって、物が物でなくなる。例えばカメラだったら、こんな話をします。

 子供さんが生まれた家庭なら、毎年1枚の写真を撮ってそれを新聞大に伸ばしてください。すると成人の日までに年齢順に20枚の写真が揃います。それを成人の日にプレゼントしたら、最高の贈り物になりませんか。それをつくり出すのがカメラですと。写真は今、みんなスマートフォンで撮りますね。誰もプリントアウトしない。これはとんでもない話です」

 これを聞いて、福田恆存が高度経済成長時代に書いた「消費ブームを論ず」という評論を思い出した。福田はその中で、人と人の付き合いの根幹をなす生産と労働を目的に従属させた大量消費社会は、人間を孤独に陥れるだけだと喝破している。高田は最近、世阿弥の本を読んで感心したという。

「世阿弥は、我から見る『我見』だけではダメで、離れて見る『離見』こそ大事だって言うんです。自分たちの常識が業界の常識や消費者の常識だと思い込むことが一番恐ろしいんじゃないでしょうか」

※SAPIO2015年7月号

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