「皆さん、昔からの友達みたいでしょ。でも実はほとんどがここで知り合った人たちばっかりですから、つきあいは長くて2年ですよね。これが僕が目指していた店、広島弁でいうと目指しとった雰囲気じゃけえですね(笑い)」(寺本さん)
店主のその言葉を聞いて、不満を表した客がひとり。そのいでたちは、タオルを頭に被り、作務衣に雪駄ばきだ。
「この格好、どこからみてもサラリーマンでしょ(笑い)。実は大将(寺本さん)とは中学の同級生で、家がすぐ近く。だから、いったん着替えてから来るんですよ。僕なんか20代の頃からここで飲んでる。つまり彼の親父さんの代からね。そういう古くからの客もいるのよ。彼が酒屋と角打ちを再開したこと、ご両親が始めた当時の原点に返ったってことは、大歓迎。気分は“待ってました”でしたね」(40代、システムエンジニア)
もうひとり、混ぜっ返す客が出現した。「ここの店主はさ、口が重くてね(笑い)。でも、揃えてくれる酒がうまくて、安くて申し分ない。そして、妹さん(直美さん)が一手に引き受けて作っているつまみが、どれも酒に合っていてうまい。これがあるから通っていると言ってもいいね」(50代、公務員)
「この店でよく飲まれている酒を知ってますか。タカラ焼酎ハイボールなんですよ。今、市内の路面電車にそのポスターがうまそうに下がっていましてね。あれを見るとよけいここに来たくなって。すっきりしていて甘くないっていうのが自分にはすっごく合うんですよ。ここの常連さんは、一杯目はこれじゃろ、みんなと飲むならこれがええねと言いながら、いろんな味を楽しんでますよ」(30代、病院事務)